せい‐じ【正字】
正字
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/05 03:06 UTC 版)
![]() |
この記事は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。(2013年2月)
|
正字(せいじ)とは、漢字の書写において正規の字体で書かれた文字を指す。正字体、時に正体ともいう。
概要
正字とは、正規かつ正統な字体で書かれた文字を指す。現在の日本では、基本的に『康煕字典』に載録された字体が正字の基準とされ、日本の新字体や中国大陸の簡体字は、通常正字とはみなされない。正字に対し、非正規の字体で書かれた文字(例えば「働」を「仂」、「寮」を「ウかんむりにR」、「職」を「𫟉」と書いたもの)は「略字」「俗字」「通用字」などと呼ばれる。正字と略字・俗字・誤字との区別は、学術的権威に依拠した慣習によるが、歴史的経緯により、『康煕字典』のように政治権力の制定した標準に依存するところが大きい。
誤字に対する「正しい字」という語義で「正字」という言葉が用いられることもあるが、これは文字の正誤を論ずる場合のみに限定された用法である。
日本における歴史
唐代の字体の規範を記述した字典(字様書)に『干禄字書』があり、異体字を並べそれぞれに「正」「俗」「通」を記述している。「干禄」とは「禄を干(もと)む」の意であり、科挙の試験の基準を示したものとされる。日本の字書にもこれは反映されており、『類聚名義抄』をはじめ多くの漢字・漢語辞書に「正」「俗」「通」あるいは「古」等の字体注記が見られる。清朝に編纂された『康煕字典』に採用された字体は漢字文化圏全体に広まり、字体の標準となっていった。明治以降の日本で活字の標準となった字体(爲、圖、遙など)は、基本的に『康煕字典』の字体を基にしているが、完全に一致するわけではない[1]。そのためこうした日本の字体のことを「いわゆる康煕字典体」と呼ぶことがある。こうして日本では「いわゆる康煕字典体」のことを「正字」ないし「正字体」と言う場合が少なくない。字体#正字体も参照のこと。
しかし第二次大戦後の日本では、当用漢字、常用漢字の制定・公布に従って、従来「俗字」や「略字」とされてきた字体が正式な字体として多数採用された(一般に「新字体」という[2])。そのため、「いわゆる康煕字典体」はもはや「正字」ではなく「旧字(体)」「本字」あるいは「繁体字」であり[3]、「新字体」の方が「正字」であるとする立場もある[4][5]。
関連項目
脚注
- ^ 例えば「強」の「ム」の部分が「口」になったもの(『康煕字典』も「ム」である)や、「辻」は国字なので『康煕字典』には載っていないが、「二点しんにょう」の字体が「いわゆる康煕字典体」とされる。その他、字画が接触する・しない、出る・出ない、はねる・はねない等の細かな違いは少なくなく、日本の活字フォント間の相違、『康煕字典』のテキスト間の相違もある。
- ^ なお常用漢字や人名用漢字に採用されなかった漢字には「新字体」は存在せず、「いわゆる康煕字典体」を用いることになるが、新聞社やJIS漢字コードに示された字体の一部には「いわゆる康煕字典体」と異なる拡張新字体が用いられているものがある。
- ^ 笹原宏之「字体・書体」『朝倉漢字講座2 漢字のはたらき』朝倉書店、2006年、105-107頁。
- ^ 伊藤英俊「漢字の工業規格」『朝倉漢字講座4 漢字と社会』朝倉書店、2005年、59-60頁。
- ^ 野村雅昭「漢字に未来はあるか」『朝倉漢字講座5 漢字の未来』朝倉書店、2004年、226頁。
正字
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/11/17 03:12 UTC 版)
常用漢字表などに掲載されている社会一般において正しいとされる文字。
※この「正字」の解説は、「5200号通達」の解説の一部です。
「正字」を含む「5200号通達」の記事については、「5200号通達」の概要を参照ください。
正字
出典:『Wiktionary』 (2018/07/06 02:23 UTC 版)
名詞
- (誤字、当て字に対する)用法の正しい文字。
- (略字、異体字、俗字に対する)従来から正しいとされている文字、特に漢字におけるものをいい、康熙字典掲載の字体が最も標準的とされる。正字体とも。
- 法令等により、(法令そのものの文章を含めた)公文書(wp)等に用いることとされている文字、特に漢字を言う。[1]
- (中華民国以前の)中国で書物の校正を司った官僚。
用法
- 伝統的に、略字体は正式なものではないという意識がはたらき、正字とは、語義2のものを言っていたが、日本における当用漢字/常用漢字の制定や中華人民共和国における簡体字化の推進などもあり、略体であるからといって、語義3の意味では「正しい」文字ではないということがいえなくなっている。概念を明確にするために、「新字体」に対する「旧字体」、「簡体字」に対する「繁体字」といった表現が好ましいといえる。また現代日本においては新字体が、現代中国においては簡体字が、それぞれ正字であるともいえる。
関連語
- 当用漢字、現代かなづかい、用字法、字体、異体字、大字
- 類義語(語義1): 正字法、正書法
- 類義語(語義2): 本字、
- 類義語(語義3): 常用漢字
- 対義語(語義4以外全て): 誤字、当て字、借り字借字、代用字、俗字
- 派生語: 新字体、略字、旧字体
注釈
「正字」の例文・使い方・用例・文例
正字と同じ種類の言葉
- >> 「正字」を含む用語の索引
- 正字のページへのリンク