Refeeding Syndromeとは? わかりやすく解説

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リフィーディング症候群

(Refeeding Syndrome から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/03/14 06:22 UTC 版)

リフィーディング症候群(-しょうこうぐん。英語: Refeeding syndrome)とは、長期間の慢性的な低栄養状態にあった者に対して、急激な栄養補給を行った際に生じ得る、体内での電解質の分布異常により引き起こされる、様々な病態の総称である。最悪の場合には死亡する場合がある。急激な栄養補給による血糖値の上昇に伴って、一気に分泌されるインスリンの刺激により、身体中の細胞に様々な物質が取り込まれた結果として、このような分布異常が発生し得る。したがって、リフィーディング症候群を予防するためには、少量のエネルギー投与から開始し、投与するエネルギー量などを適切と考えられる値にまで漸増させるという手順を踏む。必要ならば、患者の状態のモニタリングも実施する。

発症機序

リフィーディング症候群は、長期間に亘る慢性的な摂食量の不足などが原因で、極度の低栄養状態に至った後に、その低栄養状態を回復させようとして、何らかの方法で、急激に栄養分を与えた際に発症し得る[1]。理由の如何によらず、外部からの食物によるエネルギー供給が不足したヒトの身体は、身体に蓄えられた脂肪や、身体を構成しているタンパク質なども分解して糖新生を行い、生命の維持を試みる。糖新生によってグルコースを合成しなければ、赤血球などは機能を維持できない。このような状態では、細胞に物質を取り込ませて血糖値を下げる指令を届けるインスリンの分泌量は、基礎分泌と呼ばれる最低限に減る。しかし、この状態も外部から充分な食物が入って来ないため、糖新生が行われていてもさして血糖値は上昇しない。極度の低栄養状態に陥った段階でも、排尿などにより老廃物を排泄しなければ生命の維持が不可能なので、身体中の物質は次第に排泄されてゆく。このまま低栄養状態が進行すれば餓死する。

このような極度の低栄養状態に、一気に健康時を基準とした充分な量の食事を与えたりして一気に血糖値が上昇すると、その血糖値を下げるために、インスリンが急激に分泌され始める。インスリンは基本的には血中のグルコースを細胞に取り込ませるが、細胞にグルコースが取り込まれた時には、しばしば他の物質も盛んに取り込まれる。細胞内のグルコース濃度の上昇などに伴い、解糖TCAサイクルなどの代謝の速度も上昇するため、そのために必要な物質も細胞に取り込まれ始める。また、これまで糖新生のために供出してきたタンパク質の合成も実施し、リン脂質など生体に必要な分子も次々と合成するため、どんどんと物質が細胞内に取り込まれてゆく。

しかしながら、それまでに長期間続いた極度の低栄養状態により、体内物質には慢性的な不足が生じており、全身の細胞代謝の活発化による需要を支えられない。血中からは、リンカリウムマグネシウムなどが一気に減少し、血液の電解質異常に至る。低リン血症低カリウム血症低マグネシウム血症が、容易に発生する状態と言える。この電解質異常は、時に致死を引き起こす。

このように、栄養状態の回復のために行った平常の食事の摂取や、輸液治療によるインスリンの分泌が引き金となり、リフィーディング症候群を発症し、その症状は急速に進行し得る[2]

症状

リフィーディング症候群によって発生し得る症状は多彩である。電解質の分布異常は、様々な臓器の機能を障害し得るためである。心不全呼吸不全腎不全、肝機能障害などが知られており、それも同時多発的に発生して多臓器不全に陥り[3]、死亡に至る場合もある。

低リン血症・低カリウム血症・低マグネシウム血症による代表的な症状を、以下に挙げる。

なお、上記のリフィーディング症候群による症状以外に、それまでの極度の低栄養状態のせいで発生していた症状の一部を、リフィーディング症候群の発症後も引きずっている場合も有り得る。

予防法

リフィーディング症候群の予防のためには、長期間に亘って、極度の栄養不良状態が続いた者の栄養状態を一気に改善するのではなく、必要充分な時間をかける。まずは少量のエネルギー投与から開始し、5日間程度の期間をかけて、投与するエネルギー量を漸増させて、健康な状態であったならば充分な量のエネルギー投与量にまで持ってゆく。リフィーディング症候群の兆候が出たらすぐに手を打てるよう、身体の状態の適切なモニタリングを実施することもある。

特殊なリフィーディング症候群

それまで低栄養であったわけではないため一般的に言うリフィーディング症候群とは異なるものの、臓器発達が不充分な低出生体重児に対して急激な栄養投与を実施した場合には、リフィーディング症候群のような病態を発症させ得る[7]

日本における歴史

1581年に始まった、鳥取城の戦いにおいて豊臣秀吉が行った兵糧攻めは、後に『鳥取城の渇え殺し』と言われる程に凄惨な状態であり、1400人以上が籠城した戦いが3ヶ月以上も続いた。この戦いは最終的に、城主であった吉川経家の自害を伴う降伏によって幕を閉じた。解放された生存者の飢餓ぶりに哀れを感じた秀吉が食事を振る舞うと、バタバタと死んでいった。この鳥取城の合戦後に起きた集団死は、日本の史実で記録された最初のリフィーディング症候群であるとする学説が存在する[8][9]

また、第2次世界大戦直後の日本人捕虜に含まれていた多数の栄養失調者を観察した研究も存在する[10]。この研究の論文が、医学的に詳述されたリフィーディング症候群の報告としては世界初の物だと、医学に関する有名ジャーナルの1つであるブリティッシュ・メディカル・ジャーナルの論文で紹介された[11]

現代の日本でも人気のカーペンターズのボーカル・カレン・カーペンター拒食症により低栄養、低体重になり栄養注射を受けた後にリフィーディング症候群による心不全により死亡したとされている。

脚注

注釈

出典

  1. ^ 清水健太郎, 小倉裕司, 高橋弘毅, 和佐勝史, 平野賢一「極度の低栄養状態における低血糖に伴うリフィーディング症候群」『学会誌JSPEN』第2巻第2号、日本臨床栄養代謝学会、2020年、95-102頁、doi:10.11244/ejspen.2.2_95 
  2. ^ 棚橋徳成, 苅部正巳, 木村裕行, 大川昭宏, 山口利昌, 守口善也, 後藤直子, 石川俊男「神経性食欲不振症の入院中における低リン血症もしくは Refeeding Syndrome」『日本心療内科学会誌』第8巻第4号、2004年11月、229-234頁、ISSN 13429558NAID 10018079850 
  3. ^ 杉村朋子, 鯵坂和彦, 大田大樹, 田中潤一, 喜多村泰輔, 石倉宏恭「Refeeding syndrome から多臓器不全を合併した1例」『日本救急医学会雑誌』第22巻第5号、日本救急医学会、2011年5月、213-218頁、doi:10.3893/jjaam.22.213ISSN 0915924XNAID 10029368471 
  4. ^ 低リン血症 - 10. 内分泌疾患と代謝性疾患(MSDマニュアル プロフェッショナル版)”. MSDマニュアル. 2023年12月1日閲覧。
  5. ^ 低カリウム血症 - 10. 内分泌疾患と代謝性疾患(MSDマニュアル プロフェッショナル版)”. MSDマニュアル. 2023年12月1日閲覧。
  6. ^ 低マグネシウム血症 - 10. 内分泌疾患と代謝性疾患(MSDマニュアル プロフェッショナル版)”. MSDマニュアル. 2023年12月1日閲覧。
  7. ^ 千葉正博「早期産・低出生体重児の栄養管理」『日本静脈経腸栄養学会雑誌』第34巻第1号、日本静脈経腸栄養学会、2019年、7-10頁、doi:10.11244/jspen.34.7ISSN 2189-0161NAID 130007635451 
  8. ^ Kano, Yasuhiro; Aoyama, Sayaka; Yamamoto, Ryuichiro (9 2023). “Hyoro-zeme in the Battle for Tottori Castle: The first description of refeeding syndrome in Japan” (英語). The American Journal of the Medical Sciences. doi:10.1016/j.amjms.2023.08.015. https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0002962923013277. 
  9. ^ 秀吉の鳥取城・兵糧攻め、「リフィーディング症候群」で大量死亡か医師らが論文」『産経新聞』2023年12月2日。2023年12月2日閲覧。
  10. ^ “A clinical study of malnutrition in Japanese prisoners of war” (英語). Annals of Internal Medicine 35 (1): 69. (1951-07-01). doi:10.7326/0003-4819-35-1-69. ISSN 0003-4819. http://annals.org/article.aspx?doi=10.7326/0003-4819-35-1-69. 
  11. ^ Hearing, Stephen D. (2004-04-17). “Refeeding syndrome” (英語). BMJ 328 (7445): 908–909. doi:10.1136/bmj.328.7445.908. ISSN 0959-8138. PMC 390152. PMID 15087326. https://www.bmj.com/lookup/doi/10.1136/bmj.328.7445.908. 

参考文献



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