RNAポリメラーゼIIのサブユニット
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「RNAポリメラーゼ」の記事における「RNAポリメラーゼIIのサブユニット」の解説
RNAポリメラーゼIIのサブユニット構成は、1971年にピエール・シャンボン (Pierre Chambon) らとラターらのグループから独立に報告された。この時は不完全だったが、1975年にマウス由来の全てのRNAポリメラーゼから、ローダーらがほぼ完全な情報を明らかにした。現在では全3種のサブユニットについて正確に判明している。 ヒトと酵母におけるポリメラーゼIIの12個のサブユニットについて下の表にまとめた。これらは各々単独の遺伝子にコードされている。各サブユニットの名前はその遺伝子の名前に由来する。RPBという名称は、シャンボンが用いたRNAポリメラーゼB (すなわちII) という呼び名にちなむ。 リチャード・ヤング (Richard Young) はエピトープタグ法で同定した10個のサブユニットを3つに分類した。真正細菌のRNAポリメラーゼコア酵素に構造・機能ともに類似するコアサブユニット、少なくとも酵母では3種類の核内RNAポリメラーゼ全てにある共通サブユニット (common subunits)、必ずしも酵素活性にいつも必要ではない非必須サブユニットの3つである。 電気泳動の結果から、Rpb1サブユニットには215 kDのIIaと240 kDと測定されたIIoの2つの形態が存在する。IIaのC末端にはCTD (carboxyl-terminal domain) と呼ばれる、7個のアミノ酸(heptad)から成る共通配列 Tyr-Ser-Pro-Thr-Ser-Pro-Ser が反復した配列がある。IIoはCTDのヒドロキシ基を持ったアミノ酸(セリン、スレオニン、チロシン)がリン酸化したものである。しかし、哺乳類のhaptadは52回反復するが、これが全てリン酸化したとしてもIIaとIIoの分子量差を埋めることはできない。実際の分子量が大きく見えるよう、泳動度が遅くなるよう、リン酸化は立体構造の変化を引き起こすと考えられている。異なるRpb1サブユニットを所有するRNAポリメラーゼIIをそれぞれRNAポリメラーゼIIA (RNA polymerase IIA) およびRNAポリメラーゼIIO (RNA polymerase IIO) と区別する。前者はプロモーターに最初に結合するときの形態で、後者は伸長反応を行う。 ヒトと酵母におけるRNAポリメラーゼIIのサブユニットサブユニット酵母遺伝子酵母タンパク質のモル質量(kD)特徴hRPB1RPb1 192 コアサブユニット。CTDを含み、DNAと結合する。プロモーターの選別に関与。β’と相同。 hRPB2RPb2 139 活性部位を含むコアサブユニット。プロモーターの認識と伸長速度に関与。β’に相同。 hRPB3RPb3 35 コアサブユニット。原核生物のαサブユニットと相同で、Rpb11と機能する可能性あり。 hRPB4RPb4 25 非必須サブユニット。Rpb7と複合体を形成し、ストレス応答に関与する。 hRPB5RPb5 25 共通サブユニット。転写アクチベーターの標的。 hRPB6RPb6 18 共通サブユニット。複合体形成と安定化に寄与。 hRPB7RPb7 19 定常期のRpb4と複合体を形成。 hRPB8RPb8 17 共通サブユニット。オリゴヌクレオチド/オリゴ糖結合ドメイン。 hRPB9RPb9 14 伸長に関与する可能性があるZnリボンモチーフを含む。プロモーターを認識。 hRPB10RPb10 8 共通サブユニット。 hRPB11RPb11 14 原核生物のαサブユニットと相同で、Rpb3と機能する可能性あり。 hRPB12RPb12 8 共通サブユニット。
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