MITのマシン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/06 05:39 UTC 版)
MITは各種手動輪の入力を歯車で伝達し、マシンのX、Y、Z軸それぞれを駆動するモーターに接続されたローラーチェーンでそれらを駆動した。対応する制御装置は冷蔵庫ほどの筐体5台で構成され、工作機械本体とほぼ同じ大きさだった。筐体のうち3台はモーター制御装置で3軸それぞれに対応し、残る2台は数値読み取りシステムである。 パーソンズのパンチカードを使ったもともとの設計とは異なり、MITの設計では7トラックの標準的な紙テープを入力に採用した。そのうち3トラックは3軸の制御に使い、残りの4トラックは各種制御情報を符号化して使った。紙テープを読み取る筐体には、6台のリレーを使ったレジスタがあり、2台が1つの軸に対応している。読み取り操作の度に直前に読み取った点が開始点レジスタにコピーされ、新たに読み取った点が終了点レジスタに設定される。テープは連続的に読み取られ、"stop"命令(制御情報部分が4つの穴になっている)に到達するまでレジスタ上の数値が増えていく。 最後の筐体にはクロック機構があり、レジスタを通してパルスを発信し、それらを比較し、点と点の間を補間する出力パルスを生成する。例えば、2点が遠く離れている場合は出力パルスはクロックサイクル毎に出力され、2点が近ければ複数クロックサイクルに1回だけパルスを出力する。そのパルスはモーター制御装置にある加算レジスタに送られ、そこで受信したパルス数を数える。加算レジスタはデジタル-アナログ変換回路に接続されており、パルス数が増加している間はモーターへ供給される電力が増加する。 そのレジスタはモーターや工作機械自体に付属するエンコーダによって減算され、1回転するごとに1ずつ減算される。終点に到達するとクロック装置からのパルスが停止し、モーターが工作機械を符号化された位置まで移動させて停止する。1度回転するごとに切削ヘッドが0.0005インチ移動する。切削ヘッドの移動速度は始点と終点を細かく指定すればゆっくりになるし、比較的遠い2点を指定すれば速くなる。 このシステムは1952年9月に一般公開され、同月のサイエンティフィック・アメリカン誌にも掲載された。MITのシステムは技術的には大成功を収めた。どんな複雑な形状も切り出すことができ、人間の手では不可能な精度で全く同じものを作ることができた。しかし、このシステムは複雑すぎ、250本の真空管と175個のリレーを使い、可動部品も多いため、実際の製造で使うには信頼性の面で問題があった。また、非常に高価であり、空軍がその開発に費やした金額は36万ドルになっていた(2005年の価値に換算すると約260万ドル)。1952年から1956年まで、そのシステムの経済的影響を調べるため、各種航空機で一品ものの部品の製作に使われた。
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