JHL(Joint Heavy Lift, 統合重輸送)計画
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「クアッド・ティルトローター」の記事における「JHL(Joint Heavy Lift, 統合重輸送)計画」の解説
2005年9月、ベル社とボーイング社は、アメリカ陸軍航空応用技術管理部(Aviation Applied Technology Directorate)と345万ドルの費用分担契約を締結し、2007年3月までの18ヵ月間にわたり、JHL計画の概念設計および分析研究を行った 。その契約は、ボーイング社のファントム・ワークスとチームを組んでいたベル・ヘリコプター社との間に締結された。QTRに関する研究は、候補となる5つの設計のうちの1つに位置づけられていた。5つの設計の中には、ボーイング社が計画するCH-47チヌークの改良型も含まれていた。 初期基本設計研究においては、ベル社の設計者が翼、エンジンおよびローターの設計を担当し、ボーイング・チームが胴体および内部システムの設計を担当した 。 この担任区分は、ベル・ボーイングV-22オスプレイの時とほぼ同じであった。 2006年の夏、NASAのラングレー研究所にあるトランスソニック・ダイナミクス・トンネル(亜音速および遷音速風洞実験装置)で5分の1スケールの風洞実験用試作機を用いた試験が行われた。機体の右半分だけが作られた「セミ・スパン」モデルは、長さが213インチで、91インチのローターで推力を発生し、ナセルや補助翼が実際に動くようになっていた。 この試験の主たる目的は、前方翼の後方翼に対する空力弾性効果を確認し、基本的機体形状を決定することであった 。ベル社のQTRプログラム・マネージャーであるアラン・ユーイングは、「試験の結果、後方ローターの渦による負荷は、前方ローターに認められる負荷と同等であった」、また「翼の空力弾性上の安定性は、通常のティルトローターと変わりがなかった」とする報告書を提出した。この試験に用いられたモデルは、3枚ブレードのローターを装備していたが、将来的には、4枚ブレードのローターを装備することも考えられていた。 ベル社は、契約に基づく共同研究を行う以外にも、他の研究や風洞実験に資金を提供し、NASAおよび陸軍に協力した 。初期概念研究成果が提出されたならば、実物大の機体構成品や2分の1サイズの機体を用いた試験を行うことが考えられていた 。また、実際には承認されなかったが、実物大の試作機の初飛行は、2012年に計画されていた。 2007年、研究が終了すると、開発予定機にクアッド・ティルトローターが選定された 。しかしながら、未来戦闘システム(Future Combat Systems)の有人戦闘車両(Manned Ground Vehicles)の重量が20トンから27トンに増加したため、より大型の航空機が必要とされるようになった 。2008年中ごろ、アメリカ陸軍は、JHLの継続を決定し、ベル・ボーイングおよびカレム・エアクラフト/ロッキードマーチンのチームと新たな契約を締結した。いずれのチームも、新しいJHLの仕様に適合させるため、設計の変更を行うことが必要であった。2008年、JHLは、アメリカ空軍および陸軍のJFTL(Joint Future Theater Lift, 統合将来戦域輸送機)計画の一部となった 。2010年の半ば、アメリカ合衆国国防総省は、JFTLの内容に垂直離着陸機計画を加えた 。2010年、国防総省は、JFTLに関し、航空企業からの技術情報の提供を求めた。
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