DNAバーコーディング
英語:DNA barcoding
生物の種ごとに異なるDNAの塩基配列を基にして、迅速に種の同定を行う技術。DNAバーコーディングでは、生物のゲノムのうち、「バーコード領域」と呼ばれる600-800塩基対程度の短い領域が用いられ、この領域の解析を、あたかもバーコードをスキャンするように短時間で行うことが目標とされている。
対象の未同定の生物にDNAバーコーディングの手法を適用する場合、まずDNAを抽出し、バーコード領域の塩基配列を決定(シーケンシング)する必要がある。この作業で得られた配列をデータベース上の配列データと照合し、適合度の高い配列を抽出することで、種の同定が可能になる。博物館に所蔵された生物標本からDNAを抽出し、DNAバーコーディングの手法を適用する試みもなされている。
DNAバーコーディングは、ゲルフ大学のポール・ヒバート教授により、2003年に提唱された。2013年現在、ヒバート教授を中心として「国際バーコードオブライフ(iBOL)」プロジェクトが進められており、2015年までに世界中から50万種、500万標本の「バーコード」を取得し、データベースに登録することが目標とされている。日本では、「日本バーコードオブライフ・イニシアチブ(JBOLI)」がDNAバーコーディングの普及に向けた活動を行っている。
種同定の作業は、生物の分類学的研究のほか、生物の保全、農林水産業、医療、食品検査など様々な分野で必要とされており、その作業に伴う負担や不正確性、専門的知識の必要性などを軽減しうるDNAバーコーディングの技術が、今後広く応用されることが期待されている。
関連サイト:
Barcode of Life
日本バーコードオブライフ・イニシアチブ
ディーエヌエー‐バーコーディング【DNAバーコーディング】
DNAバーコーディング
(DNA barcoding から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/15 19:54 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動DNAバーコーディング (DNA barcoding) は、短い遺伝子マーカーを利用してDNAの配列から種を特定する系統学的手法である[1]。分子系統学とは分類の決定に主眼が置かれるが、DNAバーコーディングは未知のサンプルの種を決定することに使われるという点で異なる。DNAバーコーディングは未知の種の同定や同一種とみなすかどうかなどに利用されるが、DNAバーコーディングだけで決定出来るというわけではない。
領域
DNAに使用される領域は標準化され、多数の配列データベースが利用可能である。また、ほとんどの種や分類群で、種特異的プライマーを利用することなく、短い配列でも、種内変異が少なく種間変異の大きい領域が提案されている(ユニバーサルプライマー)[2][3]。多くの領域がDNAバーコーディング領域として提唱されているが以下の領域が一般的である。
ミトコンドリアDNA
多くの真核生物はミトコンドリアを持ち、ミトコンドリアDNA (mtDNA) は核に比べると相対的に突然変異率が高い。そのため、原則的にmtDNAは種間では大きな変異があるが種内変異が小さい。しかし、ミトコンドリアは母系遺伝をするため、種間交雑、ボルバキアなどの細胞内共生生物による細胞質不和合等により誤った結果が出る可能性がある。シトクロームオキシダーゼサブユニットI (COI) の648-bp領域がバーコーディング領域として有望視されている。2009年現在、CO1シーケンスのデータベースには58,000種以上の動物の配列が登録されている。[6]
被子植物の同定
クレスらによると、植物のI遺伝子の進化は動物のシトクロムcに比べはるかに遅いため、ほとんどの植物種への適応は困難である。[7]
ケーススタディ
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外部リンク
- 地球規模生物多様性情報機構 GBIF Japan バーコードオブライフデータを用いた生物種同定システム
- DNAバーコーディングによる同定支援システムとJBOLI構想(<特集>エンドユーザからみたDNAバーコーディング)
脚注
- ^ Hebert, Paul D. N.; Cywinska, Alina; Ball, Shelley L.; deWaard, Jeremy R. (2003-02-07). “Biological identifications through DNA barcodes”. Proceedings. Biological Sciences 270 (1512): 313–321. doi:10.1098/rspb.2002.2218. ISSN 0962-8452. PMC: PMC1691236. PMID 12614582 .
- ^ Kress, W. John; Erickson, David L. (2008-02-26). “DNA barcodes: genes, genomics, and bioinformatics”. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 105 (8): 2761–2762. doi:10.1073/pnas.0800476105. ISSN 1091-6490. PMC: PMC2268532. PMID 18287050 .
- ^ Lahaye, Renaud; van der Bank, Michelle; Bogarin, Diego; Warner, Jorge; Pupulin, Franco; Gigot, Guillaume; Maurin, Olivier; Duthoit, Sylvie et al. (2008-02-26). “DNA barcoding the floras of biodiversity hotspots”. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 105 (8): 2923–2928. doi:10.1073/pnas.0709936105. ISSN 1091-6490. PMC: PMC2268561. PMID 18258745 .
- ^ Hebert, Paul D. N.; Cywinska, Alina; Ball, Shelley L.; deWaard, Jeremy R. (2003-02-07). “Biological identifications through DNA barcodes”. Proceedings. Biological Sciences 270 (1512): 313–321. doi:10.1098/rspb.2002.2218. ISSN 0962-8452. PMC: PMC1691236. PMID 12614582 .
- ^ CBOL Plant Working Group (2009-08-04). “A DNA barcode for land plants”. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 106 (31): 12794–12797. doi:10.1073/pnas.0905845106. ISSN 1091-6490. PMC: PMC2722355. PMID 19666622 .
- ^ Ratnasingham, Sujeevan; Hebert, Paul D. N. (2007-05-01). “bold: The Barcode of Life Data System (http://www.barcodinglife.org)”. Molecular Ecology Notes 7 (3): 355–364. doi:10.1111/j.1471-8286.2007.01678.x. ISSN 1471-8278. PMC: PMC1890991. PMID 18784790 .
- ^ Kress, W. John; Wurdack, Kenneth J.; Zimmer, Elizabeth A.; Weigt, Lee A.; Janzen, Daniel H. (2005-06-07). “Use of DNA barcodes to identify flowering plants”. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 102 (23): 8369–8374. doi:10.1073/pnas.0503123102. ISSN 0027-8424. PMC: PMC1142120. PMID 15928076 .
「DNA barcoding」の例文・使い方・用例・文例
- ヘリカーゼの役割はDNAの解ねんである。
- 彼は形質転換されなかった細胞からDNAを抽出した。
- 新しいDNA証拠が出たのでその事件は再捜査中である。
- ゲノムのDNAの数
- 2本の鎖からなるDNA
- 組み換え DNA.
- DNAは私たちの遺伝子の物質である
- 識別の目的で人の体組織または体液のサンプルでDNAを分析する手順
- 同じまたは近縁種の別の細胞からDNAを導入することによって(細菌性細胞を)遺伝学的に異なる細胞に変える
- 外来性DNAの摂取や合併による細胞またはバクテリアの一時的変異
- (DNAのらせん構造)にある遺伝情報をRNA、特にメッセンジャーRNAのらせん構造に変換する
- 科学者はDNAを組み変えるべきであるか
- DNAは再結合できる
- 1つの細胞に通常のDNA量を有する有機体または細胞
- 人間のb型肝炎を引き起こすウイルスと同様に、カモ、ウッドチャックそしてリスとその他のウイルスを含む動物のDNAの群
- 1ビリオンあたり2つの単一らせん構造の線状RNA分子と(RNAからDNAへの)逆転写酵素から成るウイルスのグループの総称
- 20面体のタンパク質の殻の中にDNAを含み、犬と牛の疾患を引き起こす一群のウイルスの総称
- DNAを細胞へ運ぶのに使用されるさまざまな他の媒介物
- 非反復的なDNA配列
- 既知のDNAまたは遺伝子配列に関して染色体の特定の領域に配置する
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