DDHの航空運用能力向上に係る調査研究
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 13:51 UTC 版)
「海上自衛隊の航空母艦建造構想」の記事における「DDHの航空運用能力向上に係る調査研究」の解説
上記の通り、19,500トン型DDH(いずも型)は、もともと優れた航空運用能力を備えていることもあって、竣工以前より、固定翼機を搭載する可能性が取り沙汰されていた。実際、海上自衛隊はいずも型の基本設計が作られた2006年から2008年の段階で、東シナ海での中国軍の活動が拡大していくと予測し、空域の優位を確保する必要があると考えていたが、当時、沖縄周辺で自衛隊機が使える滑走路は那覇基地の1本しかなかった。そのため、中国軍の攻撃で那覇基地が使用できなくなる場合に備える方針が固まり、いずも型の空母への転換を想定することになったという。そのため、いずも型の設計では自衛隊がF-35BとV-22を導入することを前提に設計構想が進み、甲板と艦内の格納庫をつなぐエレベーターは、F-35Bの大きさに合わせて設計がなされ、飛行甲板の塗料は、F-35Bが発着する際の噴射熱にも耐えられる塗料が選定された。また、F-35Bがいずも型の飛行甲板を滑走して発艦できるようにするために、勾配をつけた台を艦首部分に取り付ける改修を行うことを想定していた。上記の想定について海自元幹部は朝日新聞の取材に応じ、「数十年先の情勢変化を見越して設計するのが当然だ。実際に改修するかは、政治が決めればいいと考えていた」と証言している。なお、海上自衛隊はいずも型の仕様を決定する際にアメリカ海兵隊のF-35Bの発着艦を想定して、ロッキード・マーティンにF-35Bのサイズや重量などを問い合わせていた。 2013年7月14日には、日本政府がヘリコプター搭載護衛艦に艦載機として配備・運用することを視野に、F-35Bの2020年代半ば以降の導入を目指して検討しているとFNNが報じたが、小野寺五典防衛相は検討の事実を否定していた。2017年12月27日の朝日新聞によれば、航空自衛隊では「いずも」にF-35Bを搭載して空母化する案が2015年の就役以来、検討されてきたが、空自の動きに対して専守防衛の観点から、中国などの周辺国の反発を懸念する見方があり、この時点では検討は本格化していなかった。 その後、2010年代後半になると、本格的な検討が着手された。2016年12月12日の公募に基づき、2017年4月から2018年3月にかけて、「いずも」の建造業者であるジャパンマリンユナイテッドへの委託研究として「航空運用能力向上に係る調査研究」が実施され、無人航空機(UAV)2機種(MQ-8CおよびRQ-21A)とともにF-35Bも俎上に載せられた。このうちF-35Bについては、UAVとは異なり日米協同・統合運用を想定していたほか、整備用機材や補用品を搭載する諸室や兵装についても検討が及んでいた。
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