ビーオーピー‐ビジネス【BOPビジネス】
BOPビジネス

参入企業は利潤追求だけでなく、BOP層の生活水準を向上させ、現地に自立的なビジネス流通の仕組みを根付かせるという社会貢献の発想が求められます。こうした収益性と社会性の微妙なバランスのうえに成立するのが、従来のCSR(企業の社会的責任)とは異なるBOPビジネスの特徴点といえるでしょう。
最近は途上国におけるブランドの浸透、優秀な人材の確保、製品・サービスやバリューチェーンの刷新といったイノベーションを目的に、欧米や日本の企業が相次ぎBOPビジネスに参入しています。将来の経済発展を見据え、今からボリューム層にあたりをつけておく狙いもあります。とくに金融危機が表面化した2008年秋以降、先進国市場の売り上げが伸び悩むなかで、BOP市場に寄せる期待は急速に高まっています。日本企業でもポストBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)を視野に、BOP市場の「深耕」に乗り出す動きが活発化しています。
日本企業は高度な技術力を強みに途上国では富裕層を対象に商品戦略を展開してきましたが、BOP市場ではこうした従来型のビジネスモデルが通用しません。なぜなら低所得者層や中間所得者層をビジネスユーザーにするには、公衆衛生や住宅、食料、飲料水など基本的な生活ニーズに根ざした商品開発や販売方法が欠かせないからです。
BOPビジネスは販売価格や耐久性、使い勝手などの点で、富裕層ビジネスにはない厳しい条件が要求されます。価格面のハードルをできる限り下げ、識字率の低い地域では絵文字を多用したり、組み立て工程を簡便なものにしたりするなど設計面の工夫も重要です。市場ニーズに合致した商品を開発し、継続的に供給する仕組みを構築するには、途上国やBOP層との繋ぎ役となるブローカーや中間支援組織、起業家、NGO(非政府組織)などとのコラボレーションが欠かせません。貧困地域にあっては無担保で少額融資を行うグラミン銀行(バングラディシュ)のような地場金融の助けも必要になります。
日本企業にも成功事例があります。ヤクルトは40年以上も前からアジアでヤクルトレディーによる訪問販売の仕組みを展開。現在はインドやベトナム、インドネシアなどの途上国に雇用と健康な生活を提供しています。住友化学は殺虫剤を練り込んだ樹脂糸を使ってマラリア蚊防除用蚊帳「オリセットネット」を開発。ユニセフなどの国際機関を通じてアフリカを中心に50以上の国々に供給しています。タンザニアで生産を行うことで約4000人の雇用を生み出すなど、地域経済の発展にも貢献しています。ヤマハ発動機は97年にインドネシアに子会社を設立、国連開発計画(UNDP)などと連携して水道のない地域にクリーンな水を供給するための小型浄水プラントの普及に努めています。
日本企業にとって、お家芸ともいえる「技術力」や「モノづくり力」がBOP市場を「深耕」する強力な後ろ盾になりそうです。
(掲載日:2010/01/28)
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