高市政権

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高市政権

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』 (2025/11/15 15:30 UTC 版)

高市政権
第1回「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」の様子 （2025年11月4日）
天皇	第126代 徳仁
成立年月日	2025年（令和7年）10月21日
与党・支持基盤	自由民主党・日本維新の会（閣外協力） （自維連立政権）
内閣	高市内閣
前政権	石破政権

この記事は 高市早苗 に関連する記事の一部です
国会議員 奈良2 比例近畿 奈良1 議連 日本会議 閣僚 総務大臣（2014–2017、2019–2020） 不祥事 東北新社問題 自由民主党総裁 2021年総裁選 2024年総裁選 2025年総裁選 内閣総理大臣 政権 内閣 海外訪問 選挙 次の総選挙
表 話 編 歴

高市政権（たかいちせいけん）は、2025年（令和7年）10月21日より続いている日本の政権。憲政史上初の女性総理大臣による政権である。内閣総理大臣は高市早苗。

本稿では、高市を首班とする高市内閣発足後の政治の動向について解説する。

経過

発足前：連立交渉と多数派工作

内閣総理大臣首班指名選挙で自らに投票する高市早苗

高市の党役員人事と公明の連立離脱

2025年10月4日の自由民主党総裁選に勝利した高市早苗は、自民党役員人事に着手、7日にこれを発足し、総裁選で高市を支援した麻生派を中心に役員を固め、副総裁には麻生太郎を起用した。また、幹事長代行には政治資金パーティの裏金問題で1年の党役職停止処分を受け、8月には政策秘書が起訴されていた旧安倍派幹部の萩生田光一を充て、これについて「あえての起用。党内へのメッセージ。」だとした。

これに対して当時連立与党であった公明党が反発、10日には党首会談で自由民主党に対して企業団体献金の規制強化を求めたが、これを持ち帰るとした高市自民党総裁に対し、連立の解消を通告した（自公連立政権の終焉）。高市は「一方的に伝えられた」とコメント、公明党代表の斉藤鉄夫は「意外だ」「1週間前から伝えていた」と反論した。

公明党内部では政治資金問題の煽りを受けて前年の衆院選で大きく票を減らすなど、自民党への不満が高まっていたことや、 2012年の安倍政権以来公明とのパイプとなっていた菅義偉元首相らを政権から排除し、公明と距離を置く麻生を副総裁に据えたことが離脱の原因として挙げられた。

各党による連立交渉と多数派工作

自公与党は前年の第50回衆議院総選挙より少数与党であり、首班指名には多数派工作が必要とされた。当初、自民党は国民民主党との連立を模索、3日には国民幹事長の榛葉賀津也が麻生と会っているほか、5日には国民代表の玉木雄一郎が高市と秘密会談、6日には榛葉が麻生と会談している。この動きに対し、国民民主を支援する連合の芳野友子会長は「連立政権入りは容認できない」とコメントした。麻生は、早期に衆議院を解散し自国両党で過半数を獲得し、公明とは距離を置く構想を描いていたとされた。

10日に公明が自公連立の解消を発表したことで、自公国での連立を前提としていた国民民主が距離を置く。この隙間を縫う形で大阪選挙区で対立する公明が連立から抜けたことで自民との接近が容易になった日本維新の会が自民との連立へ向かう結果となった。接近を主導したのは、萩生田であるとされた。

10月7日、立憲民主党幹事長の安住淳が「期間限定の課題解決型内閣」として野党で首班指名を一本化したい考えを示す。安住は首班指名を野田佳彦党代表に拘らない考えを示し、玉木を有力な候補とした。玉木は「基本政策が一致する必要がある」と、立憲民主党との連携に難色を示したが、14日には立憲、国民、維新での幹事長会談、15日には3党での党首での会談を行った。

このような野党協議の動きの一方で、14日夜、北海道新聞によって自民・維新両党が首班指名で協力して投票する方向で調整している旨が報道される。維新共同代表の藤田文武はこれを「誤報レベル」として否定したが、翌15日夕方には維新代表の吉村洋文が高市と会談、連立政権樹立に向けて協議を開始する旨が合意された。出し抜かれた格好となった国民民主の玉木は自らのYouTubeチャンネルで「最初から言ってよ…」「二枚舌だ」と不信感を吐露した。

10月17日、自民・維新両党は2回目の政策協議を行い、立憲、国民両党との協議から離脱した。吉村は16日に議員定数の削減を連立の絶対条件として提示し、高市はこれを受け入れる方針を示した。維新は比例定数の1割削減を主張、この方針に対しては、あまりに唐突、少数意見の切り捨て、連立の材料にすることではないなどの批判が集まった（自維連立政権#議員定数削減の方針に対する批判も参照）。毎日新聞は、維新案を採用した場合2024年衆院選では自維で過半数となる試算を示し、これを「身を切らない改革」であると批判した。これをゲリマンダー（「自維マンダー」）ではないかとする指摘もある。

また、時事通信は定数削減の方針に対して、自民が飲めない企業団体献金の規制強化の代わりに定数削減が出てきたと報道、これに対して藤田は「大間違い」「誤報レベル」と反発し、吉村は「メディアってホント適当なんだな」とX（旧Twitter）に投稿する一方、日本維新の会顧問の馬場伸幸が、反町理のYouTubeチャンネルに出演した際にこれを認めていることが指摘されている。

16日には高市が「政策が近い」として参政党の神谷宗幣代表、20日には「国家観が近い」として日本保守党の百田尚樹と面会し、首班指名における協力を要請した。保守党は首班指名の決戦投票で高市に投票している。

10月20日、自民、維新は正式に連立政権の樹立に合意、「連立合意文書」を発表した。

立憲民主党と国民民主党の間には、民進党分裂以来の安保法制に対する態度の違いがあるとされ、玉木は連立協議について「むしろ今の立憲とは一緒にやれないことが明確になった」とコメントしている。一方で立憲民主党最高顧問の枝野幸男は、高市の首相就任後、安保法制には違憲の部分はない（より正確には、当時の答弁解釈では違憲だったが、解釈と運用次第では合憲であり、現状は問題ない）という見解を示している。

NHK党の自民党会派入りと離脱

10月15日、参議院においてNHKから国民を守る党の斉藤健一郎議員が自民党への会派入りを行っている。兵庫県庁内部告発文書問題・2024年兵庫県知事選でNHK党党首の立花孝志によって所属県議が激しい誹謗中傷を受けていた自民党兵庫県連は強く反発、内部告発文書問題の百条委員会委員長であった奥谷謙一自民兵庫県議は「ふざけるなという思い」とコメントした。仲立ちになったのは西田昌司参院議員とされる。齊藤はのちに立花孝志の逮捕を受けて会派を離脱している。

高市の首班指名と内閣の発足

10月21日、臨時国会（第219会国会）が招集され、高市早苗を第104代内閣総理大臣に指名、内閣が発足した。自由民主党と日本維新の会（閣外協力）による自維連立政権開始。衆参ともに少数与党での発足となった。衆議院では20日に高市への首班指名への態度をめぐって有志・改革の会が解散、うち改革の会の3名が高市早苗に票を投じた。

文部科学相には日中戦争時の日本軍による虐殺事件である南京事件を虚構と主張する映画『南京の真実』への支持を過去に表明していた松本洋平が起用され、南京事件研究者の笠原十九司は「国際的に恥ずかしい」とコメントしている。松本は「（虐殺があったことは否定できないとする）政府見解には従う」とした。

10月22日、各省庁の副大臣及び政務官人事を執行。

10月24日、高市が首相就任後初の所信表明演説を行った。11月1日時点での高市内閣の内閣支持率は82%となり、発足直後としては歴代二位となる高支持率を記録した。高市の総裁選勝利・首相就任により株高と円安が進行し（高市トレード）、27日には日経平均株価が初の50,000円越えを記録した。野村総研の木内登英は株価上昇の理由として、ここ数年の物価高、円安、金融緩和に政権発足のご祝儀相場が乗ったものとし、実体経済の改善を伴わない名目値であると評価している。

2025年10月：就任後の初外遊

クアラルンプール日本人墓地を訪れる高市早苗

日米首脳会談においてドナルド・トランプ米大統領と歩く高市早苗

10月25日、高市は東南アジア諸国連合（ASEAN）首脳会談に出席した。

10月27日にドナルド・トランプ米大統領が訪日、28日には首脳会談を行った。その際、高市は80兆円規模の対米投資文書（共同ファクトシート）に署名した。また、高市がトランプをノーベル平和賞に推薦すると伝達したことについて、批判の的となった。高市は推薦の事実について「お答えを差し控える」としている。

10月30日、高市は2025年韓国APEC（アジア太平洋経済協力会議）への出席のため韓国・慶州へ移動、李在明韓国大統領との会談を行った。当初、立場に大きな隔たりがあると見られていた両氏であったが、李は「心配事は全て消えた」とコメント、両首脳はシャトル外交を継続することで一致した。両首脳の外交については柔軟な政治姿勢を評価する声もある一方、高市の政治姿勢を考えると悪化に傾く可能性もあるとする評価もある。

31日には日中首脳会談を実施した。

第219回臨時国会と予算委員会での応酬

10月4日、5日、6日と衆参本会議で代表質問が行われ、7日からは予算委員会に入った。代表質問では、2022年に岸田政権で以後10年を想定して策定された安保三文書について、防衛費の増額などのためこれを前倒しで改訂する方針や、武器輸出について目的を制限した防衛装備移転３原則を見直し、武器輸出を拡大する方針が示された。また、予算委員会においては、6月に最高裁によって違法とされた2013年度から2015年度の生活保護費の引き下げ（いのちのとりで裁判）について謝罪する一方で、全額補償は行わない方針を示した。また、非核三原則の見直しについての検討を行うともされている。

自民党は12月上旬までに2025年度の補正予算を提出するとしている。

10月11日、有志の会の緒方林太郎が買春の犯罪化について要求、14日には平口洋法相から検討の開始が発表された。

台湾問題

11月7日、高市は中国が台湾を攻撃した場合、これは存立危機事態にあたるものだという見解を示した。中国が台湾に武力攻撃を行った場合、日本がどのような対応を取るかということは従前より、「あいまい戦略」として明確にされてこなかった部分であり、これに対して中国・薛剣大阪総領事が「首を斬ってやる」などと反応、緊張が高まった。中国は、日本の軍国主義が過去、「存立危機事態」を理由に満州などで侵略を繰り返したこと等を引き合いに、高市の発言を非難、撤回を求めた。薛の対応は中国国内ネット世論の影響であることが指摘されている。日経新聞は具体的な場合を挙げることは「手の内を明かす発言だ」と批判、前首相の石破茂は「断定を避けてきた」とこれに苦言を呈した。

トランプ米大統領は、「（中国は友人ではないように）同盟国もまた友人ではない」として中国に対する直接の批判を避けているほか、アメリカ国務省も明確な回答を避けている。CNNは高市の発言が中国の「戦狼外交」を呼び覚ましたとした。南京大学研究員の燕志華は13日に、高市がこれ以上踏み込まないであろうこと、米中双方とも衝突を望んでいないこと、米国ランド研究所が現状維持が最善と提言していること、台湾総統府（民進党）が積極的な発信を避ける一方で、野党国民党主席の鄭麗文が馬場町刑場跡地の「白色テロ」追悼式に参加するなど台湾全体が「緩和シグナル」を発していることを挙げ、これ以降は緩和に向かうだろうという考えを示した。

13日には中国側が金杉憲治駐中大使を呼び出し抗議、14日には日本側が呉江浩駐日大使を呼び出して抗議した。14日、中国は日本への渡航を控えるように国民へ通知した。茂木敏充外務相は15日、なんら国際法には抵触しないことであり、撤回の必要はないと言う考えを示した。

台湾総統府は中国の対応を「政治目的に基づいた威嚇である」と批判する一方で、国民党の馬英九元総統は高市の発言を「軽率な言動」と批判している。

労働政策

高市は2019年の働き方改革関連法で定められた労働時間に上限を設ける規制を見直す方針を示した。健康社会学者の河合薫は「働く人に寄り添うニュアンスを示しているが実際は経済界からの仕事が回らないという要求によるもの」と指摘、長時間労働によって労働生産性が低下することは研究で裏付けられており、欠勤よりも大きな経済的損失になると批判している。全国過労死を考える家族の会代表の寺西笑子は、この方針について「時代に逆行している」と批判しているほか、電通過労自殺事件遺族の高橋幸美は「働く人が選択することは無理」として、労働時間の上限規制の強化を求めている。連合の吉野会長は強い反対の姿勢を示した。

日経新聞の世論調査においては、労働時間の規制緩和に対して約6割が賛成、40歳以下については7割半が賛成であるとされた。一方で、自らが労働時間を伸ばしたいという人は全体の約1割程度であることが指摘されている。これについてリクルートワークス研究所は「誰か別の人の話」として受け止めた人々が賛成とした「思いやり」の結果ではないかと指摘した。

また、石破政権で示された、最低賃金を2020年代に1,500円とする目標については明言を避けている。

日本維新の会の政治資金問題

11月4日、しんぶん赤旗によって、日本維新の会の藤田文武共同代表の政治団体から同氏の秘書が代表を務める会社に公金が還流されたという疑惑が報じられた。また、5日には日本維新の会の大阪支部も同社に政党交付金を充当していたと毎日新聞が報じた。

藤田はこれに対し強く反発、その過程で取材を行った記者の名刺をSNS上に公開した。しんぶん赤旗は、藤田の行為について「記者への攻撃」として削除と謝罪を求めている。弁護士の板倉陽一郎は当該行為について「犬笛型の名誉毀損に近い」と指摘、同じく弁護士の西脇亨輔は報道に対する圧力への危機感を表明している。

立花孝志の逮捕

11月9日、自民党が所属議員と共同会派を組むNHK党党首の立花孝志が逮捕された。立花は直近に日本が犯罪人引き渡し条約を結んでいないUAEのドバイへと渡航しており、警察は海外逃亡を警戒したものと見られている。立花は市長が学歴詐称で失職した伊東市長選挙への出馬を予定していた。高市はこれについて「NHK党とは会派を組んでいない」と答弁したが、のちに齊藤は会派を離脱している。

SNSにおける誤情報の拡散

11月7日、国光文乃外務副大臣がX (旧Twitter）上に「高市首相が3時から働かなければならないのは、野党の質問通告が遅いためだ」としたポストを投稿、拡散されたが、3日後に「誤りが含まれていた」として削除された。当該ポストは、特に立憲民主党と日本共産党について、「二日前正午」の通告期限を守らず、回答を考える官僚を顧みていないという内容であったが、「二日前正午」ルールは2014年に「速やかな通告に努める」というルールに変更されていたことや、今会期中においては通告に遅れはなかったことが指摘された。

内閣

連立与党の日本維新の会が閣外協力の形をとったことで、高市内閣は27年ぶりに自民党議員のみで占められる内閣となった。

関連項目

• 第219回国会 - 2025年度補正予算

• 2025年の政治
• 2025年の日本