音源の無断使用
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2008年2月10日の番組内で放送された8代目林家正蔵「大仏餅」が、過去にTBSラジオで収録及び放送されたものの、レコード・CD化されていない音源であり、同番組には他にも音源の不正使用がある、との指摘が、元TBSスタッフで落語評論家の川戸貞吉からNHKに寄せられた。NHKが確認をしたところ、音源不正使用が発覚。2008年3月28日にNHK広報局の発表で公になり、NHKを含めたテレビやラジオ、新聞等、各種ニュース報道がされた。 元来、NHKの番組側と玉置との取り決めでは、過去にNHKが放送のために収録し、その音源を元にレコード・CD化して市販された音源から選ぶという事になっていた。しかし、放送する音源のほとんどは玉置の独自のコレクションからであり、放送するにあたり、NHKやその他の放送局が収録し後にその音源を元に市販されたレコードやCD等を、玉置自らがテープ等にダビングをして、番組収録前に、事前に放送する素材テープと出典元の音源データ並びにレコード・CD番号をNHKの番組担当者に渡すことになっていた。 それに加え、玉置が珍しい音源や放送時間に納まる音源を放送しようとして、個人的にラジオ、テレビ放送での落語番組をエアチェック等し所蔵していたものからもピックアップしていた。 音源の放送使用許諾作業はNHKの番組側が行っていたが、玉置がテープ等と共に提出した出典元の音源データやレコード・CD番号等には、本来とは違うデータが報告されていたこともあり、そのデータの詳細をNHKの番組側が確認せず、正式な放送使用許諾がないまま放送を行っていたケースもあった。 放送した音源が、著作権処理がなされず未許諾のまま使われた事が判明したため、玉置が自ら番組降板を申し出て、番組打ち切りが決定した事になっている。玉置が、自身の膨大なコレクション音源の元データを完全に管理できていなかったのか、あるいは確信犯的な行為だったのかは不明である。 この音源不正使用の件がNHK側に報告され、調査、関係者との会合等の内部調査に入った事により、2008年3月20日に放送の「ラジオ名人寄席 お彼岸特別興行」の司会と放送内容が急遽変更された。当初の報告前での放送予定演目は松鶴家千代菊・千代若「漫才」、3代目三遊亭圓右「おデート婆ちゃん」、5代目春風亭柳昇「すきやき兄妹」、10代目桂文治「口惜しい」だったが、実際に放送された演目は5代目柳家小さん「長屋の花見」、2代目桂文朝「時そば」、10代目金原亭馬生「花見の仇討」、10代目桂文治「あわてもの」となった。すべて、NHKが収録した音源を元にした市販のCDなどより使用された。 また、2008年4月からのNHKラジオの番組改編では、当初は「新・ラジオ名人寄席」とのタイトルで、司会は変えずに番組をリニューアルする予定だった。しかし、番組打ち切りの決定により、NHK自身の音源を中心に放送し、司会はNHKアナウンサーが担当する「お楽しみ演芸特選」に変更となり、2008年4月6日より放送が開始された。音源不正使用の件がNHKに報告された頃の、NHKの公式サイトに掲載の「番組表」や「番組案内」には、一時期は、元の放送予定や、新年度からのリニューアルの番組案内等も掲載されていた。その後、「番組表」の変更がされ、NHKラジオの「番組案内」では、「ラジオ名人寄席」の掲載内容の変更が数回行われ、その後、掲載されなくなった。 2008年5月28日のTBSの発表によると、NHKから「ラジオ名人寄席」でのTBSの音源無断使用は、29演目で再放送分等も含めて64回の放送だったとの報告を受けたと発表した。TBSラジオからは「早起き名人会」「ラジオ図書館」などから13演目で26回。TBSテレビからは「お待ちかね名作寄席」「東西寄席」「土曜寄席」「落語特選会」などから16演目で38回。全て録音、録画した物は、番組司会者の玉置が所蔵していたとのこと。これによりTBSでは、1回当たり数万円(5〜6万円)の使用料を請求し、音源無断使用のペナルティ料等は請求しないとのこと。 2008年12月8日のNHK広報局の発表で、「「ラジオ名人寄席」音源無許可使用について」、NHK広報局、NHKラジオセンター、NHKエンタープライズの連名での調査報告を行った。 1996年4月から2008年3月まで放送の「ラジオ名人寄席」での音源無許可使用については、1996年5月から2008年2月までで、著作権法上の権利を有する民間放送局や新聞社の合計で7社(テレビ局3社、ラジオ局3社、新聞社1社)の音源を無断で放送し、91演目で、再放送を含めて放送件数では205件が確認されたと報告した。NHKラジオセンターとNHKエンタープライズでは、全社に対して文書で謝罪をするとともに、その使用料を支払うことで合意し、使用料合計の約1,300万円は、NHKとの番組制作委託契約により、「ラジオ名人寄席」の番組制作をしていたNHKエンタープライズが全額を負担するものとした。番組に出演し音源を選定していた玉置が、自らその使用料を負担するとの申し出があり、NHKエンタープライズでは玉置に請求するとのこと。 NHKは、番組内で不正音源を使用した放送回の録音テープで保存していた物を全て廃棄処分とした。 「ラジオ名人寄席」番組関連で、NHKサービスセンターが販売する落語CD・カセットテープの商品の中で、3演目が無許可で音源を商品化していた事が判明し、廃盤とした。 NHKラジオでは、音源不正使用の件が発覚後、過去の演者の落語、番組内でCD等を元に演芸の放送を行う演芸番組が急速に減った。過去の演者の落語や漫才、浪曲などの演芸をCDなどより放送していたラジオ深夜便番組内の「演芸特選」も2008年9月4日放送分で放送終了し、後に、番組コーナー名称を変更し「深夜便 落語100選」となった。2009年4月からの番組編成からは、番組内で過去の演者の落語、演芸の放送を行う演芸番組(番組内でCD等から放送する番組)が全く放送されなくなった。
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