酷道が国道に指定されている理由
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/14 14:26 UTC 版)
「酷道」の記事における「酷道が国道に指定されている理由」の解説
国道指定から長い時間を経過しても、道路整備が進まず酷道状態にある道路は多い。酷道区間を含む道路であっても、歴史的に新しい一般国道の路線が追加指定されてきたという理由は、「国道らしい道を整備したい」とする地方自治体と、その道路を「国の幹線道路とする資質がある」と認める日本国政府との、双方の思惑の一致が事実としてあったからである。 一般国道の路線は、1992年(平成4年)の路線指定(翌1993年4月施行)を最後に路線数は増加していないが、海上国道や一般国道の自動車専用道路などを除くほとんどの路線で、主に既認定されている都道府県道(多くは主要地方道)が昇格するかたちで誕生している。 国道に指定させたい路線を持っている地方自治体(都道府県)は、道路法第5条で規定される国道指定の要件を満たす候補路線を作成し、所轄官庁である建設省に国道昇格を陳情すると、建設省に集まった候補路線のなかから省議にかけられて、さらに絞り込まれた候補路線だけが残り、道路法で設置を義務づけられている道路審議会(議長:建設大臣)にかけられる。この答申結果が建設省の決定案となり、閣議決定を経て一般国道の路線を指定する政令が公布されることにより、新しい一般国道の路線に指定されてきた。 こうして誕生したばかりの国道路線は、前日までカテゴリが低い都道府県道以下の道路であったため、「酷道」になりがちであるが、そこまでして都道府県が欲する道路こそ、整備グレードが高く、かつ迅速に整備したい道路であり、国道になれば、道路の新設や改築にかかる費用の一部を、国の負担・補助を受けることが出来たため、既存道路の国道昇格を国に請願して国道に昇格させることが、地方自治体が道路整備をすすめる上での有力な手段となってきた。 大規模な新設や改築が伴う道路整備においては、地方自治体が道路管理者となっている補助国道(指定区間外)の場合、自動的に国が事業予算の2分の1を負担することとなっているが、都道府県道では主要地方道などの例外を除いて、国から補助を受けることは出来ない。こうした背景にあるのは、地方の財政は国に比べて潤沢ではないからである。 酷道の中には「迷路国道」「迷走国道」とよばれているものがあり、路面や勾配などの路面的な悪条件以外に、不合理で奇妙なルートの取り方で印象づけられている国道を指している。これらは都道府県が在来あった複数の県道などをつなぎ合わせて、国道に昇格させたい路線として道路が一本化されていく過程で、不自然な線形が生まれたものであると同時に、一般国道の追加指定が行われてきた後発路線になるほど、起終点間ですでに整備されている道路よりも、あえて今後整備を必要とする道路が選択される傾向が強くなった結果でもある。 時間を経ても酷道状態の国道が存在する理由はさまざまであるが、その多くは、路線が国道路線として指定されたあとになってから、当該路線の整備事業計画の見直しや、ダム事業など他事業との統合、技術的・地域的な諸問題が判明したことにより道路事業計画自体が延期されるなどが繰り返されてきた結果、酷道状態の道路がそのまま取り残されているのが実体である。 時間は長期化しているものの、そのほとんどは道路整備事業自体が止まっているわけではなく、諸問題が少しずつ解決されるに従って、数年単位で酷道は減少を続けている。実際に、1993年(平成5年)度から2012年(平成24年)度の19年間で、酷道の特徴にも挙げられている自動車通行不能区間の延長は、175 kmから143 kmへと減少している。
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