郊外から都心へ住み替える選択
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/12 05:50 UTC 版)
「東京一極集中」の記事における「郊外から都心へ住み替える選択」の解説
このように、人口が1割以上増加するのは千代田区(1.3%増)、中央区(3.4%増)、港区(1.0%増)の都心3区である。江東区(5.6%増)、文京区(5.1%増)、台東区(1.6%増)、品川区(4.5%増)なども、4 - 5%の高い伸びを示している。いわゆる都心回帰である。 これらは地方からの転入者がすべて、地価の高い都心に位置するこれらの区に移り住んでいるわけではない。これらの地域の人口を押し上げているのは、東京圏に長年住み続けてきた人と考えられている。公共交通機関を乗りいでいた人々の、郊外から都心部への住み替えである。 団塊の世代が一斉に持ち家を求めた1980年代、住宅価格はつり上がった。しかも「夫婦と子供2人」というのが標準的な世帯モデルだったため、多くのサラリーマン層は電車やバスを乗り継いででも、地価の安い郊外で部屋数の多い物件を求めざるを得なかった。こうしたニーズに応えるため、住宅企業も政府も郊外へと宅地開発を進めていった。 ところが、現在では未婚者や高齢者のひとり暮らしが増加している。それは小さな住居でも支障のない人が増えてきたということに他ならず、若い世代はオフィス街や繁華街近くのエリアに、狭くても低価格の物件を探す傾向にある。 団塊の世代は65歳を迎えたのを機に、年配者は連れ合いを亡くした途端、郊外の不便な立地のマイホームにひとりで住み続けるよりも、買い物などの日常生活に便利な駅周辺へ移り住みたいと考える人が増えてきた。 タワーマンションが増え、都心部に住宅が大量に提供されるようになって、物件を求めやすくなったこともある。かつてのような3LDKだけではなく、専有面積が狭く比較的安価なマンションが増えることで、買い換えなどが増えたことにも起因する。 20-30代の女性が多く住む駅(東京23区)順位駅区割合(%)1 有明 江東区 20.5 2 茅場町 中央区 20.4 2 日本橋 中央区 20.4 4 三越前 中央区 20.3 4 人形町 中央区 20.3 6 三軒茶屋 世田谷区 20.1 7 有楽町 千代田区 20.3 8 水天宮前 中央区 20.3 9 神田 千代田区 20.3 10 小伝馬町 中央区 20.3 11 新橋 港区 20.3 12 田町 港区 20.3 12 芝公園 港区 20.3 14 東松原 世田谷区 20.3 15 駒沢大学 世田谷区 20.3 16 東京 千代田区 19.0 16 馬喰横山 中央区 19.0 18 神谷町 港区 18.9 結婚・出産適齢期の若い女性は都心に集中する傾向にある。 経済環境の変化も後押ししている。就業人口が減り始めてオフィス需要の減退が見込まれ、しかもインターネット通信販売の普及で実店舗の利用が減ってきたため、都心部において住宅向けのスペースを確保しやすくなっているのである。総務省の「住宅・土地統計調査」(2018年)によれば、2003年から2018年までの5年間で、「5階建以上」の共同住宅(アパート・マンション)は東京都に7万戸も増えている。こうした都心部マンションの価格が上昇しない限り、都心回帰の流れは続くだろう。都心部に移り住む人々がもともと住んでいた郊外や鉄道駅から遠い地域では、本来ならばより人口が減ってもおかしくなかったところだが、地方からの転入者が穴埋めする形で流入しており、場所によっては微増している。
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