近年の研究者による研究
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/21 21:20 UTC 版)
アラバマ大学の心理学者、ドルフ・ツィルマンは、詳細な実験を重ねて怒りのしくみを調べたという。ツィルマンは、「危険にさらされた」という意識が怒りを喚起する万人共通の要素であると指摘しているという。「危険にさらされた」という意識には、物理的な危険だけでなく、自尊心や名誉に対する抽象的な脅威も含まれる。「不当な扱いや無礼な扱いを受けた」「侮辱された」「大切な目標達成の邪魔をされた」等々の意識が含まれる。 こうした意識・知覚が大脳辺縁系を刺激すると、脳内で複数の経路で反応が起きる。ひとつは、カテコールアミンが放出される。カテコールアミンが放出されると、いわば「攻撃もしくは逃避の、どちらかの激しい行動が一回可能になるだけの」エネルギーが体内で一時的に急増したような状態になり、身体は情動の脳の判断の指令(攻撃もしくは反対の逃避)に備えるかたちになる。 もうひとつの経路としては、扁桃核から副腎皮質神経系を経由して起こる反応があり、これは全身的な緊張を作り出し、数時間から、ときには数日も継続する。この緊張している状態では情動の脳は普段より敏感で、いわば「一触即発」の状態になっている。他者から見ると、いわゆる「機嫌が悪い」という状態である。 また、あらゆる種類のストレスは副腎皮質に働きかけて精神を緊張させ、人間を怒りっぽくするという。普段はやさしい父親でも、仕事でくたくたに疲れて帰宅したときには子供が騒いだり散らかした程度でも頭に血がのぼってしまう。 ドルフ・ツィルマンは、次のような実験を行った。 まず、実験の助手Aが被験者を悪意に満ちた言葉(憎まれ口)で挑発する。次に被験者を二つのグループに分け、片方には楽しい映画を、もう片方には不快な気分になる映画を見せる。その後被験者に、先ほど憎まれ口をきいた助手に仕返しをするチャンスを与える。助手の採用/不採用を検討する際の参考にするという名目で助手の評価を求める。 すると、仕返しの辛辣度は、被験者が直前に見た映画の内容と明らかな関連を示し、不快な気分になる映画を見せられた被験者のほうが助手に対して怒りの度合いが強く、辛辣な評価となった。 医学領域の研究者の指摘 ハーバード大学医学院によると、怒りは心臓発作、脳卒中、または危険な心臓リズムを引き起こす可能性があるとされる。怒りを和らげるに、一歩下がって深呼吸をして落ち着くように勧めた。怒っている場合、激しいトレーニングは心臓にとって非常に危険である。 なお、怒ると体内でアドレナリンが大量に放出され、ノルアドレナリンも放出されている。交感神経のほうが優位な状態になる。
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