農民工賃金未払い問題
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農民工の約2割が建設業に従事しており、施工者ではなく、下請け会社や「包工頭」(いわゆる親方)に雇われている。また、建設業に従事する農民工は、普段は、生活費の一部としてしか賃金が支払われず。旧正月前に一括で支払われる特殊な形をとっており、工事会社から工事代金が支払慣れないことによる賃金未払いが発生してしまう確率が高い。 そうした賃金未払いを理由としたストライキが急増・多発しており、2018年中に行われた全ストライキの約8割が賃金未払いを理由とするものであった。この状況に対して、中国政府は「治欠保支(賃金不払い問題の管理と支払いの保障)三年行動計画(2017-2019)」を2017年7月に打ち出した。2か月後に『農民工賃金不払いの「ブラックリスト」への管理暫定弁法』が発表され、賃金不払い・延滞を行った企業やこれを理由として暴動などを引き起こした企業のブラックリストへの登録、「信用中国」などの情報共有サイト/プラットフォームへのブラックリストの掲載が定められ、2018年1月1日に施行された。そして翌年の2019年6月はじめに、人力資源・社会保障部(厚生労働省に当たる)のホームページ上に、「根治欠薪進行時」(賃金不払いの根本的解決進行中)と題する賃金不払い問題の専門サイトが開設された。人力資源・社会保障部による農民工賃金不払いの「ブラックリスト」は、2018年から2019年11月まで計6回発表され、約260の企業や経営者らが「ブラックリスト」で公表された。ブラックリストに載ると、政府資金支援、政府調達、政府入札、生産許可、適正検査、融資、マーケットアクセス、税金優遇などの様々な面で制限が課される。また、賃金不払いの行政処置を促進するため、2017年年末、各地の行政担当機関に対して「農民工賃金支払いを保障する作業への審査弁法」が発表された。 そして、2019年前半で、賃金未払いを理由とする労働争議の急増を受け、中国各地にある労働人事争議調停仲裁機構が処理した労働争議案件総数は99.1万件となった。この状況に中国政府は2019年8月、『賃金保護活動の実施と農民工賃金不払い争議処理への取組に関する通知』を発表した。この発表の内容には、以下の内容が規定されることとなった。 農民工の賃金不払い争議案件にかかる手続きの簡易化 受理審査および審査判決などに要する時間の短縮 また、調停で解決できない場合に行われる仲裁審理では、各レベルの人民法院(いわゆる裁判所)が「簡易・迅速な処理を可能にする裁判仲裁手続き」に従わなければならなくなった。具体的には、仲裁審査条件に当たる争議は、当日受理し、3営業日以内に相関事項(仲裁人員、答弁、証拠提出、裁判期間など)を一括して当事者に通知すること、単純かつ少額な案件の審査判決は30日以内に短縮することが定められた。 そして、2019年12月に「農民工(出稼ぎ農民労働者)賃金支払い保障条例案」が可決され、以下の内容が盛り込まれ、2020年5月1日に施行された。 市場主体が責任を負い、政府が法に基づき監督・管理し、社会が連携して監督することを堅持する。 銀行振り込みか現金での賃金支給を明確化し、雇用単位に賃金支払いの周期、具体的な支給日に基づき賃金を満額支払うことを要求する 賃金の弁済責任を明確にし、政府の投資プロジェクトで必要な資金は必ず入金されなければならず、施工単位が資金を立て替えて建設を行ってはならない。 建設事業者が施工に必要な資金を手当てしていないときは、着工したり施工許可証を交付したりしてはならない。 農民工の賃金未払い「ブラックリスト」を作成する。 未払い賃金の支払いを拒否したときは法に基づいて強制執行を申し立てることができる。 犯罪の疑いがあるときは司法機関に移送して処理する。
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