じく‐さく〔ヂク‐〕【軸索】
読み方:じくさく
⇒神経線維
軸索
神経繊維
神経細胞 |
---|
神経繊維(しんけいせんい、英: nerve fiber)または神経線維は、神経細胞の細胞体から延びる細長い突起で、神経細胞の軸索(じくさく、英: axon)と神経鞘の総称である[注釈 1]。生物学では神経「繊維」、医学では神経「線維」を使い分けることが多い[1]。
顕微鏡像で軸索部分が白い(主として軸索に巻き付くグリア細胞のもつ脂質が白いことが原因である)ことから「神経繊維」と呼んでおり、神経をマクロ的にとらえた表現であり、神経細胞の部位を指す語句としてはほとんど用いない。神経繊維は活動電位の伝導に加え、神経終末と細胞体との間の物質交換に役立っている。肉眼で確認できる「神経」は、神経繊維の束(神経繊維束)とその周囲の結合組織からなる。

分類
末梢神経の神経繊維は髄鞘の有無(有髄神経繊維、無髄神経繊維と呼ぶ)、直径、伝導速度等で分類される。下表で判る通り、有髄神経繊維と無髄神経繊維では有髄神経繊維が、同じ種類の神経繊維間では直径が大きい方が伝導速度が速い。前者は跳躍伝導、後者は電気緊張電位の広がりの違いによる。
一般に、骨格筋運動と付随する固有感覚、部位のはっきりした皮膚感覚は伝導速度の速い神経繊維を、交感神経活動や鈍痛などは伝導速度の遅い神経繊維を利用して伝えられる。
分類 | 髄鞘 | 平均直径(μm) | 平均伝導速度(m/s) | 役割 |
---|---|---|---|---|
Aα | 有 | 15 | 100 | 骨格筋や腱からの感覚、骨格筋の運動 |
Aβ | 有 | 8 | 50 | 皮膚の触圧覚 |
Aγ | 有 | 8 | 20 | 筋紡錘の錘内筋運動 |
Aδ | 有 | 3 | 15 | 部位が比較的明瞭な皮膚の温痛覚 |
B | 有 | 3 | 7 | 交感神経の節前繊維 |
C | 無 | 0.5 | 1 | 交感神経の節後繊維、皮膚の温痛覚 |
感覚神経(求心性神経)では次の分類が用いられることもある。
分類 | 髄鞘 | 平均直径(μm) | 平均伝導速度(m/s) | 感覚 |
---|---|---|---|---|
Ia | 有 | 15 | 100 | 筋紡錘 |
Ib | 有 | 15 | 100 | 腱器官 |
II | 有 | 9 | 50 | 筋紡錘、皮膚触圧覚 |
III | 有 | 3 | 20 | 部位が比較的明瞭な皮膚の温痛覚 |
IV | 無 | 0.5 | 1 | 鈍痛、内臓痛 |
異常
神経繊維は様々な状況で損傷し、ヒトを含む動物の機能を損なう。外科的に治療出来る場合もあるが、根治出来ないこともある。
脚注
注釈
- ^ 経鞘を持たない場合は、軸索のみを指す
出典
- ^ Company, The Asahi Shimbun. “神経繊維vs.神経線維――世界大戦下の神経戦(上) - ことばマガジン:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2023年2月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年2月1日閲覧。
関連項目
外部リンク
軸索
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/07 16:34 UTC 版)
軸索(axon)とは、細胞体から延びている突起状の構造で、神経細胞において信号の出力を担う。神経細胞中では長さが大きく異なってくる部分であり、ヒトの場合、隣接する細胞に接続するための数ミリメートル程度のものから、脊髄中に伸びる数十センチメートルのものまである。軸索は基本的に一つの細胞体からは一本しか伸びていないが、しばしば軸索側枝(axon collateral)と呼ばれる枝分かれを形成する。 軸索は、その細長い構造を維持するために長い細胞骨格を有する。この細胞骨格は、細胞体で合成された物質を軸索の先端まで輸送するためのレールとしても振舞う。また軸索は、細胞内外のイオンの濃度勾配を利用して情報を伝達するが、そのため軸索表面には多くのイオンチャネルが存在する。軸索が細胞体から伸び始める場所は軸索小丘(axon hillock、または軸索起始部、axon initial segment)と呼ばれており、イオンチャネルが高密度で存在する。 軸索の一部には、グリア細胞が巻きついて出来た髄鞘(ミエリン)と呼ばれる構造を持つものがある。髄鞘を構成する細胞は、中枢神経系ではオリゴデンドロサイト、また末梢神経系ではシュワン細胞である。髄鞘は脂質二重層で構成された細胞膜が何重にも巻きつく形で構成されている。脂質は絶縁体の性質を持つため、髄鞘は、イオン電流の漏洩を防ぎ、電気的信号の伝導速度を上げる効果を持つ跳躍伝導にも寄与している。髄鞘のある軸索を有髄繊維、無い軸索を無髄繊維と呼ぶ。髄鞘に対して核の存在する外側の部分を神経鞘といい、髄鞘を持たない神経を無髄神経という。ここで注意したいのは無髄神経も神経鞘は持っているということである。 軸索の先端は他の細胞と接続してシナプスを形成する。軸索のシナプス結合部はやや膨大しており、これをシナプス前終末(presynaptic terminal)と呼ぶ。シナプス前終末には神経伝達物質を貯蔵しているシナプス小胞、電位依存性のカルシウムイオンチャネル、神経伝達物質を回収するためのトランスポーター、およびシナプス後細胞からのフィードバックやシナプス前抑制などの役割を受け持つ各種の受容体が存在し、これによって軸索はシナプスを通じて他の細胞に信号を伝達する。
※この「軸索」の解説は、「神経細胞」の解説の一部です。
「軸索」を含む「神経細胞」の記事については、「神経細胞」の概要を参照ください。
「軸索」の例文・使い方・用例・文例
- 軸索損傷
- 軸索の、軸索に関する、または、軸索に似ている
- いくつかの神経線維の軸索の周りでさやを形成する物質に関連するさま
- 軸索を覆う外側の膜
- 有髄軸索のミエリン鞘の小さな隙間
- 有髄神経繊維の軸索を覆う(そして絶縁する)ミエリンの層
- 短い樹枝状結晶のある、また、灰白質に分岐する長い軸索か短い軸索のどちらかがある大脳皮質のニューロン
- 神経筋連接で終わらない軸索の末端構造
- 2つのニューロン間(軸索から樹状突起)またはニューロンと筋肉間の結合部
- 大部分の中枢神経系の灰白質を形成し、神経細胞体が埋め込まれている、無髄の軸索、樹枝状結晶、およびグリアブランチの複合ネットワーク
- 神経繊維の軸索の周りにミエリン鞘を形成する白色の脂肪質の物質
- 神経細胞の軸索の末端部分
- 末梢神経系で,ニューロンの軸索の集合体
- 軸索という神経細胞の部分
- 軸索という,神経細胞から発する一本の長い突起
軸索と同じ種類の言葉
- >> 「軸索」を含む用語の索引
- 軸索のページへのリンク