警備の問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/26 22:51 UTC 版)
「アメリカ=メキシコ国境」の記事における「警備の問題」の解説
境界のほぼ全域は、アメリカ合衆国連邦政府の様々な巡視員が警備している。1990年代、アメリカ陸軍の人員が、アメリカ=メキシコ国境沿いに配備され、不法な外国人と麻薬密業者の流入を食い止めた。これらの軍隊は赤外線監視装置やヘリコプターを駆使し、国境警備隊と共同で警備にあたった。不法入国者の密輸組織「コヨーテ」が使用していたところは往来がなくなり、一時的ながら密輸業者と不法入国者は一掃された。 しかし、効果的に思われたこの警備だが、アメリカ軍が撤収すると、またすぐに不法入国が再開された。2001年の9.11テロの後、アメリカ合衆国は警備策として国境に兵士を配備した。このとき、赤外線スコープを搭載した、わずか100機のヘリコプターと良好な装備を持った数百名の兵士で、国境を封鎖できるという意見があった。 しかし反対者は、アメリカ軍が国境を巡回することは、Posse Comitatus Act(「民兵隊壮年団法」。アメリカ国内において、アメリカ合衆国憲法及び法律の定めがある場合を除き、軍隊の治安活動を禁止した法律。元々は南北戦争に伴うレコンストラクション後の1878年に制定された法律で、陸海軍対象だったが1956年に空軍も加えられた。これがSWATが作られるきっかけになる)に違反すると主張した。もっと現実的な者は、国境を完全に封鎖することは不可能で、さらに頑丈で強大な軍が投入され、不法入国に恐らく深刻な影響を与えるだろうと考えた。 アメリカの各州は州兵(National Guard)組織を持ち、原則として、州知事の判断で国境の警備のために配置することが可能である。また、一部の州は緊急時には州防衛軍(State Defense Force)という名の警備隊を動かすことができる。しかしながら、ほとんどの州知事は、地域の企業と、大きくなっていく在米メキシコ人コミュニティの反発を恐れて実行しなかった。 アリゾナ州およびニューメキシコ州は、現在のところ、制御できないほどの不法移民の流入による深刻な状態にある郡を公表し、その結果、両州の知事は州兵を国境に配置することができた。しかし、アリゾナ州の共和党上院議員ジョン・マケインは、施行によって不法移住を軽減しようとしているいくつかの法案に反対し、合法化(多くは恩赦)を勝ち取る法案を上院で提案した。 2006年5月、アメリカ合衆国大統領ジョージ・W・ブッシュは、最大6,000名の州兵が、国境警備隊を支援するための施設を境界に設置する計画を発表した。この計画に反対したのは、カリフォルニア州知事のアーノルド・シュワルツェネッガーで、当初はカリフォルニア州=バハカリフォルニア州の境界に3,000名の州兵を配置するブッシュの要求を拒絶した。しかし後になってシュワルツェネッガーは、カルフォルニア州予算の償還の再保証と、必要な時の部隊の返却を条件に、1,600名以上のカリフォルニア州兵を国境に配置した。 ブッシュ政権の最終年である2008年は、メキシコとの国境警備が厳しくなったこともあり、アメリカにおける国外退去数が約38万人と前年度比で約8万人増加した。国外退去数は、不法移民や不法入国者に比較的寛容であるとされたオバマ政権下でも増え続けた。 2013年6月24日、アメリカ上院は移民制度改革法案を承認、27日に可決した。この法案の中には、アメリカ=メキシコ国境の警備の強化案が含まれており、国境警備隊2万人の増員、国境フェンスの増強、無人航空機やレーダー、センサーに数十億ドルを投入するなど、国境警備の軍事的な面を強化するものとなっている。ただし、この警備の強化には移民に寛容であるべきとする国民からは反対意見が根強く、またこの法案には、アメリカ合衆国国内に存在する不法滞在者に市民権を与える内容も含まれていることから、移民反対派にも反対者が多い。そのため、下院では審議されない可能性も指摘されている。
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