論争が起きた理由
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/24 20:47 UTC 版)
「2019年カナダグランプリ」の記事における「論争が起きた理由」の解説
問題のシーンを迎えるまでの背景として、ベッテルはソフトタイヤが辛くなり26周目でハードタイヤに交換。ハミルトンはステイアウトしてオーバーカットを目指したが、ベッテルのペースが良く29周目を前にハードタイヤに交換した。両者ともハードタイヤに変えてからはハミルトンの方がベッテルよりもペースが速く、28周を残して2人の差は1秒を切っていた。48周目には2台の周回遅れも迫り、ハミルトンはベッテルにプレッシャーを与え、焦ったベッテルのミスを誘うことになった。 詳細は不明だが、メディアの分析では実際のステアリングの動きの精査とテレメトリーデータにて、ハミルトンがベッテルとのクラッシュを避けるためにはブレーキをかけなければならなかったということが示されたことから、ベッテルの行動によって、ハミルトンの動きが制限されたという根拠も確認。それにより、「安全ではない形でコースに復帰し、後方のドライバーの動きを制限した」と判断しタイムペナルティとなったと推測されている。 この件は多くの論争を引き起こし、FIAも2018年ドイツグランプリのように改めて声明を発表し事態の鎮静化を図らない姿勢もそれに拍車をかけた。 元ベッテルのチームメイトであったマーク・ウェバーをはじめとした各カテゴリーのドライバーたちもベッテルのペナルティについて、「レース中に起きたアクシデント」や「故意の進路妨害には当たらない」という観点から辛辣な批判が含まれるほどのコメントを発し、ベッテルを擁護。ベッテル本人も「芝生を抜けて、マシンをコントロールできると思うなんて、彼らには何にも見えていないよ」とスチュワードを批判。また、フェラーリ側も「ベッテルの行動は故意ではない」という判断から控訴する意向を表明した。 一方で、2016年のF1チャンピオンのニコ・ロズベルグは、独自に検証したうえで、「コントロールを失ったことを考慮しても、元はベッテルのミスであり、ルール上の「安全な形でのコース復帰」に失敗した以上、ペナルティは避けられない」とし、スチュワードを擁護。逆にこの件はベッテルのミスが原因であり、判定後の感情的な言動をしたことは良いことではないと批判した。また、時のGPDA会長アレクサンダー・ブルツも「この動きがペナルティの対象だとは見ていない」と断りつつも、2018年日本グランプリのフェルスタッペンのペナルティを挙げ、「危険なコース復帰にはペナルティを与えるという一貫性を持たせた」と分析しスチュワードの判断に理解を示した。そのため、悪法もまた法なりという観点から「スチュワードの判断自体はルールに則ったもの」としてスチュワードを擁護する意見もあった。 そのうち、中立的な意見としては、メルセデスのトト・ヴォルフ代表は「この件にはスチュワードが物議を醸すような判定を下したと驚いた」と断りつつも、「ルールを尊重した結果であり、スチュワードへの過度な批判は避けるべき」ともコメントして、一歩引いた立場のコメント。また、今回のスチュワードらも「ルールを尊重した結果」や「物議を醸す判定もある」として必要以上の弁明は控えた。 一方、時間が経つにつれ、見解の違いはあれど、「偶発的な進路妨害に対するペナルティの一貫性のなさ」や「ペナルティ裁定の透明性のなさ」を指摘する声も出始めた。一例としてダニエル・リカルドが2016年のモナコGPにてハミルトンとのバトル中に今回の件と類似の出来事があったにもかかわらず彼にペナルティがなかったことを挙げ、ペナルティの一貫性のなさを暗にほのめかし、FIAに対し釘を刺した。そのため、以前から指摘されているペナルティの対象の一貫性のなさが改めて露呈することとなり、時のF1のルールに一石を投じた一件でもあった。 この一件に対し、フェラーリは控訴の意志を示すも、一旦は控訴を断念した。改めて6月17日に「新たな証拠」を提出して再審請求を行い、フランスGPの金曜日(6月21日)にヒアリングを行ったが「証拠不十分」で却下され、ハミルトンの優勝とベッテルの2位が確定した。
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