評論家活動
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前掲した著書執筆のほか、『週刊文春』の「漫画羅針盤」や、『ESSE』、『MINE』、共同通信などにコミックに関するコラムを連載、『ダ・ヴィンチ』は不定期で掲載し、さらに『東京新聞』の連載「本音のコラム」にも時事問題を中心とする評論を執筆している。紙面の肩書きはコラムの内容によって、評論家・編集者のどちらかを使い分ける。東京新聞2006年12月17日付コラムでは、サントリー学芸賞受賞の『手塚治虫=ストーリーマンガの起源』の著者竹内一郎をめぐって、マンガ研究者や関係するブログが騒然としていること、手塚研究が複数出て話題になっているにもかかわらず、そうした重要な先行研究への言及がなかったこと、ほとんどの記述は手塚本人の発言のみに依拠していること、同書が九州大学から博士号を授与された博士論文を用いたこと、など簡潔な紹介文を執筆。この時は、肩書きとして評論家を用いた。 上に挙げた東京新聞連載「本音のコラム」は、マンガやコミックの評論ではなく、基本的に時事問題に関する評論となっている。具体的には、たとえば、学校などでの男女児童同室着替え(着替えや、身体測定、いわゆる身体検査を男女同室で行なう問題)や教育基本法改正から著作権、靖国神社問題、水俣病、皇室、学生論文の剽窃の問題まで政治や時事的な話題を中心としたコラムである。例に挙げた竹内一郎についてのコラムは「マンガ批評」と題されているが、これも竹内個人や竹内の論文を批評するというよりも、むしろ九州大学やサントリー文化財団の杜撰(ずさん)な選考体質に言及、それら団体にまともな批判が集中するのは手塚治虫研究がすすんできた証拠であるから、「いいことだ」と論評するものであった。 マンガ評論においては2005年に、雑誌『クイック・ジャパン』誌上で矢沢あいの1985年以降の全作品を解説し、作家論を論じる「進化する矢沢あい」を発表している。 また、マンガ評論家として、たびたび講演も行なう。目黒区男女平等・共同参画センターが企画・主催し、2006年9月20日に同センターで開かれた講演会「コミックの中の女性たち 『NANA』や『のだめカンタービレ』の人気のヒミツ」で講演している。映画がヒットした矢沢あいの『NANA』と、ドラマ化が決まった二ノ宮知子の『のだめカンタービレ』を取り上げ、少女たちから評価されて人気のあるコミック作品には、新たな価値観が含まれているからだと解説し、両作品が、女性が女性であることを肯定的に捉えている「新しい女性像」を描いたと述べている。『NANA』は、ルームメイトの女性二人が、互いの絆を好きな男性との絆よりも優先させる生き方を描き、『のだめ』は主人公女性のつきあう男性側が主人公の意思に学んで、二人がともに成長してゆく対等な関係を描いたコメディー。いずれも従来の「(自分の愛した)男性こそが女である私を救ってくれる」というパターンを越えた作品になっていると指摘、女性の意識に質的な変動が起きており、「女性のセクシュアリティは時代の関数であって時代の移り変わりによって変化する」との従来からの主張を裏付ける解説であった。この年の12月22日、マンガ家・夏目房之介を誘って有楽町の東京国際フォーラムで開かれた「のだめオーケストラコンサート」に聴衆の一人として駆けつけている。
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