製作決定に至るまで
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「新仁義なき戦い」の記事における「製作決定に至るまで」の解説
1974年9月30日にあった岡田茂東映社長と業界記者団との懇談会で、岡田が1975年正月映画について触れ「正月映画は最終決定に至っていないが、高倉健の『日本仁義』でアメリカ製の『ザ・ヤクザ』を決定してみる考えでいる。それと『ドキュメント山口組』(製作されず)。オールアクションの東映で勝負するつもりだ」と話し、東映の当時の企画製作部長・登石雋一は同じ9月のインタビューで「『仁義なき戦い』の続編は正月には諸般の事情で間に合わないです。やはり新シリーズの一つのパイロットですから、前シリーズに負けないようないいものを出さなければいけないというようなこともありまして、また監督は深作でライターは笠原和夫という前シリーズのコンビで行きたいということもありまして、それがちょうど『実録共産党』(製作されず)とだぶるわけです。『実録共産党』の方もまだ最終稿があがってないという状況でして、慌てて『仁義なき戦い』の新シリーズを出すよりは、十分に引き付けて、決定的なものにして出した方がいいということで、『仁義なき戦い』の新シリーズは来年(1975年)3月以降に考えています。ですから正月はジャンルとしては任侠もののジャンルで二週いきたい。それに空手のアクションをつけていきたいと考えております。何をやるかについては、色々難しい問題がありまして、今のところちょっと申し上げられないですけど、過去の任侠路線でのヒット路線の延長という形といえば大体ご推察がつくと思います」などと話し、『新仁義なき戦い』は1975年の正月映画としては、1974年9月頃までは製作を予定していなかった。 また1974年10月頃に取材したと見られる文献に「東映正月第一弾は高倉健主演で『日本仁義』(『日本任侠道 激突篇』と見られる)が予定され、『山口組三代目』シリーズ第三弾『山口組三代目・激突篇』も候補として挙がっている」と書かれた。しかし高倉出演の『ザ・ヤクザ』が洋画系の正月映画として公開されることが決まり、自身が東映に必要とされていないと感じていた高倉は、『無宿』(勝プロ製作・東宝配給)の撮影が終わるといつもの放浪癖ですぐ渡米し、年内は帰国しないと噂された。高倉は『ザ・ヤクザ』をヒットさせて三船敏郎のように国際スターとして活躍したいという思いが強く、無理に東映の正月映画に出演するより東映をソデにした方が得策と考えた。出演料が一本700万円の高倉より、300万円そこそこの菅原の方が興行成績もよく、岡田社長は高倉の出演が当てにできない『日本仁義』製作の一旦中止を決め、菅原主演の「仁義なき戦い新シリーズ」を前倒しして正月映画に決定し、高倉は約10年ぶりに東映の正月映画(第一弾)から姿を消した。本作が前シリーズの焼き直しなのは、企画や脚本に新機軸を打ち出す時間がないまま製作を急いだ事情があったものと見られる。 「新仁義なき戦いシリーズ」の第一弾『新仁義なき戦い』の正式な製作発表があったのは1974年10月23日で、正月第一弾が『新、仁義なき戦い』(当時の文献の表記)/『ザ・カラテ3・電光石火』、正月第二弾が『山口組三代目・激突篇』/『直撃地獄拳・大逆転』と発表され、「後半の『山口組三代目』については又世論がかかるかも知れないが成人映画も覚悟の上で、未成年リミットのないような前半番組とした」と説明があった。東映としては製作すれば大ヒットは間違いない『山口組三代目・激突篇』なら『大地震』や『エアポート'75』『007/黄金銃を持つ男』などの 洋画の超大作や、東宝の百恵・友和映画、松竹の寅さんに伍して1975年正月興行を戦えると踏んでいたが『山口組三代目』を二本もやったことで1974年の秋以降、兵庫県警による東映への捜査が厳しくなり、東映本社等に手入れが入り、岡田社長は兵庫県警から「東映は暴力団と癒着している。『山口組シリーズ』はやめてくれ」と迫られ、ジャーナリズムからも袋叩きに遭い、『山口組三代目・激突篇』の製作中止をやむなく決断した。中止を決めたのは1974年の11月に入りかけで、正月映画が11月頃に中止になると、映画会社にとっては大きな打撃を被り、『山口組三代目・激突篇』は既に脚本もキャスティングも決まり、ポスターも刷り上がっていたため、製作中止で1億円以上の損害が出た。慌てて番組編成をやり直し、正月第一弾を『新仁義なき戦い』/『直撃地獄拳 大逆転』、正月第二弾を『日本任侠道 激突篇』/『ザ・カラテ3 電光石火』に組み直した。
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