緩み防止
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 05:09 UTC 版)
緩み防止のため、以下に示す多様な方法が考案されている。 ダブルナット 最も一般的な緩み防止方法にダブルナットがある。2つのナットを工具で互いに逆方向に締めること(羽交い絞め、ロッキングという)で緩みを防止する。2つのナットの組み合わせによって3種に分類される。等厚型:同じ厚みの六角(並)ナットを使用するので上下の位置の問題は生じない 上低下並型:上に六角低ナットを、下に六角(並)ナットを使用するものであり、軸力は上のナットにかかるため強度不足となる可能性があるが、知識欠如などによる勘違いから施工事例は多い。 上並下低型:上に六角(並)ナットを、下に六角低ナットを使用するもので、工学的に正しい施工法であるが、薄いスパナを用意する必要がある。 ワイヤロック ワイヤロックとは、ボルトの側面に穴を開けてそこに針金を通し、他の部品やボルト同士を結び付けることでボルトの回転止めや脱落を防止する手法である。ダブルツイストワイヤ法では、各ボルト同士の間に往復2本のワイヤが走り、それら2本は全て捻じられる。シングルワイヤ法では各ボルト同士の間は1本のワイヤが走る。いずれの方法でもワイヤが張られる方向は(右ねじでは)時計回りに引っ張られるように留意され、ねじの緩みが防止される。航空機産業のような安全確実な締結が求められる用途で用いられる。 セレーションとフランジ ボルトやネットの締結表面部のギザギザの面はセレーションと呼ばれる。ボルトやネットの締結面だけ広い径にした部分はフランジと呼ばれる。共に締結表面での接触面の抵抗を増すことで緩みを防ぐ工夫である。近年ではダブルナットの特殊なものとして、右ねじと左ねじが同じ1本のねじに刻まれて、2つのナットの回転方向が別々となるような製品も登場している。 座金 陥没による緩みを避けるために座金が使われる事があり、同様の理由で大きめの径のナットが使われる事がある。 フリクションリング付きナット ナットに付いた板バネでボルトのおねじを押さえつけることでナットの緩みを防止する。「U-ナット」とも呼ばれる。 ナイロンナット ナイロン製のリングをナットの上部に埋め込んでおき、このリングがボルトのねじ山に食い込むことでナットの緩みを防止する。ロックナットを参照。 かしめ式ナット かしめ式ナットでは、ナットの一部が肉薄の円筒状になっており、締め付け後におねじ部の溝にこの薄い部分をかしめてナットの回転を防止する。かしめナットとは異なる。 割りピン付きボルト ボルトの先近くに割りピンを刺すための穴が付けられている。 キャッスルナット(溝つきナット)とコッタピン(割りピン) ねじ頭に6分割や12分割の溝が切られたキャッスルナットとコッタピンは、ピンを通すための穴が開けられた割りピン付きボルトと共に用いられる。ボルトには適正な箇所に穴がなければならず、締め付け角度も制限される、作業時間とコストが増すなどが不利な点も多いが、緩み止めとして確実性があるため車輌や産業機械で広く使われている。六角部に切り込みがありものと、六角部から上に出ているものとがある。 精密ロックナット 精密機械でのベアリングなどを固定する目的で、ナットの外周部にめねじの軸方向にめねじ付きの小穴が開けられており、いもねじで固定する。 舌付き座金 座金に「舌」と呼ばれる突起を付けて、締結側とナットの両方を噛み合わせることでナットが回転しないようにする。締結側の適切な位置に穴のような舌の保持部分が必要になる。 組み合わせ座金 ねじのリード角より大きな斜面を放射状に持つ2枚対向する座金を用いる。仮にナットが緩み方向に回転しようとしても2枚のナットの間隔が広がるので軸力が増すように働く。 偏心テーパ二重ナット テーパの付いた2つのナットが噛み合うだけでなく、片側が偏心しているので軸に対して直角方向の力も働き、緩み防止が行える。 コイルスプリング コイル状のスプリングをナット側で余ったボルト先端に装着することで、ナットの脱落を防止する。 ロックボルト 航空機での使用が多い。防犯用ボルトや「アンカーボルト」を意味する場合もある。 接着剤やシールテープで緩み止めを行う方法もある。
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