緩める力
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 05:09 UTC 版)
ねじを緩めることは、重力を除けば斜面に乗っている物体を坂の下へと押し下げることに等しいと考えられる。今仮に、斜面上の重さ W の物体を水平方向に押す力 F' で押すこととする。斜面に働く垂直応力は R - N なので斜面の摩擦係数が μ ならば、斜面上の重さ W の物体に働いている摩擦力 f' は以下の式で表せる。 f ′ = μ ( R − N ′ ) {\displaystyle f'=\mu (R-N')\ } また、斜面に平行な力のつりあいは以下の式で表せる。 T ′ = f ′ − S {\displaystyle T'=f'-S\ } 上式などから F' は次のように表される。 F ′ = W μ − tan β 1 + μ tan β = W ( ϕ − β ) {\displaystyle F'=W{\frac {\mu -\tan \beta }{1+\mu \tan \beta }}=W(\phi -\beta )\ } β > φ の時は水平方向に押す力 F' < 0 となり、釣り合わせるためには押すのではなく引かなければならない状況、つまり押さなくても勝手に坂を下る状況になる。これはねじでは自然に緩んでしまうことを意味する。 したがってねじが自然に緩んでしまわないためには β ≤ φ でなければならない。これをねじの自立条件と呼ぶ。一般的なねじに使われるメートル並目ねじのリード角は2-3度であり、摩擦係数 μ は0.1程で(角ねじで考えれば)摩擦角は約6度となって、ねじの自立条件を十分に満たしている。 締結用で一般的な三角ねじでは、ねじ山の角度 α の60度に対してねじ面に垂直な力は F cos(α/2) となる。この場合は締める力と緩める力はそれぞれ F = 1.16 W tan ( ϕ + β ) , F = 1.16 W tan ( ϕ − β ) {\displaystyle F=1.16W\tan(\phi +\beta ),\qquad F=1.16W\tan(\phi -\beta )} となる。1.16という数値はねじ山の角度 α = 60度から、 1 cos α 2 ≒ 1.16 {\displaystyle {\frac {1}{\cos {\frac {\alpha }{2}}}}\fallingdotseq 1.16} で計算される。 これらのことから、三角ねじをねじ山に沿って回転させるには角ねじの1.16倍ほどの力が必要であり、三角ねじが締結に適していて、角ねじが運動に適することが分かる。
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