緩やかな過程
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/29 18:01 UTC 版)
三畳紀の間の緩やかな気候変動、海水準の上下、ないし海洋酸性化の変化が気候システムにおける転換点(英語版)に達した可能性がある。しかし、三畳紀の動植物のグループに対するそのような過程の影響は解明が進んでいるとは言えない。 三畳紀末の絶滅は当初緩やかに変化する環境に起因するとされた。エドウィン・H・コルバートは三畳紀 - ジュラ紀における生物学的な変遷を確認する研究を1958年に発表し、地質学的プロセスにより陸上のバイオームの多様性が低下した結果絶滅が起こったとした。聳え立つ高地から乾燥した砂漠、熱帯の湿地まで、三畳紀は世界の環境が多様であった時代であると彼は考えた。一方で、ジュラ紀は浅海が広がったため気候も標高も遥かに均一に近かった。 後の研究では三畳紀の終わりごろに向けて乾燥化するという明確な傾向が示された。グリーンランドやオーストラリアといった高緯度地域は実際には湿潤化したものの、世界の大半では劇的な気候変動が起きたことが地質学的証拠により示唆されている。この証拠には炭酸塩と蒸発岩の堆積物(乾燥した気候で最も豊富)の増加、石炭堆積物(石炭森林(英語版)など主に湿潤な環境で形成)の減少がある。加えて、気候は季節性に富むようになり、激しいモンスーンで区切られる長い乾季が生じた可能性もある。 ヨーロッパの地層からは後期三畳紀に海水準が低下して前期ジュラ紀に上昇したことが示唆されている。海水準の低下は海洋における絶滅の原因と考えられることがあるものの、地質史における海面の低下の多くは絶滅の増加と相関しないため、証拠は決定的でない。しかし、酸素の減少(海洋循環の停滞に起因)や強い酸性化など、海洋生命が海水準低下に関連する二次的過程に影響された証拠は複数ある。これらの過程は世界規模ではなかったとみられるが、ヨーロッパの海洋動物相における地域的な絶滅を説明できる可能性はある。
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