続篇への意欲・死とは? わかりやすく解説

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続篇への意欲・死

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/05 08:38 UTC 版)

のんきな患者」の記事における「続篇への意欲・死」の解説

1931年昭和6年12月20日過ぎ、基次郎のもとに『中央公論新年特別号届けられ24日には初めての「原稿料230円を得たこれまでの作品同人誌掲載のものばかりだったため、基次郎にとってそれは〈はじめての経験〉で職業作家になった喜び実感した。そして、これまで間接的に田中西二郎への口添えをしてくれていたであろう人々北川冬彦横光利一川端康成)への感謝気持北川伝えた1932年昭和7年1月下旬、少し落ちつきながらも絶対安静病床の身で、〈早く起きて小説書き度い〉と、基次郎は『のんきな患者』の続篇を出すことを考え、〈「のんきな患者」が「のんきな患者」でゐられなくなるとこまで書いてあの題材大きく完成したいのですが。それが出来たら僕の一つ仕事といへませう〉と語っていた。この頃森鷗外歴史小説史伝読み、〈古い大阪〉というテーマを、〈自分一生といふこと〉と含めて考えていた。 僕はのんきな患者で、これまでの自分文学からはちがつて来た、またちがつてゆくつもりを持つてゐる、僕は昔は気持よい自然観照の眼か一度自分行手 自分病気といふことを振返つて見ると やけくそにならざるを得ないやうな気持になつて、それがあのやうな未熟な作品になつたかと思ふが やはり人間といふものはやけくそではいけないものといふことが僕にもわかつて来たので それは文学といはず僕の生活全体その方に向けるつもりで僕もゐる、非常にあたり前でつまらないやうだが 絶望しながら生きてゐるといふことは結局僕には出来ない — 梶井基次郎中谷孝雄宛て書簡」(昭和7年2月5日付) 基次郎31歳誕生日の少し前には、〈病中ながらも心にある落付き見出し〉て、家賃電燈瓦斯代、汲み取り便所料金など自分で払う生活を〈大層楽しみに思へ〉ていた。また、末期的な病状近づきつつある心境を、〈病気もかういふ風にはつきりした形をとつて来ると そのうつり変つてゆく状態を経験しながら感じることは 必然的に僕に哲学的な思念強ひるやうになる〉と語っていた。 そして春になっても好転することなく辛抱しきれない苦しい時は、死ぬ間際のことを空想し辛抱し通す練習をしたりした。しかしそんな風に何度練習していた或る瞬間に、〈ほんとに俺はいつかかういふ風にして死ぬのか?〉と急に慌て出した。基次郎はその自分気持分析して断片的に綴った慌てるといふのは語弊があるかもしれない、心の最も最後の奴が自分何時かは死ぬといふことをどうしても受け付けない、嫌がるのだ。それからあとはどう考へても死ぬのが嫌だ。それで煩悶した一昨日の夜は夕方より熱が少し高くいろいろのことに癇癪立て深更に至つた、すると熱のだんだん引いてくるとともに近来になく頭が澄み切つて来て 自分運命玻璃鏡現れるやうに現はれた、勿論それは苦し運命だ、すると卑怯のやうだが急に死といふものが親しく見え出した いかにもそれは最後安息だといふ気がするのだ。 — 梶井基次郎日記 草稿――第十六帖」(昭和7年その後2月27日以降友人らへ手紙書けなくなり3月17日日記途絶え3月25日に基次郎亡くなった詳細梶井基次郎#本格小説家への夢――途絶参照)。『のんきな患者』は生前発表され最後作品となった

※この「続篇への意欲・死」の解説は、「のんきな患者」の解説の一部です。
「続篇への意欲・死」を含む「のんきな患者」の記事については、「のんきな患者」の概要を参照ください。

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