絶滅危惧種について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/20 09:19 UTC 版)
「小笠原諸島の自然」の記事における「絶滅危惧種について」の解説
大洋島という脆弱な生態系である小笠原諸島では、多くの絶滅危惧種が存在する。まずオガサワラオオコウモリはかつては父島、母島を中心に数多く生息していたが、アメリカ統治時代には食用として捕獲されてグアム島に出荷されたり、日本復帰後はバナナ、パパイヤ、マンゴーなどの作物を荒らすために駆除されたりした影響で数が激減し、現在は父島、北硫黄島、南硫黄島に数十-100頭あまり、母島、硫黄島に少数が生息するのみとなり、2009年には種の保存法により国内希少野生動植物種に指定された。 鳥類についても特に固有亜種であるオガサワラカワラヒワ、アカガシラカラスバトは生息数の減少、生育環境の悪化が確認されており保護が図られている。オガサワラカワラヒワは近年父島列島と聟島列島では生息が確認されておらず、確実に生息しているのは母島列島と南硫黄島のみである。またアカガシラカラスバトは小笠原諸島全体で数十羽しか生息していないものと推定されており、また固有種のメグロ、固有亜種のオガサワラノスリの状況も楽観できない。オガサワラカワラヒワ、アカガシラカラスバト、メグロ、オガサワラノスリは全て種の保存法により国内希少野生動植物種に指定されている。 海鳥については現在全世界で南硫黄島のみで繁殖が確認されているクロウミツバメなど、人間による環境変化の影響が最小限度に抑えられている南硫黄島は多くの希少海鳥の繁殖場所となっているが、自然災害や病気の流行などで貴重な生育環境に大きな打撃が与えられた場合の影響が懸念されている。 小笠原諸島固有の生態系を代表する昆虫類、陸産貝類の多くも絶滅が危惧されている。昆虫類については父島、母島ではグリーンアノールの捕食によって壊滅的な打撃を蒙っており、特に5種の固有のトンボ類は現在弟島のみで全種類が生息している状態となっている。陸産貝類は父島では侵入したニューギニアヤリガタリクウズムシによってやはり壊滅的な打撃を受けており、陸産貝類の固有種が数多く現存している兄島でも、クマネズミの食害によると考えられる生息数の減少が確認されている。 植物についても現在、自然株が1株のみとなってしまったオガサワラツツジ、数株にまで減少してしまったコバノトベラなど、絶滅が危惧されている種が多い。これは原生林の破壊などによる環境の激変や外来種の侵入などが主な原因と考えられているが、オガサワラツツジやムニンノボタンなどは現在の環境よりも湿潤な気候に順応した種と考えられ、乾燥化が進む中で衰退が進んだ種であったとの説も唱えられている。現在オガサワラツツジやムニンノボタンなどは栽培によって増殖を行い、自生地に戻す試みが進められている。 現在、小笠原諸島の生物のうち鳥類のメグロは特別天然記念物、オガサワラオオコウモリ、アカガシラカラスバト、オガサワラノスリ、オガサワラシジミなど10種の昆虫類、陸産貝類11科、小笠原諸島の磯に産するカサガイ、オカヤドカリが天然記念物として保護され、また国内希少野生動植物としては植物は野生では1株となってしまったムニンツツジなど12種、動物類では天然記念物に指定されている種とオガサワラカワラヒワ、昆虫類としてはオガサワラシジミ、オガサワラハンミョウ、オガサワラアオイトトンボ、ハナダカトンボ、オガサワラトンボの5種が指定されている。
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