第2世代のファイトトロニクス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/13 10:06 UTC 版)
「日本生物環境工学会」の記事における「第2世代のファイトトロニクス」の解説
ファイトトロニクスは、第2次世界大戦後に、環境条件と植物生育との関連を実験科学的に実証することを目途に出発した。当初は、温度、光、湿度等の主要な環境要因の制御環境下における生育を実験的に求め、多くの成果を挙げたが、環境要因を拡大し、人工気象室のイメージをファイトトロンに求め、気象現象が複雑過ぎるため、環境とその条件下において植物が受ける環境ストレスとの生理・生態的関係を科学的に明らかにする本来の目的から逸脱し、行き詰まってしまった。この点の反省から、人工気象室は、一先ず脇に置き、主要環境要因の厳密な制御に基づく環境条件下に於ける植物の生理・生態を、高度な計測により定量化することに目標を変更した植物環境調節科学を第2世代のファイトトロニクスと称す。全米屈指の植物生理学者のクレーマ教授に導かれ、1970年代に米国ノースカロライナ州のデユーク大学(理学面)、及び隣接のノースカロライナ州立大学(栽培学)を中心に、多くの成果を挙げ、世界から注目された。特に、デユーク大学理学部ファイトトロン研究所では、小型サイクロトロンによるリアルタイムの植物葉面への放射線物質(C11)供与と光合成産物として取り込まれた放射線の植物体内追跡に関わるコンピュータ生体計測システムを開発し、植物生体計測の概念を革新した。画像計測に関してはリアルタイムの葉面温度分布の研究(橋本康)がクレーマ教授の指導で第2世代のファイトトロニクスにコミットし、デユーク大と共同で米国植物生理学会で発表し、画期的成果と評価され、続いて日本で開催の日米セミナ「植物生体計測(橋本、クレーマ他)」は第2世代のファイトトロニクスに大きく貢献し、その流れは拡大している(大政謙次、高山弘太郎、他)。日立が開発した人工光植物工場(高辻正基)は、開発の段階では、自作の質量分析計を用いて、栽培植物の最適環境条件を求めるシステムであり、第2世代のファイトトロニクスそのものであり、科学的貢献は大きい。ただし、現実の人工光植物工場は、複雑・高価な生体計測を省略し、普及しているため、そもそもの理工学的価値は、今ひとつ評価されず、実学重視の施設園芸工学サイドとの綱引きに巻き込まれた。九州大学バイオトロンは、ファイトトロンの名称を用いず、小動物も含める環境調節学を目途としたため、第2世代のファイトトロニクスに貢献した科学面は、世界的業績(江口弘美、北野雅冶、吉田 敏、etc)を挙げるも、ある意味で、グローバルな知名度に欠け、国内外から正当な評価を得ていない。ネーミングで知名度にブレーキを掛けたようである。論文のI-Pを含め、此の面を改善していくことは、本学会としても今後の課題である。九大バイオトロン出身で、イリノイ大学で水分生理の第一人者のボイヤー教授のもとで大学院を納めた野並浩は、独・米(ボイヤー教授)で開発した細胞計測の実際的な開発者として、細胞計測への道を開き、質量分析計の応用を含め、植物細胞生体計測の嚆矢と云えよう。
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