社会技術研究開発センターにおける社会技術
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「社会技術」の記事における「社会技術研究開発センターにおける社会技術」の解説
社会技術研究開発センターは独立行政法人科学技術振興機構に置かれている組織の一つである。2000年、「社会技術の研究開発の進め方に関する研究会」では社会技術を「自然科学と人文・社会科学の複数領域の知見を統合して新しい社会システムを構築していくための技術」と定義しており、これが現在の社会技術研究開発センターにおいても基本的な定義として採用されている。 同センターでミッション・プログラムI「安全性に係わる社会問題解決のための知識体系の構築」(2001-06)の研究統括補佐を務めた堀井秀之は、社会技術について、問題解決の目的を主とし、そのために文理協働や問題の俯瞰の重要性を強調する。これは「問題の全体像把握」「分野を超えた知の活用」「問題解決志向の知識連携」という3つのアプローチで表され、「そのような問題認識と解決のアプローチに基づいて開発された解決策が『社会技術』である」(堀井 2007: 15)。そしてそれは科学技術と社会制度をうまく組み合わせたものであるとされる。 社会技術研究開発センター長を務めた市川惇信は社会技術を次のように定義し、社会に向けた、社会のための技術を強調する。 社会技術とは、社会を直接の対象とする技術です。農業技術が農業を対象とし。産業技術が産業を対象とするのと同じ意味合いです、具体的には、社会において、現在存在しあるいは将来起きることが予想される問題を解決しようとする技術です。 社会技術研究開発システムでシステム研究センター長を務めた小林信一は、社会技術を社会のための技術であると同時に、社会の中の技術として定義する。 一方、社会技術研究開発センターに関わった上記の研究者とは異なる立場から、塩沢由典は社会技術研究開発センターによる社会技術を観察し、これを「社会技術の中核をなすものと位置づけてしまうと、社会技術の本来の領域を誤ることになろう」と懸念する。対する彼の定義によれば、社会技術は「社会の運営や維持・発展のために用いられる社会自体が生み出したさまざまな知見やノウハウ、観念をいう」。わかりやすい例としては、度量衡、暦、貨幣、法、民主主義と手広い。これらは社会科学では通常「(社会)制度」と呼ばれるものであり、「かなりの程度に重複している」と認める。だが、「すべての制度は、普及し慣習化した社会技術ということができるが、社会技術は制度より広く、それが制度となる以前から同一の存在としての歴史をもつ」とする。社会を静止画として、制度として確立したものだけを考察するだけではなく、社会技術の開発・実験・普及という重要な契機を通じて、社会が次々に遭遇する問題に対処する手段として社会制度を活用するという視点を持つことが大事であるとする。こうした社会技術の概念はブルデュー(Pierre Bourdieu)のハビトゥスや、山本哲士による社会技術の定義にも通じる。
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