矢代静一とは? わかりやすく解説

やしろ‐せいいち【矢代静一】

読み方:やしろせいいち

[1927〜1998劇作家東京生まれ文学座入り、のち劇団NLT結成参加浮世絵師三部作写楽考」「北斎漫画」「淫乱英泉」で芸術選奨他の作品に「壁画」「夜明け消えた」など。


矢代静一

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/03 23:31 UTC 版)

矢代 静一(やしろ せいいち、1927年昭和2年〉4月10日 - 1998年平成10年〉1月11日)は、日本劇作家脚本家演出家日本文芸家協会日本演劇協会の各会員[1]

来歴

東京市京橋区銀座にて、銀座ヨシノヤの創業者一族の3代目として生まれる。日比谷幼稚園・泰明小学校東京府立第五中学校から第二早稲田高等学院を経て、1950年に[1]早稲田大学文学部仏文科を卒業。

早稲田高等学院在学中の1944年(昭和19年)に[1]診断書を偽造して大学を休学し、俳優座研究生[1]となる。のち、戦時下の移動劇団に加わる[1]。移動演劇隊の『父帰る』(菊池寛原作)などで主役を張ったが、東野英治郎の薦めで演出部に転向する[2]

大学時代は俳優座文芸部に属し[1]、1950年文学座に移り、同世代の三島由紀夫と親交を深める。1950年から演出も始め、劇作家、演出家として活躍[1]。後年に友人の劇作家田中千禾夫らと、師で文学座を主宰した岸田國士の『全集』(岩波書店)を編集した。

この間、1950年12月から1952年4月まで結核で入院し、肋骨を7本切除する。1963年(昭和38年)、文学座が三島作による戯曲『喜びの琴』の上演中止を決定したことで、三島と共に文学座を退座する(喜びの琴事件)。グループNLT結成に参加するが、その後は三島らと離れ、フリーで新劇団などに『写楽考』『北斎漫画』などの戯曲を書き下ろす。

20代よりカトリックに関心を持ち、早くからカトリック信仰に裏打ちされた作品を数多く発表したが、受洗は遅く1969年(昭和44年)だった。聖イグナチオ教会での受洗時には、親交の深かった遠藤周作代父を務めた[3][4]

NHK放送用語委員も務めた[1]

晩年も精力的に活動していたが、1998年(平成10年)正月に自宅書斎で心不全を起こし亡くなっているのが発見された。

主な受賞・受章歴は、1978年(昭和53年)に芸術選奨文部大臣賞1990年(平成2年)に紫綬褒章1997年(同9年)に勲四等旭日小綬章

人物

妻は元女優の山本和子、長女は女優の矢代朝子、次女は元宝塚歌劇団雪組娘役の毬谷友子、姪は元宝塚歌劇団雪組トップスターのえまおゆうと、宝塚・演劇関係者が身内に多数いる。

文壇・演劇関係者としては、阪田寛夫野坂昭如らとならぶ、大変な男性宝塚ファンであったことは有名である。また、小田島雄志、大河内豪と「宝塚ファン・新御三家」を名乗った[2]

戯曲

著書

  • 『壁画 矢代静一戯曲集』(ユリイカ、1955年)
  • 『絵姿女房 プロローグと二場 僕のアルト・ハイデルベルク 抒情喜劇』(ユリイカ 1956年)
  • 『蝙蝠』(戯曲 ユリイカ 1957年)
  • 『矢代静一戯曲集』第1-2(白水社 1967年)
  • 『写楽考』(河出書房新社 1972年)
  • 『七本の色鉛筆』(新潮社 書下ろし新潮劇場 1972年)
  • 『夜明けに消えた 矢代静一戯曲集』(早川書房 1972年)
  • 『イエスへの出発』(コンコーディア社 1973年)
  • 北齋漫畫』(河出書房新社 1973年)
  • 『魔性と聖性』(随筆集 教文館 1973年)
  • 『悲しき恋泥棒』(新潮社 書下ろし新潮劇場 1974年)
  • 『淫乱斎英泉』(河出書房新社 1975年)
  • 『愛情教室』(中央出版社 心のシリーズ 1976年)
  • 『船乗り重吉冒険漂流記』(朝倉摂平凡社 1976年3月)
  • 『神・ひと・そして愛 矢代静一対談集』(聖文舎 1977年5月)
  • 『道化と愛は平行線』(新潮社 1977年2月)
  • 『妖かし』(河出書房新社 1978年2月)
  • 『えくぼを忘れるなんて』(新潮社 1978年5月)
  • 『矢代静一対談集 マリアにささげる12章』(女子パウロ会 1978年2月)
  • 『銀座生れといたしましては』(新潮社 1979年9月)
  • 『聖書-この劇的なるもの』(主婦の友社 Tomo選書 1979年)
  • 『天国と泥棒』(随想集 教文館 1979年10月)
  • 『毒婦の父-高橋お伝』(河出書房新社 1979年7月)
  • 『矢代静一名作集』(白水社 1979年12月)
  • 『恋風浮世絵曼荼羅』(平凡社 1980年6月)
  • 『画狂人・北斎考』(PHP研究所 1981年10月)
  • 『江戸のろくでなし 月岡芳年考』(戯曲 河出書房新社 1982年11月)
  • 『黄昏のメルヘン』(河出書房新社 1982年4月)
  • 『十年目の密会』(河出書房新社 1984年5月)
  • 『旗手たちの青春 あの頃の加藤道夫三島由紀夫芥川比呂志』(新潮社 1985年2月)
  • 『含羞の人 私の太宰治』(河出書房新社 1986年5月/河出文庫 1998年1月)
  • 『夢夢しい女たち』(福武書店 1986年11月)
  • 『奇蹟の聖地ファチマ』(菅井日人写真 講談社 1987年10月)
  • 『鏡の中の青春 私の昭和三十年前後』(新潮社 1988年8月)
  • 『螺旋階段の上の神 カトリックと私』(河出書房新社 1989年10月)
  • 『初初しい女たち』(福武書店 1990年2月)
  • 『小林一茶』(河出書房新社 1991年6月)
  • 『柔らかい心で生きる』(海竜社 1993年7月)
  • 良寛異聞』(河出書房新社 1993年4月/河出文庫 1997年9月)
  • 『生きた、愛した フランシスコ・ザビエルの冒険』(角川春樹事務所 1996年7月)
  • 『快老 人生を楽しみのうちに終わるヒント』(PHP研究所 1997年2月)
共編著 
  • 『心のともしびシリーズ 第3 個人と社会』(田中千禾夫共編 春秋社 1970年)
  • 『新潮古典文学アルバム お伽草子・伊曾保物語』(徳田和夫共著 新潮社 1991年9月)

翻訳

  • モリエール『女学者』(河出書房 市民文庫 1953年)
  • ジロドゥ戯曲全集 第5巻 カンティック・デ・カンティック』(安堂信也共訳 白水社 1958年)
  • コクトー戯曲選集 第2巻』タイプライター(岩瀬孝共訳 白水社 1959年)
  • 「鑓の権三重帷子 近松名作集」(日本文学全集 第10 河出書房新社 1961年)
  • 『ギリシア神話』(世界の文学 1 世界文化社 1978年)
  • 『聖書物語』(三浦朱門共著 世界の文学 2 世界文化社 1978年)

脚本・原作

テレビ

  • 顔が怒れば NTV 1953 脚本
  • テルミは泣いた NHK 1956 脚本
  • 奇妙な幕間狂言 NTV 脚本
  • 織女異聞 NTV 脚本
  • コタンの口笛 NHK 1958 脚色
  • たいこ焼とリボン NHK 1958 脚本
  • 大川仇討 NHK 1959 脚色
  • 明日また KR 1959 脚本 (共作:西島大)
  • こころ KR 1959 脚本
  • 三行広告(第21回)僕の赤ちゃん CX 1959 脚本
  • 愛の劇場 NTV 1959 脚本(西島大、植草圭之助共作)
  • 絵姿女房 KR 原作 (脚色:戌井市郎
  • あざのある女 KR 1959 脚本
  • ボロ家の春秋 CX 1959 脚本
  • 三十円天国 NTV 1959 脚本
  • 一番大事な人 NTV 1959 脚本
  • 不道徳教育講座(第12回)うんとお節介を焼くべし CX 1960 脚本
  • サービス大隊要員 KR 脚本
  • 十二月のあいつ KR 1960 脚本
  • 斧の定九郎 KR 1960 脚本
  • おかあさん(2)(第59回)造花の季節 TBS 1960 脚本
  • 桃色の部屋 CX 1960 脚本
  • NTV 1961 脚本(原作:芥川龍之介「運」)
  • 忠直卿行状記 NTV 1961 脚本
  • 父の初恋 NT 1961 脚本
  • 感傷夫人 1962 脚本(原作:伊藤整
  • 喪われた街 1962 脚本(原作:石原慎太郎)
  • げいしゃわるつ・いたりあの TBS 1962 脚本(原作:有吉佐和子
  • 結婚(第6回)遁走曲 CX 1962 脚本
  • まり子の七夕まつり NTV 1962 劇中劇脚色(劇中劇原作:太宰治)
  • 宝塚民話劇場 KTV 1962 ~ 1965 脚本  
  • 大学生諸君 TBS 1963 脚本
  • 札幌夫人 HBC 1963 脚本
  • 憎いひと KTV 1963 原作 (脚本 西島大)
  • 夫婦百景(第320回)銀座老夫婦 NTV 1964 脚本(原作 獅子文六)
  • おかあさん(2)(第247回)ダルマとアゴヒゲ TBS 1964 脚本
  • プールサイド小景 NHK 1964 脚本
  • あやふやを愛す 36才の純情 TBS 1964 脚本
  • 母の自画像 ABC 1964 ~ 1965 脚本 (原作 石坂洋次郎)
  • バナナの皮 ABC 1965 脚本
  • まんがこども文庫 1978~1979 アニメーション 脚本
  • 二死満塁(ツーダンフルベース) 1982 アニメーション 脚本

映画

脚注

外部リンク


矢代静一

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 04:28 UTC 版)

三島由紀夫」の記事における「矢代静一」の解説

劇作家三島21歳時に川路明を通じて知り合い一緒に太宰治会いに行くなど交流深めた矢代は、一緒に悪所〉に行った例の友人〉として『仮面の告白』に登場するその後新劇界に進んだ矢代通じて劇作をするようになった三島芥川比呂志加藤道夫らとも知り合い演劇仲間として矢代長く行動を共にした。

※この「矢代静一」の解説は、「三島由紀夫」の解説の一部です。
「矢代静一」を含む「三島由紀夫」の記事については、「三島由紀夫」の概要を参照ください。

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