盲点
★1a.すぐ目の前にあっても気づかれぬ物。
『盗まれた手紙』(ポオ) 大臣Dが、某貴婦人の手から重要な手紙を奪い取って隠す。警察が、大臣官邸を一部屋に1週間かけ、拡大鏡を使って1平方インチごとに調べるが、手紙は見つからない。実は手紙は、部屋に吊るしたボール紙製の名刺入れに無造作に差してあり、皆それを目にしていながらも、誰も注意を払わないのだった。
*「目の前の手紙が見えない物語」をヒントに、「目の中に書類を隠す物語」が発想されたのであろう→〔目〕5の『水晶の栓』(ルブラン)。
『オッターモール氏の手』(バーク) ロンドンで連続殺人事件が起こり、警官たちが駆けつけた時には、犯人の姿はどこにも見えない。捜査の指揮を取るのはオッターモール巡査部長で、彼は事件の第一発見者にもなったことがある。実は彼こそが殺人犯であったが、犯行現場にいても、警官ゆえ、まったく疑われなかった。
『見えない男』(チェスタトン) アパートメントの最上階に住む男スマイスが殺され、しかもその死体が部屋から消える。近辺にいた玄関番・作業員・物売り・警官は、異口同音に「誰もアパートメントに出入りしなかった」と証言する。犯人は郵便配達夫で、スマイスを殺し、死体を薄茶色の郵便袋に隠して皆の目の前を通ったのだが、皆、郵便配達夫が通常の業務をしているものと思い、まったく注意を払わなかった。
★1c.あまりに身近にいる男性なので、好きだということに気づかない。
『麦秋』(小津安二郎) 紀子が、隣家に住む医師・矢部との結婚を、突然決める。親友アヤが驚いて、「前から好きだったの?」と聞く。紀子は「そうじゃないの。洋裁で、鋏が方々捜しても見つからず、目の前にあったってことない?」と、たとえ話をする。アヤは「しょっちゅうよ。母なんか、眼鏡をかけながら眼鏡を捜してるわ」と答える。紀子は「それと同じことよ。あまり近すぎて、これまで気がつかなかったの」と言う。
★2.盲点に入ったかのごとく、目前のものが見えなくなる症状。欠視症。
『かげろふ日記』上巻・天暦10年7月 夫兼家の訪れが絶え絶えになり、私(藤原道綱母)は、魂が身体から抜け出たごとき状態となった。その頃、私には、そばに置いてあるものが見えなくなるような症状が現れた〔*兼家が、私の家に置いてあるものを、自邸に持ち帰るようになった、という解釈もある〕。
『たんぽぽ』(川端康成) 木崎稲子は、高校2年生の時ピンポンをしていて、球が見えなくなった。成人後、稲子は恋人久野に抱かれると、彼の身体がしばしば見えなくなった。さらに、久野の前に虹が現れ、久野の口から下、肩も胸も薄れて消えた。稲子は病院に入った。
『田園の憂鬱』(佐藤春夫) 若き詩人である「彼」は都会生活に疲れ、武蔵野の一軒家に移り住むが、神経は癒されなかった。ペン・煙管・箸・ランプなど、使っていたものが不意にどこかへ見えなくなり、家中くまなく捜しても見つからない。後になって、捜したはずの場所から出てくる。そんなことが1日に2~3度あった。
『どらえもん』(藤子・F・不二雄)「モーテン星」 のび太が「モーテン星」という星型バッジを胸につけると、彼の姿全体が皆の眼の盲点に入ってしまい、見えなくなる。ただし効き目は1時間である。のび太はしずちゃんの近くにいて、目に見えぬ守り神になろうとする。しかし、しずちゃんが裸のまま浴室から出て来たちょうどその時、のび太の「モーテン星」の効き目が切れる。
★4.闇の中で明かりを持つ人は、かえってその姿が見えにくい。
『武州公秘話』(谷崎潤一郎) 武蔵守輝勝は、法師丸と名乗っていた少年時代、夜、敵陣へ潜入して総大将を討った。敵兵たちが、松明(たいまつ)を持って集まって来る。法師丸はその間をくぐり抜けつつ、自分でも篝り火の燃えさしを取って振りかざした。手に照明があると、自分の姿がかえって他人から見えにくくなる。法師丸は無事に敵陣から脱出した。
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