理論と方法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/04 13:40 UTC 版)
「デイヴィッド・ハートリー」の記事における「理論と方法」の解説
議論の骨子となるのは物理学・生理学理論としての「振動説」(the doctrine of vibrations)と心理学理論としての「観念連合説」(the doctrine of association)である。前者の振動説は、アイザック・ニュートンのエーテル概念を神経活動の説明モデルに転用したものであり、後者の観念連合説は、ジョン・ロックが人間精神の形成プロセスを感覚知覚から説明するために用いた理論を下敷きにしたものであった。ハートリーは、白板(タブラ・ラサ)としての人間精神が知覚経験の積み重ねによって感覚から最も遠い意識の状態へと成長していく、というロック的な経験構築の過程を振動説によって根拠付けようとした。さらに牧師のジョン・ゲイ(John Gay, 1699-1745)が書いた”the Dissertation concerning the Fundamental Principles of Virtue or Morality"からもヒントを得てて、共感や良心、信仰心も利己的な感情からの連合によって発達したものである、と論じている。ハートリーはこのように、振動説を「科学的」根拠として、ロック的心理学を道徳や宗教感情の原理にまで展開したのである。 また、ハートリーはこの二つの学説をリンクさせるために、「分析と総合」(Analysis and Synthesis)とニュートンが呼んでいた方法を採用する必要性を述べている。ハートリーは第一部の冒頭で、「振動説は一見連合説とつながりがないように思われるかもしれないが、これらの説は実際にはそれぞれ肉体と精神の力の法則を含んでいるものとわかれば、両方の学説、さらには肉体と精神が、相互関係にあることになるはずである。振動はその効果として連合を導き、連合は振動をその原因として指し示すことが予期される。」と述べ、「分析」を通じて両者をつなぐ行動全般の法則を発見、確立することで、そこから予想されうる道徳的・宗教的事象を「総合」的に説明することが本書の目指すところであると述べた。
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