理論と検証
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 14:58 UTC 版)
太陽磁場は宇宙線が直接地球に降り注ぐ量を減らす役割を果たしている。そのため、太陽活動が活発になると太陽磁場も増加し、地球に降り注ぐ宇宙線の量が減少する。スベンスマルクらは1997年、宇宙線の減少によって地球の雲の量が減少し、アルベド(反射率)が減少した分だけ気候が暖かくなった可能性を提唱した。 1998年にジュネーヴのCERN素粒子物理学研究所のジャスパー・カービー(英語版)により大気化学における宇宙線の役割を調査するためにCLOUDと呼ばれる実験が提案され、本格的なデータが得られるのは2010年くらいとされていた。また小規模なSKYと呼ばれる実験がヘンリク・スベンスマルク(英語版)により行われた。2005年の実験では、空気中において宇宙線によって放出された電子が雲の核形成の触媒として作用することが明らかとなった。このような実験により、スベンスマルクらは宇宙線が雲の形成に影響を与えるかもしれないとの仮説を提案した。しかし2011年、CERNのCLOUD実験でも、実際に雲を形成できるような大きさの水滴の生成は確認できていない。提唱者らによる2012年時点の論文でも、仮説に留まっている。また、宇宙線による大気の電離が雲凝結核の生成を促進するモデル以外に雲の上下限に電荷が溜まり雲形成を促進するグローバルサーキットモデルが考えられている。 なお、ウィルソンの霧箱は数百%の過飽和状態であるが、現実大気の過飽和は数%であり、霧箱のような事は起こらないとしている。 現代の気候での実験では、銀河宇宙線量、雲量とも変化が微小なため、スベンスマルク効果の明確な証拠を得ることは難しく効果を証明できなかった。しかし、地磁気逆転期は銀河宇宙線が大幅に増加し、雲量の増加も大きく、日傘効果も強くなるため気候への影響はより高感度で検出できると予想し研究を進めた。その結果、78万年前の地磁気逆転途中に、雲の日傘効果で冬の季節風が強まった証拠を発見し、銀河宇宙線による地球の気候への影響の証拠を発見した。
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