現在の歌会始
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/21 14:46 UTC 版)
例年、お題として漢字一字が指定され、歌の中にこの字が入ることが条件となる(読み方は問わない)。9月末頃の締め切りまで、宮内庁が管轄して広く一般から詠進歌の募集を受け付ける。応募方法は基本的に毛筆で自筆し郵送するが、身体障害を持つ者のために代筆、ワープロ・パソコンでのプリント、点字での応募も可能である。応募された詠進歌の中から選者が10作を選出する。選出された歌は「選歌」として、官報の皇室事項欄及び新聞等にも掲載される。選歌にならなかった場合も、佳作として新聞等に掲載されるものもある。 歌会始の儀は、1月10日前後に皇居宮殿松の間にて行われ、「選歌」の詠進者全員や選者らが招かれる他、陪席者も多数招かれる。大まかな流れは以下の通り。 天皇・皇族が松の間に出御する(全員起立)。侍従と女官がそれぞれ、「御製」(おほみうた、天皇の歌)と「皇后宮御歌」(きさいのみやのみうた、皇后の歌)を捧持し、天皇・皇后の座の前の盆に置く。 披講(歌を詠み上げること)する披講所役は、司会にあたる読師(どくじ・1人)、最初に節を付けずに全ての句を読み上げる講師(こうじ・1人)、講師に続いて第1句から節を付けて吟誦する発声(はっせい・1人)、第2句以下を発声に合わせて吟誦する講頌(こうしょう・4人)からなり、松の間の中央の席で式次第を取り仕切る。これらの所役は「披講会」という団体に属する旧華族の子弟が宮内庁式部職の嘱託として務める。披講は綾小路流で行われる。講師が「年の始めに、同じく、(お題)ということを仰せ事に依りて、詠める歌」と言い、披講が始まる。 まず、以下の順番で詠進歌が披講される。該当者は披講の際は起立し、天皇に一礼する。選歌(詠進者の年齢の低いものから。歌に先立ち、都道府県名と氏名(氏と名の間に「の」を入れる)が呼称される) 選者(代表1名)の詠進歌 召人(めしうど―特に天皇から召された者、毎年1名)の詠進歌 皇族(三后並びに皇太子及び皇太子妃を除く。代表1名)の詠進歌(歌に先立ち、親王は「…のみこ」、親王妃は「…のみこのみめ」、内親王と女王 は「…のひめみこ」と呼称される) 東宮妃(ひつぎのみこのみめ〈皇太子妃〉)の詠進歌 東宮(ひつぎのみこ〈皇太子〉)の詠進歌の順で披講される。 皇后宮御歌を披講。披講前に読師が皇后の前に進みでて色紙を拝受する。披講の前には講師が改めてがその年のお題を読み上げ、「…ということを詠ませ賜える皇后宮御歌」というと、天皇以外の出席者が起立する。皇后宮御歌は2回繰り返して講ぜられる。なお、皇太后が健在時には、皇后宮御歌に先立って「皇太后宮御歌」(おほきさいのみやのみうた)が講ぜられる。 御製を披講。披講前に読師が天皇の前に進みでて色紙を拝受する。講師の「…ということを詠ませ賜える御製」に合わせて天皇以外の出席者が起立、御製を拝聴する。御製は3回繰り返して講ぜられる。 天皇・皇族が還御する。 儀式次第は、NHKの総合テレビ で、全国に生中継される。アナウンサー1名が式次第を実況し、披講の最中に詠まれている歌の背景などを解説する。式次第の終了後、番組の最後に来年度のお題が発表され、詠進の方法もアナウンスされる。当日のニュースでもその模様や詠まれた歌が紹介される場合がある。 披講所役による朗詠そのものの持つ「質的な魅力」に加え、各地の国民の詠進歌が披露されるという全国大会のような興味、また、天皇・皇后をはじめ皇族の詠進歌には、心情・近況が示唆されることもあり、注目を浴びる宮中行事の一つである。
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