現在の実務慣行
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/24 14:42 UTC 版)
「高等弁務官 (コモンウェルス)」の記事における「現在の実務慣行」の解説
16ヶ国が加盟する英連邦王国では、国家元首として英国君主 (現在はエリザベス2世) を戴き、外交関係は伝統的に政府間交流としてもたれてきた。外交関係において、高等弁務官は特命全権大使と同等の地位と役割を持つとみなされている。 英連邦王国の構成国間で交換される高等弁務官は、派遣国の行政府の長から接受国の行政府の長に宛てた、簡素で非公式な紹介状を携行する。一方、特命全権大使の場合は、派遣国の国家元首から接受国の国家元首に宛てた正式な外交文書である信任状を携行する。この違いは、高等弁務官の肩書が「連合王国における女王陛下の政府の高等弁務官(The High Commissioner for Her Majesty's Government in the United Kingdom)」であるのに対して、英連邦王国外に派遣される大使の肩書が「女王陛下の特命全権大使(Her Britannic Majesty's Ambassador)」であることに起因する。 歴史的経緯により、高等弁務官はイギリス連邦を構成する共和制国家やイギリス君主を戴かない君主国 (トンガやエスワティニなど独自の君主を戴く国家) にも派遣される。この場合、通常は派遣国の国家元首から接受国の国家元首に宛てて委任状が発給される。ただし、より簡素な行政府の長からの紹介状でよいとする国や、信任状とすることを望む国もある。 イギリス連邦諸国の外交使節団は大使館ではなく高等弁務官事務所と呼ばれているが、恒久的な高等弁務官事務所が置かれていない国についても高等弁務官を任命することができる。たとえば、フィジーのスバ駐在の高等弁務官は、キリバス、ツバルおよびトンガの高等弁務官を兼務している。ジンバブエは、イギリス連邦諸国として他のイギリス連邦諸国に高等弁務官事務所を設けていたが、イギリス連邦からの脱退に伴って高等弁務官事務所を大使館に切り換えた。 首都以外では、標準的な慣例はとくにない。一般にいう領事にあたる弁務官または副高等弁務官を任命することができ、領事館、弁務官事務所または副高等弁務官事務所で執務が行われる。歴史的には、イギリスの植民地では、独立したイギリス英連邦諸国は高等弁務官によって代表されていた。例えば、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドは1947年のシンガポール独立以来同地に高等弁務官事務所を置いているほか、インドはケニア、トリニダード・トバゴおよびモーリシャスに弁務官事務所を置き、各国の独立後には高等弁務官事務所に改めている。 同様に、イギリス施政下の香港ではカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、インド、マレーシアおよびシンガポールが弁務官事務所を置いていたが、1997年の香港返還により非イギリス連邦諸国の地方都市と同様の扱いとなって総領事館(英語版)に改められ、当時の通商弁務官のロバート・コーニッシュ(英語版)が初代総領事となった。カナダはかつてバミューダ諸島にニューヨーク総領事が兼務する弁務官を置いていたが、現在は現地にカナダ名誉領事館を置いている。 称号としては異なるものの、イギリス連邦諸国の高等弁務官は1948年以来、他国の特命全権大使と同等の外交的地位と席次を認められており、一部の国では他国の特命全権大使以上の特権を与えられている。 例えばイギリス君主は大使よりも先に高等弁務官を接受し、新任高等弁務官を宮殿で接受するにあたって4頭立ての馬車を遣わすが、新任大使には2頭立ての馬車が遣わされる (馬車は牽く馬の数が多い方が格上とみなされる)。高等弁務官は、ホワイトホールの慰霊碑で毎年行われる第一次世界大戦戦没者追悼式典の他、王室の結婚式や国葬など、イギリスの重要な儀式にも参列する。
※この「現在の実務慣行」の解説は、「高等弁務官 (コモンウェルス)」の解説の一部です。
「現在の実務慣行」を含む「高等弁務官 (コモンウェルス)」の記事については、「高等弁務官 (コモンウェルス)」の概要を参照ください。
- 現在の実務慣行のページへのリンク