現代教育の結果
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 23:58 UTC 版)
研究では、基準より成績の低い生徒が多い学校では、教育能力が十分ではない教師を雇っており、その原因は教師の多くが彼らの地元で就職したからであった。このため一部の学校では、生徒の大学進学率が高くなく、そう多くの生徒は大学へ進学しない。大学卒業を希望しながらもそのような学校で学ぶ生徒は、熟練教師の授業を受けた生徒らよりも熟練度に劣っている。このため、教育は貧困の悪循環を永続化させる一因となり得る。そういった学校の生徒は十分に熟練教師のいる学校に比べて、就職を選択する傾向が強い。 そのため学校は、学校教師を他の地域から採用すべきである。スタンフォード大学で学校教育を研究するSusanna Loebによれば、郊外地区から採用した教師は着任初年度のうちに異動する傾向が10倍であるという。この事実は、郊外地区から採用した教師は、他の地域から採用した教師に比べてその学校の状況に影響を受けやすいということを示している。このように、子供が十分な教育を受けられないということは、貧困の悪循環が継続する要因の一つである。 岩手県の漁村では、貧困と教育の問題から地元出身教師の充足率が低く、漁村特有の気性の荒さや勉強ができなくとも船に乗れればいいという考え方から中学校が荒れていたという。学校の荒れはその後の町の未来を暗くし、「教育の悪循環」を生み出すという。その中学生の保護者は、10代に出産した母は家事が上手くできず、生活保護費もやりくりできずに修学旅行費など支払いでトラブルを起こす場合や、父は定職につかないか離職を繰り返し、経済困窮に関わらず携帯電話やパチンコに浪費し援助費も生活費に使っていた事例がある。このような実情に対し、地元中学校教諭からは社会的な知識を子どもに学ばせ、地域の実情を理解した教師が地域の特色を生かした教育をするべきとの指摘もある。 2012年厚生労働白書では、小学生時点の家庭の経済状況と学力、高校卒業後の予定進路、フリーター率との分析の相関関係から、「家庭の経済状況の差が子どもの学力や最終学歴に影響を及ぼし、ひいては就職後の雇用形態にも影響を与えている」と結論付けている。 ただし、平成21年度文部科学省白書によると、OECDの調査では、日本は経済・社会的背景に恵まれない生徒がトップ・パフォーマーに占める割合が34.9%で、OECD加盟国中、2番目に高い水準となっていると貧困の子どもが全て低学力であることは否定しつつも、「国際学力調査によると,我が国は,諸外国と比較して,社会的経済的背景が子どもの学力に与える影響は小さいのですが,ここまでに見てきた様々な調査・分析の結果を見ると,こうした子どもを取り巻く環境の学力への影響を軽視することはできないでしょう」と貧困が学力に与える様々な影響も示唆している。 経済協力開発機構(OECD)が、57の国と地域における15歳児約40万人を対象に行った国際学習到達度調査(PISA)の結果を分析したみずほ情報総研では、「読解力」において習熟度が著しく低い生徒の割合が、2003年に急増したまま推移している点について、日本では90年代後半以降、失業や倒産などが増加したことが背景にあり、こうした親の事情によって潜在的な能力を発揮しにくい環境に置かれた生徒の増加がある可能性を懸念している。 厚生労働省による2013年調査では、高校進学率では一般世帯98.2%に対し、生活保護世帯では89.5%と低いことが分かっている。
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