無政府状態とノルマンディーの相続を巡る問題
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「アンジュー帝国」の記事における「無政府状態とノルマンディーの相続を巡る問題」の解説
詳細は「無政府時代 (イングランド)」を参照 王位継承を安全なものにするために、イングランドとノルマンディーにおける城と支持者が求められた。マティルダとジョフロワ5世はこれに成功し、イングランドにはヘンリー1世とその娘のマティルダという2つの権力が存在した。ヘンリー1世は城をマティルダに譲るのを拒否したり、疑わしく感じたマティルダ支持派の貴族の土地を没収することで分裂を防いだ。1135年までにヘンリー1世とマティルダの主要な争いはヘンリー1世に忠実な貴族たちをマティルダに反抗させることになった。1135年にヘンリー1世が危篤の時にマティルダとその夫はアンジューとメーヌにいたが、マティルダの従兄で王位継承権争いの相手であるスティーヴンはブローニュにいた。スティーヴンは急いでイングランドに駆けつけ、ヘンリー1世死去の知らせを受けて1135年12月にイングランド王に就いた。 ジョフロワ5世は当初、スティーヴンに代わるノルマンディー女公として認めてもらうようマティルダ1人を外交使節としてノルマンディーに送った。しかしながらジョフロワ5世は逃げ隠れていたのではなく、自ら軍を率いて南ノルマンディーの要塞を迅速に落としていった。これらの要塞は以後は失われることはなかった。この時、アンジューの貴族であるロベール3世サブレが現れ、ジョフロワ5世の後衛部隊の前を開き、ジョフロワ5世をアンジューに撤退させて反乱は終わった。 ジョフロワ5世がノルマンディーに戻った1136年9月には、各地方は豪族間の抗争や内紛に苦しめられていた。スティーヴンもノルマンディーに来ることはできず、状況は混沌としていた。ジョフロワ5世は新たな同盟者としてヴァンドーム伯とそしてより重要なアキテーヌ公ギヨーム10世を見つけた。ノルマンディーを征服するための新たな軍備が整えられたが、傷が原因でジョフロワ5世はアンジューに再び戻ることを余儀なくされた。しかも、その軍隊は疫病による下痢に襲われていた。年代記作家オルデリック・ヴィターリスは「侵略者は汚物を引きずりながら故郷に帰って行った」と記す。スティーヴンは最終的に1137年にノルマンディーに到着して秩序を回復したが、グロスター伯ロバートを始めとする多くの支持者からの信用を失った。ジョフロワ5世は抵抗に遭わずにカーンとアルジャンタンを掌握したが、この時にはイングランド王が激怒をしているのでロバートの領地を守らなければならなかった。ジョフロワ5世がノルマンディーで圧力をかけている間にロバートとマティルダは海峡を渡り、イングランドに上陸した。1141年11月のリンカーンの戦いでスティーヴンが捕えられたことにより、そのノルマンディー支配の崩壊が促進された。 ジョフロワ5世はノルマンディー全土を掌握したが、最早アキテーヌの支持は得られなかった。1137年にフランス王ルイ7世若年王がアリエノール・ダキテーヌと結婚したことで自身がアキテーヌ公となり、加えて広大な領域を支配することになったので、ノルマンディーの政変への興味を失ったからである。他方、ジョフロワ5世はノルマンディーの支配権を主張し、マティルダはスティーヴンの同盟者からの打撃を蒙った。ウィンチェスターでロバートはマティルダの撤退を援護中に捕虜となった。そのためマティルダはスティーヴンとロバートの捕虜交換を行った。 1142年にジョフロワ5世は海峡を渡りとマティルダを支援することを求められたが、自身はよりノルマンディーに関心を持っていたためにこれを拒絶した。ジョフロワ5世はアヴランシュ、モルタン、シェルブールの占領に続き、1144年にルーアンに対して決定的な攻撃を行って占領した。その時にジョフロワ5世は自ら聖油式を行ってノルマンディー公に就き、ジゾールを譲渡する条件でルイ7世から正式にノルマンディー公として認められた。ジョフロワ5世はノルマンディーの支配に満足し、たとえイングランドのマティルダが破滅の淵に追いやられようとも、彼女を助けに行こうとはしなかった。ジョフロワ5世の弟エリーは自分の当然の分け前としてメーヌ地方を彼によこすように求めた。しかしこの問題が解決するや否や、別のアンジュー地方の貴族が反乱を起こした。ルイ7世が新たにポワトゥー地方(ポワトゥー地方はアキテーヌ公になったルイ7世のもの)のセネシャル(家令=軍事指揮権を持つ代官、メロヴィング時代の家宰)として任命したジロー2世・ド・モンルイユ=ベリーという別のアンジュー出身の貴族が南アンジューでジョフロワ5世に対する反乱を指揮し始めたからである。
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