火災の概要
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/10 08:20 UTC 版)
「川治プリンスホテル火災」の記事における「火災の概要」の解説
1980年11月20日の15時15分頃、ホテルの浴場棟(木造平屋建て)より出火。 出火の原因は、この日行われていた大浴場と女子浴場の間にあった露天風呂の解体工事の際に転落防止用の鉄柵を切るガスバーナーを使用していたが、このアセチレンガスの火花が何かの拍子に浴場棟の隙間に入り、可燃物に燃え移ったものと推定されている。 またこの日は、自動火災報知設備の増設工事をしており、1時間ほど前に火災報知器の点検作業をしていた。そのため、15時12分頃に火災報知器のベルが鳴った際も、ホテル従業員は工事によるものと誤認し、確認せずに「ただいまのはベルの訓練です」という館内放送を流していた。結果的にこの案内が被害を大きくすることとなった。 当日の宿泊客は112名。その大半は東京都杉並区から紅葉見物に来た老人クラブの2組で、1組は最上階の4階客室に滞在中、1組はホテルに到着したばかりであった。老人クラブの客を乗せてきた観光バスの運転手が、2階廊下に出た際に煙と異臭に気付き、フロント係の従業員に知らせ、フロント係が15時34分に119番通報した。すでに浴場付近は炎と煙に包まれていた。 ホテル従業員数名でバケツで水をかけ、泡消火器で消火を試みたが効果はなく、屋内消火栓設備も使用できなかった。またホテルでは防火管理者を専任しておらず、消防計画も作成せず、避難訓練も行われていなかった。そのため宿泊客への通報や避難誘導が遅れ、新館と旧館の間に防火戸もなかったため、短時間で出火元から全館にわたり延焼が拡大した。 火災の急報を聞きつけ、消防隊員42名と地元消防団385名が消火に駆けつけたが、到着時にはすでに全館に火の手が回り進入は不可能であった。ホテルは崖の上に位置し、消火・救助活動は困難を極めた。さらに、川治ダムの放水前だったため水利を得ることができなかった。 同日の18時45分頃に鎮火。本館および新館を合わせて約3,582平方メートルを全焼、死者45名(男性9名・女性36名)、重軽傷者22名を出す惨事となった。死者の大半は逃げ遅れた高齢者であった。建物が増築に次ぐ増築で迷路のように複雑だったことが命取りとなった。 死者の内訳は、宿泊客40名、従業員3名、バスガイド1名、添乗員1名で、バスガイドと添乗員は取り残された客を助けようとして、火の中へ飛び込んだことによる殉職とされる。死因の多くは新建材から出る有毒ガスに巻かれたことによる一酸化炭素中毒であったという。 このホテルは前年末に実施された消防署の査察で、消火栓・誘導灯など8項目にわたる消防用設備と防火管理体制の不備が指摘されていたがその後も改善されていなかった。
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