源氏星とは? わかりやすく解説

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げんじ‐ぼし【源氏星】

読み方:げんじぼし

青白く見えるところから》「リゲル」の和名。→平家星


リゲル

(源氏星 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/03 21:13 UTC 版)

リゲル[1]
Rigel[2][3]
リゲル(画像中央の星)
仮符号・別名 オリオン座β星A[4]
星座 オリオン座
見かけの等級 (mv) 0.13[4]
0.17 - 0.22(変光)[5]
変光星型 はくちょう座α型変光星(ACYG)[5]
位置
元期:J2000.0[4]
赤経 (RA, α)  05h 14m 32.27210s[4]
赤緯 (Dec, δ) −08° 12′ 05.8981″[4]
赤方偏移 0.000059[4]
視線速度 (Rv) 17.8 km/s[4]
固有運動 (μ) 赤経: 1.31 ミリ秒/年[4]
赤緯: 0.50 ミリ秒/年[4]
年周視差 (π) 3.78 ± 0.34ミリ秒[4]
(誤差9%)
距離 860 ± 80 光年[注 1]
(260 ± 20 パーセク[注 1]
絶対等級 (MV) -7.0[注 2]
リゲルの位置
物理的性質
半径 78.9 ± 7.4 R[6]
質量 23 M[7]
表面重力 1.75 ± 0.10 (log g)[7]
自転速度 25 ± 3 km/s[7]
スペクトル分類 B8Iae[4]
光度 120,000+25,000
−21,000
L[7]
表面温度 12,100 ± 150 K[7]
色指数 (B-V) -0.03[8]
色指数 (U-B) -0.66[8]
色指数 (R-I) -0.02[8]
金属量[Fe/H] -0.06 ± 0.10[9]
年齢 800 ± 100 万年[9]
他のカタログでの名称
アルゲバル, オリオン座19番星[4], BD -08 1063[4], FK5 194[4], HD 34085[4], HIP 24436[4], HR 1713[4], SAO 131907[4]
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オリオン座β星B
β Orionis B
仮符号・別名 オリオン座β星B[10]
リゲルB[11]
星座 オリオン座
見かけの等級 (mv) 6.80[12]
7.50 / 7.60[12]
分類 分光連星[10]
BaとBbの軌道要素
軌道要素と性質
離心率 (e) 0.1[13]
公転周期 (P) 9.860 [13]
準振幅 (K) 25.0 km/s[13]
位置
元期:J2000.0[10]
赤経 (RA, α)  05h 14m 32.049s[10]
赤緯 (Dec, δ) −08° 12′ 14.78″[10]
物理的性質
質量 3.84 / 2.94 M[14]
スペクトル分類 B9+B9[10]
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オリオン座β星C
β Orionis C
仮符号・別名 オリオン座β星C
リゲルC
星座 オリオン座
物理的性質
質量 3.84 M[14]
スペクトル分類 B9V[14]
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リゲル[1][15] (Rigel[2][3]) は、オリオン座β星オリオン座恒星で全天21の1等星の1つ。冬のダイヤモンドを形成する恒星の1つでもある。

概要

β星ではあるが、平均視等級の数字ではα星のベテルギウスよりも明るい。ベテルギウスは半規則型変光星でありこの極大期にのみ明るさが逆転する[注 3]。平均視等級は0.13等[4]で、地球からは約860光年離れている。

主星(リゲル、リゲルA)は、明るすぎて正確な視差の測定が困難とされてきた青色超巨星で、銀河系において肉眼で見える最も明るい恒星のひとつであり、太陽の12万から27万9000倍の光度を持つ。質量が非常に大きいため、中心核での水素核融合は既に終了し、現在はヘリウムからなる中心核が収縮している段階にある[11]。そのため、半径は太陽半径の79倍から115倍まで膨張している。はくちょう座α型変光星 (ACYG) に分類され、およそ22~25日で変則的に0.03~0.3の範囲で等級を変化させる。伴星リゲルBCを持っており、主星よりも1/500倍暗く、望遠鏡でしか観測出来ない。さらにリゲルBCはそれ自体がリゲルBとリゲルCからなる連星で、リゲルBはリゲルBaとリゲルBbからなる分光連星である[11]

物理的特徴

コンピューターで描いた、リゲルと太陽の大きさを比較した画像。左端の小さな円が太陽。実際にはリゲルには黒点は存在しないと考えられている。

数千万年後にはヘリウムの核融合が始まって赤色超巨星となり、更に重い元素の中心核が形成され、超新星爆発を起こすと言われている。一方で、恒星風によって表層から大量のガスが急速に失われており、数百万年経過すると超新星爆発を起こせなくなるほど質量が減り、最後はネオン酸素で構成された白色矮星となって星としての生涯を終えるという予測もある[19]

連星系

リゲルは、少なくとも1822年には、フリードリッヒ・フォン・シュトルーベによって実視連星として観測されている[20]。しかし伴星リゲルBCは、数百倍明るいリゲルAに近すぎて邪魔され、口径150mmクラス以下の望遠鏡で観測するのは困難である[21]。リゲルAとリゲルBCは平均2500au以上離れた軌道を2万4000年[14]~2万5000年以上[11]の周期で公転していると考えられている。

リゲルBCはその名のとおり、リゲルBとリゲルCからなる連星で、平均約100au離れた軌道を63年[14]~約400年[11]周期で共通重心の周りを公転している。リゲルBはそれ自体が分光連星[11][12]、リゲルBaとリゲルBbが9.86日周期で共通重心の周りを公転している[11]。3つの恒星はいずれもB型主系列星である。

さらにこの4つの星の外側、11,500au離れたところにあるK型主系列星が、伴星リゲルDの可能性がある。伴星だとすると、25万年周期で公転していると考えられている[11]

質量はそれぞれ、太陽の23倍(A)、3.84倍(Ba)、2.94倍(Bb)、3.84倍(C)、0.38倍(D)である。

名称

バイエル符号での名称は、オリオン座β星である。リゲルの名称が、最初に記録されているのは1252年に作成されたアルフォンソ天文表である。

固有名

リゲル
  • 語源
アラビア語で「脚」を意味する rijl (رجل, リジュル) が変化したもので、この星のアラビア名 Rijl al-Jawzāʾ(رجل الجوزاء, リジュル・アル=ジャウザー)に由来する[2]。10世紀末から見られる、アラビア語起源の星の西洋名の一つである[2]2016年6月国際天文学連合(IAU)は恒星の固有名に関する[22]ワーキンググループ(WGSN)を組織した。2016年6月30日、国際天文学連合の恒星の固有名に関するワーキンググループは、Rigel をオリオン座β星Aの固有名として正式に承認した[3]
  • 表記と発音
日本での「リゲル」は、原綴りを綴字読み(ラテン語読み)したものからきている。英語では [ライジェル] ドイツ語では巻き舌にした「リーゲール」と発音される。
アルゲバル
リゲルの別名としては、同じアラビア語起源のアルゲバル (Algebar) またはエルゲバル (Elgebar) がある。これは、アラビアでの別名 Rijl al-Jabbār (رجل الجبار, リジュル・アル=ジャッバール、「巨人の足」 の意)から来たものである。リゲルが天文学でも広く使われていることもあり、アルゲバルは、現在では、ほとんど用いられることはない。

和名

『日本星名辞典』に掲載された図と注釈の再現

リゲルの和名は「源氏星」(げんじぼし)とされている[23][24][25][26][27][28]

この和名は源平合戦にちなむ紅白に由来するものだが、当初は現在と逆の解釈があった。

岐阜県において、平家星・源氏星という方言が見つかっている[27][29][30]。 これは昭和25年に、野尻抱影に報告された方言であり[注 4]ベテルギウスの赤色とリゲルの白色を源氏平家の旗色になぞらえた表現に由来したと解釈されている。野尻は農民の星の色を見分けた目の良さに感心し、それ以後は渋谷のプラネタリウムで解説する際には、平家星・源氏星という名称を使用するようになった[29][30]

天文誌、図鑑、野尻抱影や藤井旭の著書をはじめ、多くの本で、リゲルの和名を「源氏星」と特定した上で、岐阜の方言であるとしている[27][29][30][32][33](ただし、岐阜県の揖斐郡横蔵村(現揖斐川町)においてリゲルを平家星とする村の古老が一名いたことが野尻抱影によって紹介されており [29][30]、民俗学の見地から異論を唱える研究者もいる[注 4])。

また、増田正之は昭和60年に、富山県高岡市の市立伏木小学校において、リゲルを源氏星とした方言を見つけている[34]

また、滋賀虎姫(現・長浜市)でリゲルを銀脇(ぎんわき)とする方言が発見されている。これは、オリオン座三つ星の脇にある関係とベテルギウスの金色とリゲルの白色とを見分けた表現から来ている。このように星を色で見分けた表現は、世界的に類を見ないと言われている[29]

その他、リゲルが関係するアステリズムの方言はリゲル関係の方言を参照。

北尾浩一の見解
北尾浩一は、著書の中で揖斐地方で発見された平家星(へいけぼし)をリゲルとして分類している[31][注 4]
多くの書籍で、源氏星がリゲルを示す岐阜の方言とされている事について、野尻抱影の著書における村の古老の証言と逆であると指摘している。北尾浩一は、再調査を行い、発見地とされる揖斐地方では一般的に認識されているの旗印の色とは逆であったことを確認している[35]。この見解が最初に発表されたのは2005年であり、野尻は既に亡くなっていた。野尻は、源氏星をリゲルと特定したが、香田より第一報を受けた後、1000回を超えるやり取りの後、初めて信用したと証言されている[35]

中国名

中国では二十八宿参宿第七星(參宿七)。

脚注

注釈

  1. ^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
  2. ^ 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記
  3. ^ 『2008年 天文観測年表』の175頁に掲載されている半規則型及び不規則型変光星の一覧表ではベテルギウスの変光範囲は0.0等 - 1.3等となっており[16]、同書182頁に掲載されている5.05等より明るい恒星の一覧表[17]及び189頁に掲載されている3.0等より明るい恒星の一覧表[18]ではリゲルの明るさは0.12等となっており、極大期に限りベテルギウスはバイエル符号の順番通りオリオン座で最も明るく輝く。
  4. ^ a b c 北尾は発見者を香田としている[31]。香田まゆみ(または寿男)は昭和25年に平家星をリゲルと特定した古老の存在を野尻に報告している[29][30]

出典

  1. ^ a b 原恵『星座の神話 - 星座史と星名の意味』(新装改訂版第4刷)恒星社厚生閣、2007年2月28日、226頁。ISBN 978-4-7699-0825-8 
  2. ^ a b c d Paul Kunitzsch; Tim Smart. A Dictionary of Modern star Names: A Short Guide to 254 Star Names and Their Derivations. Sky Publishing. p. 46. ISBN 978-1-931559-44-7 
  3. ^ a b c IAU Catalog of Star Names”. 国際天文学連合. 2016年12月16日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s SIMBAD Astronomical Database”. Results for V* bet Ori. 2016年12月16日閲覧。
  5. ^ a b GCVS”. Results for bet Ori. 2015年10月12日閲覧。
  6. ^ Moravveji, Ehsan; Guinan, Edward F.; Shultz, Matt; Williamson, Michael H.; Moya, Andres (March 2012). “Asteroseismology of the nearby SN-II Progenitor: Rigel. Part I. The MOST High-precision Photometry and Radial Velocity Monitoring”. The Astrophysical Journal 747 (1): 108–115. arXiv:1201.0843. Bibcode2012ApJ...747..108M. doi:10.1088/0004-637X/747/2/108. 
  7. ^ a b c d e Przybilla, N. (2010). “Mixing of CNO-cycled matter in massive stars”. Astronomy and Astrophysics 517: A38. arXiv:1005.2278. Bibcode2010A&A...517A..38P. doi:10.1051/0004-6361/201014164. 
  8. ^ a b c 輝星星表第5版
  9. ^ a b Przybilla, N.; Butler, K.; Becker, S. R.; Kudritzki, R. P. (January 2006). “Quantitative spectroscopy of BA-type supergiants”. Astronomy and Astrophysics 445 (3): 1099–1126. arXiv:astro-ph/0509669. Bibcode2006A&A...445.1099P. doi:10.1051/0004-6361:20053832. 
  10. ^ a b c d e f SIMBAD Astronomical Database”. Results for V* bet Ori B. 2016年12月16日閲覧。
  11. ^ a b c d e f g h Kaler, James. “Rigel”. STARS. 2012年1月19日閲覧。
  12. ^ a b c The Washington Visual Double Star Catalog (Mason+ 2001-2014)”. VizieR. 2016年12月16日閲覧。
  13. ^ a b c Sanford, Roscoe F. (1942). “The Spectrographic Orbit of the Companion to Rigel”. Astrophysical Journal 95: 421. Bibcode1942ApJ....95..421S. doi:10.1086/144412. 
  14. ^ a b c d e Tokovinin, A. A. (1997). “MSC - a catalogue of physical multiple stars”. Astronomy & Astrophysics Supplement Series 124: 75. Bibcode1997A&AS..124...75T. doi:10.1051/aas:1997181. 
  15. ^ おもな恒星の名前”. こよみ用語解説. 国立天文台. 2018年11月14日閲覧。
  16. ^ 天文観測年表編集委員会 編『天文観測年表〈2008〉』地人書館、2007年11月、175頁。 ISBN 978-4805207895 
  17. ^ 天文観測年表編集委員会 編 2007, p. 182.
  18. ^ 天文観測年表編集委員会 編 2007, p. 189.
  19. ^ Fred Schaaf (2008-04-21). The Brightest Stars. Wiley. p. 159. ISBN 978-0-471-70410-2 
  20. ^ Washington Double Star Catalogue”. US Naval Observatory. 2017年1月1日閲覧。
  21. ^ Burnham, Robert, Jr. (1978). Burnham's Celestial Handbook. New York: Dover Publications. pp. 1300. ISBN 978-0486235677 
  22. ^ IAU Working Group on Star Names (WGSN)”. 2017年1月1日閲覧。
  23. ^ 三省堂『大辞林』810頁
  24. ^ 日本大百科全書』23巻リゲル項
  25. ^ 野尻抱影 著 『新星座巡礼』 19頁
  26. ^ 野尻抱影 著 『星三百六十五夜』上巻(1978年)38頁
  27. ^ a b c 『月刊天文ガイド』2007年2月号134頁
  28. ^ 講談社『日本語大辞典』(リゲル項)2063頁/平凡社『マイペディア』(リゲル項)1502頁/ポプラ社『ポプラディア』第10巻(リゲル項)/学研の図鑑『星・星座』75頁
  29. ^ a b c d e f 野尻抱影『日本星名辞典』東京堂出版、1973年1月、154-155頁。 ISBN 978-4490100785 
  30. ^ a b c d e 野尻抱影 著 『星の方言集 - 日本の星』 中央公論社、1957年、265-269頁
  31. ^ a b 学術出版会 北尾浩一著 『天文民俗学序説 - 星・人・暮らし』39頁の表より
  32. ^ 藤井旭 著 『宇宙大全』441頁/同著『全天星座百科』150頁/同著『星座大全』35-36頁
  33. ^ 講談社、林完次 著 『21世紀星空早見ガイド』50頁
  34. ^ 増田正之『ふるさとの星 続越中の星ものがたり』15頁および、巻末 富山県星の一覧表3頁
  35. ^ a b 北尾浩一 「『源氏星』と『平家星』」 - 星・人・暮らしの博物館東亜天文学会天界』2005年11月号648頁

関連項目

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