湖沼法指定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/19 03:02 UTC 版)
ダム完成以降、上流部も宅地化が進展し、次第に生活排水が流入するようになった。そのため釜房湖の水質は次第に悪化し、水道水のカビ臭が指摘されるようになった。これは1970年の貯水開始以後、1983年(昭和58年)までに13回も報告され、原因は湖水中の藻類の一種によるものとされた。上水道の35%を依存する仙台市水道局では浄水場に活性炭を投下して異臭防止対策を行っていたが、限界があるため根本的な解決策として釜房湖の水質浄化を計画することとした。 1983年、カビ臭の原因となる藻類を除去するため建設省は「釜房湖水質保全パイロット試験」を実施、全国に先駆けて人造湖の水質浄化対策を開始した。翌1984年(昭和59年)には湖中に「循環式空気揚水筒」を設置した。これは水流が滞ることで水質悪化を招くことから、湖水を空気揚水筒で強制的に循環させることで澱みを無くし、藻類の異常発生によるカビ臭発生防止を図った。さらに、1987年(昭和62年)には湖沼水質保全特別措置法(湖沼法)の指定を受けた。湖沼法は水質汚濁防止法を湖沼に特化し、強化した法律で、国民生活上重要な湖沼における水質汚濁防止を最大の目的としており、2020年現在、琵琶湖・霞ヶ浦・諏訪湖など11湖沼が指定されている。湖沼法指定に伴い宮城県は「釜房湖湖沼水質保全計画」を策定し、特に化学的酸素要求量(COD)と総リン(T-P)を対象に環境基準値以下に抑制する目標を打ち出した。この後空気揚水筒の増設や全層ばっ気循環設備の設置などを行い、釜房湖の表層から深層にわたる全層の湖水を循環させた。 この結果次第に水質は改善を示していった。環境省が定める湖沼の水質基準において釜房湖は水域類型指定AAと2004年(平成16年)に判定された。水域類型指定AAとは水道1級(ろ過などの簡単な処理で飲用可能)・水産1級(ヒメマスなどの水産養殖可能)・自然環境保全に適した水質であり、最上級の水質と認定された。総リンについても環境基準値である0.01mg/lを下回る0.019mg/l(2005年測定)であり、富栄養化されていない。ただしCODについては1990年(平成2年)の3.9mg/lを最高に減少傾向を続け、1994年(平成6年)には1.9mg/lと環境基準値の1.0mg/lに近づいた。ところが2005年には再び2.7mg/lと上昇に転じ、未だ環境基準値以下に抑えられていない。この課題を解決するため現在[いつ?]は2003年(平成15年)に策定した「釜房湖水質保全ビジョン」などを元に新しい方式の全層ばっ気装置の増設などを計画している。
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