決議の効果
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先述のように内閣は議会の信任を要するとすることは議院内閣制の核心的原則である。内閣信任決議案が可決された場合や内閣不信任決議案が否決された場合には内閣は議会の信任を受けていることになるが、内閣不信任決議が可決された場合や内閣信任決議が否決された場合には内閣は議会からの信任を受けていないこととなる。法制度としては、議会が不信任決議を行った場合には当然に内閣は総辞職すべきとする制度と、内閣総辞職か議会の解散かの二者択一とする制度がある。日本国憲法は後者の制度を採用し「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない」(日本国憲法第69条)として、衆議院で内閣不信任決議が可決または内閣信任決議が否決された場合にも無条件に総辞職とするのではなく10日以内に衆議院を解散すれば一定期間内閣は存在することとしている。 内閣総辞職を選択した場合には、国会法に基づいて直ちに両議院に対して通知を行い、憲法の規定に従って内閣総理大臣指名選挙が行われることになる(日本国憲法第67条第1項)。 衆議院解散を選択した場合には、解散の日から40日以内に衆議院議員総選挙を行い、その選挙の日から30日以内に特別会(特別国会)を召集しなければならない(日本国憲法第54条第1項)。ただ、総選挙の結果に関わらず憲法は「衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は、総辞職をしなければならない」(日本国憲法第70条)としている。その趣旨は、それまでの内閣総理大臣を指名した衆議院が存在しなくなり、衆議院議員総選挙によって新たに衆議院が構成されることになった以上、たとえ同一の者が内閣総理大臣に指名されるとしても内閣は新たにその信任の基礎を得るべきであるとの趣旨である。 内閣不信任決議と衆議院解散の関係について、衆議院解散は衆議院で不信任の決議案を可決しまたは信任の決議案を否決したときに限られるとする学説(69条説)もあるが、69条説に対しては憲法69条は衆議院で内閣不信任決議が可決あるいは内閣信任決議が否決された場合の内閣の進退について定めた規定で、内閣を衆議院解散の実質的決定権の主体と定めた規定でもなければ解散を制限した規定でもないとの批判がある。実務上も衆議院解散は憲法69条の場合に限定されていない。 なお、衆議院解散については7条解散と69条解散とに分類して説明されることがある。ただし、憲法上は内閣不信任決議案可決の場合も含め、憲法69条による場合か否かという解散の理由を問わず衆議院解散は天皇の国事行為として詔書をもって行われ、その形式的宣示権は憲法上天皇にあり(日本国憲法第7条3号)、解散詔書の直接の法的根拠は日本国憲法第7条にある。憲法制定直後には解散権の実質的決定権の所在をめぐって大きな対立があった背景から、1948年(昭和23年)の衆議院解散(馴れ合い解散)の解散詔書には「衆議院において、内閣不信任の決議案を可決した。よって内閣の助言と承認により、日本国憲法第六十九条及び第七条により、衆議院を解散する。」と記載された。ただ、その後、衆議院解散における解散詔書の文言は内閣不信任案が可決された場合も含めていずれも単に「日本国憲法第七条により、衆議院を解散する。」という表現となっている。これは衆議院解散は詔書をもって行われるが、この詔書の直接の根拠は日本国憲法第7条にあり、また、この文言は解散の理由を問わないため、一般的には、いかなる場合の衆議院解散についても適用しうるものと解されているためである。このようなことから今日、解散詔書の文言は「日本国憲法第七条により、衆議院を解散する。」という表現が確立されている。実際には便宜的な意味合いで「7条解散」と「69条解散」という分類が用いられることがある。ただ、「7条解散」と「69条解散」という分類は一義的でなく文献によって異なった分類の仕方がなされており、内閣不信任案が可決されたことを受けて内閣が解散を選択した場合を69条解散としそれ以外の場合を7条解散として分類している文献(この分類をとると69条解散は現在までに4例ということになる)がある一方で、詔書の文言を基準として第2次吉田内閣における解散(後述の馴れ合い解散)が69条と7条に基づく解散とした上で他の解散はすべて7条解散であるとして分類する文献もある。 「衆議院解散#解散権の帰属」を参照 また内閣総理大臣が閣僚訴追同意権を悪用する事態や法務大臣が個別事件について検事総長に対する指揮権を悪用する事態は、衆議院が持つ内閣不信任権によって抑制されることになる。
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