水車場の運用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/11 15:09 UTC 版)
一般に水車やタービンには川や専用のため池から水路やパイプ(用水路、導水路、導水管)を通して水を供給する。水流の力で水車やタービンの羽根を動かし、それらが軸を中心に回転し、その回転力によって他の機構を動かす。水車やタービンを回した水は排水路に排水されるが、それが次の水車やタービンの導水路ということもある。水量は水門で調節される。水門は洪水の制御手段にもなる。大規模な水車場には複雑に相互接続された水路があるため、水門も多数存在する。 最古の水車場では水平型の水車を使っていた。単純な羽根のついた水車を水平に流れに沈めて垂直な軸を回転させ、その上部に直接設置された石臼を回転させていた。この種の装置では歯車機構がないため、水車の回転数の限界がそのまま石臼の回転速度の限界となり、作業速度の限界となっていた。 欧米の水車場で使われている垂直型水車は、下射式、上射式、中射式に分類される。水平な軸を回転させるので、これを直接使ってハンマーや杵を持ち上げることができ、鍛冶や縮絨などの作業ができる。しかし石臼を回転させて穀粉を作るには、回転軸を垂直にする必要がある。このためには歯車機構が必要で、歯数を調節することで回転数を上げることができる。欧米の製粉用水車場では水車が水平な軸を回転させ、その先端に歯車がある。この歯車が垂直な軸に設置された歯車とかみ合い、同じ軸上に設置された大きな歯車を回転させる。これに別の小さな歯車をかみ合わせて回転させ、その軸に設置された石臼が回転する。駆動できる石臼の数は水量に依存する。19世紀にはこの機構が改良され、1つの水車で石臼を4つまで駆動可能になった。各段階のギア比を調整すれば石臼の回転速度を上げることができる。水門の開け具合を調整することで水量の季節変動を補償できる。 多くの場合、垂直な軸の大きな歯車で駆動するのは1つの石臼だが、1つの建物にこのような機構が複数存在することも珍しくない。1つの水車で複数の石臼を駆動する機構を初めて描いたのは Henry Beighton で1723年のことである。それを1744年、ジョン・デサグリエが出版した。 上射式水車は比較的後になってからの技術革新で、従来の下射式の約2.5倍の効率である。下射式では水車を単純に水路の水流に設置したものであり、水流によって回転した羽根が後方で水流から出る際に回転を妨げる力が働くため、本質的に効率が低い。上射式は水流を水車の上に持ってくることでこの問題を解決した。水車には単なる羽根ではなくバケツ状の水を溜める部分があり、上からの水をそこに溜める。その重みで水車は回転し始める。バケツは下がるに従って斜めになるので水がそこから流れ落ちていく。水車自体はその排水路に浸かっていないので、回転を妨げる抵抗が発生しない。水の重さだけでなく、上から水車に落ちる水の衝撃も回転に利用される。上射式水車を使うには水車よりも高い位置に水を溜める必要があり、ため池や水路や水門なども建設する必要がある。 19世紀末までにペルトン水車が発明され、従来の水車の代わりに導水管とペルトン水車のタービンを設置する水車場もあった。 水車(鋼製)の先端に歯車の歯を付け、軸ではなく、その歯車を別の歯車と噛み合わせることで駆動する方式もある。 潮力を使った水車場は、動力源として川の流れを使わず、海岸の小さな湾の口に防波堤や道路を築き、そこに設置する。干潮時に水門を開いて徐々に上がってくる海水を湾内に入れる。満潮になると水門を閉める。外側の潮がある程度引いたら水車への水門を空けて内側の海水を流し、水車を回転させる。これはカナダのファンディ湾のように干満の差が大きい場所で特に効果を発揮する。現在も動作する例として Eling Tide Mill がある。 また、大きな橋では橋脚の間の水流がその前後よりも速いため、そこに水車を設置することがある。ロンドン橋の下にはかつて水車場が多数あり、船頭が通りにくいと不平を言っていた。 17世紀の水車場の音 穀粉を挽いている機械の音 この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。
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