殺害された被害者の数との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 16:55 UTC 版)
「日本における死刑」の記事における「殺害された被害者の数との関係」の解説
死刑もその他の刑罰と同様、罪刑法定主義に則った明快な基準の必要性が法曹界で議論されてきた。従来は、どの程度の罪状に対して死刑を適用するか、罪状による適用範囲の重複はあるが、最高裁はおおむね以下のような判例を示していた。 3人以上殺害した場合は、死刑の可能性が高い。 2人殺害した場合は総合的に判断し、死刑か無期刑か有期刑か量刑判断が決まる。 1人殺害した場合は、無期刑や有期刑の可能性が高いが、身代金目的誘拐殺人など、殺害の計画性が高く、動機に酌量の余地がない場合には死刑が選択される場合もある。また、殺人の前科がある場合は1人殺害でも死刑判決が出る可能性が高い。 これに前述の永山基準をはじめ、情状酌量の余地、主犯かどうか、反省の有無、再犯の可能性、更生の見込みといったものを考慮にいれて実際の量刑が決まる。 詳細は「永山基準#殺害された被害者の数」および「永山則夫連続射殺事件#第一次上告審」を参照 また、運用は時代背景とともに変遷がある。警察庁や法務省の統計によれば第二次世界大戦後の殺人数は1954年の3081人、人口10万人中の殺人率3.49人をピークに、単年度の増減はあっても長期的には減少傾向であり、2016年度は史上最少の895人、人口10万人中0.7人を記録した。死刑判決と死刑の執行も単年度の増減はあっても長期的には減少傾向である。 「日本における死刑囚#グラフ」も参照 なお、2012年7月23日に最高裁判所司法研修所が出した「裁判員裁判の量刑評議の在り方についての研究報告書」によると、裁判官が下した過去30年間の裁判例を調査した上で、「死亡した被害者数と死刑判決にはかなりの相関関係があり、死刑宣告に当たっての最も大きな要素は被害者数」であると結論付け、永山基準については「単に考慮要素を指摘しているだけで、基準とはいい難い」と指摘している。 死刑を適用するかしないかの量刑判断において、殺害人数は重要な要素であるが、殺害人数で機械的に決まるわけではなく、殺人の動機・目的、殺害に至る状況・形態、裁判における被告人の言動なども総合的に考慮されて量刑判断されるので、殺害人数は量刑判断の要素の一つであり、殺害人数だけが量刑判断の決定要因ではない。略取・誘拐、強盗、強姦、強制わいせつ、放火、テロの結果として被害者を殺害した場合は、殺害人数が1人でも死刑判決になった事例はある。 組織犯罪の場合、5.15事件、2.26事件、連合赤軍事件、東アジア反日武装戦線の連続企業爆破事件、オウム真理教が起こした事件などのように、多数の被害者を殺害した共同正犯として裁かれた場合、首謀者、指導者、指揮命令者、実行者、補助者、協力者など、犯行グループの中での立場により、量刑判断は死刑、無期刑、有期刑に分かれる。
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