欠陥問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/30 16:10 UTC 版)
「KAI KUH-1 スリオン」の記事における「欠陥問題」の解説
2016年5月、運用中のスリオンに複数の欠陥が発生していることが判明した。欠陥は機体フレームに亀裂が入ることや高空飛行時の低温環境に耐えられずにウインドシールドに亀裂が入るというものであった。これは前月KAIで運用中の試作3号機と4号機の修理の際に発覚したもので、以降陸軍に納入された50機を確認した結果2機で似たような亀裂があることが確認された。また防衛事業庁は機体の左側にある運転時の振動を排除する振動吸収材(ショックアブソーバー)を固定するリベット周辺に微細な亀裂が入ったことを明らかにした。 この欠陥は初期試験の段階で確認されていたが、軍当局はこれまで公開していなかった。前述のアラスカの試験においては2013年2月7日に試作1号機のウインドシールドに亀裂が発生していたが、運用維持の責任を負うKAIが独自調査を行った結果、小石など外部からの物体の衝撃により損傷が生じたものと結論付けて交換していた。これに対して軍当局が亀裂は「致命的な欠陥ではない」と判断して軍への納入を継続させたため事故は続いた。その後も量産17号機、量産28号機のウインドシールドがそれぞれ2014年9月と2015年6月に外部からの衝撃で完全に破損し、2016年1月にもミシガン州で試作1号機の凍結試験を実施したところ再びウインドシールドが破損した。 これを受けて、亀裂が発生した機体については応急措置としてフレームに補強材、ウインドシールドに強化フィルムを取り付けることとし、早ければ翌月にも新たにアブソーバー周辺を強化し、ウインドシールドを機能改善品と交換するなどの改善を施す計画となった。しかし、軍はこの問題に関して飛行安全に問題があると報告されないかぎり飛行停止措置を下さない方針で、軍のある関係者は「現在陸軍と義務司令部(朝鮮語版)がスリオンを運用中なのに、様々な欠陥が発生しており、一部のパイロットは搭乗を回避する場合もある」と述べた。業界関係者は、スリオンのウインドシールドに使用されているアクリル素材はガラス素材に比べ長時間運用できる反面損傷に弱点があるとし、今回のウインドシールドの損傷は外部の衝撃によるもので、自動車と同様に通常の運用中に発生する可能性があるものであって欠陥ではなく、強度を高める改善活動を進めていると述べている。 2016年9月、米国ミシガン州で2015年10月から2016年3月まで行われた101項目におよぶ機体凍結試験において29項目が不合格であったにもかかわらず防衛事業庁はこの事を国防部に報告していなかった事実が国会の対政府質問の過程で明らかになった。同月、国防部と防衛事業庁はスリオンを製作した韓国航空宇宙産業(KAI)に対し、スリオンの第一線軍部隊への納品を全面中断させる命令を下した。 2017年1月16日、防衛事業庁はスリオン14号機の検査中にメインローター作動機(MRA)連結部分に7センチほどの亀裂が見つかったと発表した。 2017年2月3日、防衛事業庁は「すべてのスリオンの運航を全面中断させた」と発表した。 2017年7月16日、監査院はスリオンが飛行安全性を備えていないとする監査結果を発表し、欠陥があったことを知りながら戦力化を進めた疑いがあるとして、防衛事業庁の張明鎮庁長に対する捜査を検察に要請した。
※この「欠陥問題」の解説は、「KAI KUH-1 スリオン」の解説の一部です。
「欠陥問題」を含む「KAI KUH-1 スリオン」の記事については、「KAI KUH-1 スリオン」の概要を参照ください。
- 欠陥・問題のページへのリンク