欠陥の露呈
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/15 02:23 UTC 版)
しかし、極度に軽量化に徹しすぎたために短所も生じた。軽量車体に見合わないセッティングの台車ばねによる振動・動揺の大きさはその最たるものである。また断熱・保温が構体内に吹付けられたアスベストのみに依存し、窓も大型であるため、内装に木材を多用し窓も小さい従来型客車と比較して保温性が悪かった。 さらに1970年代以降、薄い鋼板を採用したことによる外板の状態の劣化や、寝台車における一段下降窓が裏目に出て車体下部の腐食が急速に進行、製造から10年あまりで老朽化が目立つようになった。国鉄の労使紛争により保守環境が悪化したことも、状態の悪化に拍車をかけた。 1971年10月、山陽本線を走行していた急行「雲仙」の座席指定車として使用されていたナハ10形の洗面台から出火し、火元の車両を含む3両が焼失する事故が発生した。この時は屋外での火災だったが、逃げ遅れた乗客1名が煙に巻かれて窒息死した。しかし、この時点では車両に対しての火災対策は、洗面所くず物入れの金属化など軽微なものにとどまった。 1972年11月、北陸トンネル火災事故が発生し、死者30名の大惨事となった。当初、出火原因が10系食堂車オシ17形の石炭レンジにあったとされたため、事故後、当時急行列車用として残存していたオシ17形はただちに営業運転から外されたが、検死の結果、全員の死因が一酸化炭素中毒による中毒死であることが判明し、前年の事故とともに、可燃性かつ有毒ガス発生の危険がある合成樹脂材を10系客車の内装材に多用していることによる防災面での不備が問題視された。 国鉄では、狩勝実験線での走行試験を含め、実車を使用した火災試験を数度に渡り実施し、現状の内装では火災が広がる可能性が高いこと、また火災対策を実施した車両の、防火性の高さが確認されたため、合成樹脂材からアルミ化粧板への取替えなどの難燃化工事が実施されたものの、急行列車の特急格上げおよび電車・気動車化、さらには新幹線の延伸による急行列車自体の廃止などによってスハ43系客車に余剰が発生したことから、座席車の多くは未施工のまま廃車された。
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