模型におけるツィンメリット・コーティング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/01 15:54 UTC 版)
「ツィンメリット・コーティング」の記事における「模型におけるツィンメリット・コーティング」の解説
長い間、第二次大戦後期のドイツ軍車輌を製作する模型愛好家(モデラー)にとって、ツィンメリットの再現は正に鬼門であり、様々な方法が試みられてきた。 当初は、ペースト状の模型用パテ(油性アクリル系塗料の溶剤で薄められる、いわゆるラッカーパテ)を表面に塗りつけた後、ヘラやマイナスドライバーなどでパターンをひとつひとつ刻んでいく手法が採られていた。ツィンメリット・コーティングされた実車の写真から、コーティングのパターンは大きく2種類あったと考えられる。1つは凹凸の間隔が不均一だったり斜めになっていて、溝(山)を一つ一つ刻んで施されたと思われるもの。もう1つは一定間隔の溝(山)が、平行かつ均一のパターンで繰り返し施されているもの。前者は左官がコテを使うようにパターンを作ったと想像され、当初モデラーがラッカーパテとマイナスドライバーを用いていた手法が近かったということになる。しかしラッカーパテの場合、パテの乾燥に間に合わせるには熟練が必要で非常に手間が掛る割に、硬化時のシンナーが抜けによる「肉痩せ」まで考慮して工作しないと、凹凸が浅くなってしまう。後者の場合、実車においてもブレード状のヘラを使ってパターンを刻んだと考えられるもので、残された実車の写真から、このブレードはノコギリのタテ挽き刃の様な斜めの山形ではなく、後述のコーティングブレードのように二等辺三角形が並んだものであったと考えられる。 熱したマイナスドライバーやヒートナイフ(半田ゴテの先端の部品をナイフ状のものに換装した工具)によって、プラスチックの部品に直接「彫刻」する手法も採られた。しかし有毒ガスが出る上に加減が難しく、失敗すると部品を使用不能にしてしまう危険があった。 この当時もごく少数ながら、最初から部品にコーティングのモールドが刻まれたキットもあったが、金型技術が現代ほどではなかったため、モデラーを満足させる出来ではなかった。 このため、多くのモデラーはこれを嫌い、例えばティーガーIであれば敢えてツィンメリットの施されていなかった前期型仕様車を選ぶといった形で作業を敬遠する傾向も強かった。なおこの頃の日本では「セメントコーティング」という呼称が一般的であった。 1985年、大日本絵画社から日本語版が発行された「シェパード・ペインの戦車の作り方」には、後述するレザーソウやローラーによるコーティングの手法が、わずかながら記載されていた。しかし当時の日本の模型業界では一般的ではなかったエポキシパテを用いていたこともあり、この技法が広まることはなかった。 1993年、タミヤから発売された1/35キングタイガーの説明書にて、表面にポリエステルパテを塗りつけ、硬化前にレザーソウ(模型用薄刃ノコギリ)で掻き取って溝をつける手法(ポリパテブレード法)が紹介された。乾燥時の肉痩せが無いなど、従来法より遙かに簡便にツィンメリットが表現できるとあって爆発的に広まった。これには後に、エッチングにより作られた薄いステンレス製の専用工具も発売されている。 2003年、ミリタリー模型専門誌「月刊アーマーモデリング」誌上にて、エポキシパテとスタンプローラーを用いた手法が発表された。これは実車のコーティングの特徴からの手法の考察から編み出された物で、既に使用が一般化していたエポキシパテを薄く盛りつけた上から、パターンの刻まれたローラーを転がして転写していくという方法である。ポリパテブレード法に比べるとやや手間は掛かるものの、非常にリアルな仕上がりになる事や、専用ローラーの自作加工によりあらゆるパターンに対応可能である事などから現在の主流となっており、同誌のガレージキットブランドであるモデルカステン他から専用のローラーも発売されている。 2020年代では、普及が進みつつある3Dプリンターを使用した作例なども見られる。 その他、キット表面に貼り付ける紙やプラスチックのシート状の物や、最初から(金型技術の向上で、過去のものよりリアルさを増した)ツィンメリットコーティングのモールドが施されたガレージキットやプラモデルなども発売されている。
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