更迭の理由
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/14 17:27 UTC 版)
田母神論文中には日本国政府の見解(村山談話、小泉談話)と異なる、或いはその見解を否定する立場からの主張が行われていると防衛省幹部と政府は判断した。 政府の対応の理由 浜田靖一防衛大臣は、参議院外交防衛委員会でなぜ懲戒手続きに入らなかったのかと質問されて、懲戒手続きに入ろうと検討したが長期化した場合1月21日に田母神が定年退職になり審理が終わってしまうので、一番厳しい措置をするべきだと考え、早期退職を求めたと答弁した。 政府は自衛隊法46条の「隊員としてふさわしくない行為」に当たる可能性があると判断し、懲戒免職を検討したが、田母神が辞職を拒否し懲戒調査に応じる姿勢を見せたため、2009年1月21日である幕僚長としての定年までに手続きが間に合わないと判断し、幕僚長解任・一空将となっての幕僚監部付を命じて更迭処分とした。この処分により定年が縮り、11月3日付けで定年退官となった。規定通り支払われる退職金6000万円について、浜田靖一防衛大臣からは自主返納を求められた田母神は返納を拒否した(#退職金返納問題)。 自衛隊法施行規則第71条には「調査の結果、規律違反の事実があると認めたときは、当該事案につき審理を行わなければならない」という記述がある。そのため、懲戒手続きには審理の手続きが不可欠である。しかし懲戒事案の場合、大半の対象者が審理を辞退するため防衛省側も審理辞退を求めた。しかし田母神は、岩崎航空幕僚副長から審理の辞退をするように求められたのに対し、審理してもらった方が問題の所在がはっきりすると述べ、審理辞退を行わなかった。このため田母神を「航空幕僚長たる空将」として扱った場合の定年である2009年1月21日までに審理が終わる見通しが立たず、防衛省から河村建夫官房長官に「処分に持ち込むのは無理です」との報告があったという。このため退職金への批判を懸念して懲戒にこだわっていた官邸側も折れ、「田母神が制服姿で持論を訴えたら致命的だ」と考えていた防衛省により、定年延長の取り消しが決まったという。 自衛隊法施行規則第72条第2項問題 2008年11月11日の田母神の証人喚問が行われた参議院外交防衛委員会において、民主党参議院議員の浅尾慶一郎は、自衛隊法施行規則の第72条第2項に「任命権者は、規律違反の疑がある隊員をみだりに退職させてはならない。」とあることから、懲戒手続きを進めずに田母神を更迭したことが”みだりに退職させた”にあたるのではないかと質問した。 浅尾は過去の懲戒手続きが平均54日であり、10月31日から翌年1月21日までならば間に合うと指摘したが、浜田防衛相は「今回の場合はみだりということではなくて、その理由がしっかりあるからそういう形を取った」「今一番早い形でお辞めになっていただくのが重要だ」「基本的には一番、懲戒免職に至るまでの日数からすればこれは十か月ぐらい掛かっている」と答弁した。 内規への抵触 自衛官が外部に意見発表する際には上官(田母神の場合は中江公人大臣官房長)への連絡を要すると定めた内規が存在する。 これについて中江官房長は「官房長通知の中で、幕僚長等が職務に関しまして部外に論文等を発表するときには官房長に文書で通報をするということになっていまして、そういう意味では内規に反している」としており、文書による通知が行われず、内規違反に当たることを認めた。 ただ中江官房長は田母神との役所の外での雑談の中で「当該懸賞論文の応募について言及があった」が、「論文のテーマですとか内容についての言及はなかった」としており、「論文の内容ですとかあるいは通報の手続などについて確認をするべきであった」と手続きの甘さを認めている。
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