日米と中国の主導権争い
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/31 03:47 UTC 版)
「東アジア共同体」の記事における「日米と中国の主導権争い」の解説
2002年1月、シンガポールで発表された小泉首相による東アジア・コミュニティ構想は一種のスローガンとも言われるが、この構想でも、対米関係を意識してその枠組みを中国主導のASEAN+3に限定したくないとの外交的配慮が働いており、日本は豪州とニュージーランドへ参加を呼び掛けていた。 アジア太平洋経済協力(APEC)の重要性を訴える米国も、1990年代初頭に浮上した東アジア経済グループ(EAEG)構想や東アジア経済協議体(EAEC)構想に反対した だけでなく、2004年8月にはコリン・パウエル国務長官が「ASEAN+3の枠組みの必要性については未だ納得していない」と発言するなど、東アジアにおける地域化については非常に敏感になっていた事を窺わせている。 2005年2月の日米安全保障協議委員会共同発表 は「地域メカニズムの開放性、包含性及び透明性の重要さを強調しつつ、様々な形態の地域協力の発展を歓迎する」とした。この共同発表に関して、東アジア共同体評議会有識者議員を務める神保謙は、「これは明らかに、東アジア共同体構想というものが開放性を担保した上で推進していくということであれば、これをアメリカは歓迎する用意があるということの理解に達したんだということについて、いわゆる国務省・国防総省と、日本側のカウンターパートがそのような理解に達しているということを示したものだと、外務省地域政策課が発言した」と語っている。 東アジア共同体に反対する米国と、それに追随する日本のこれら一連の動きは、米国を中心とする西側諸国の東アジアにおける政治・経済・安全保障上のプレゼンスの維持と、21世紀においてアジアの軍事大国としてその存在感を一層増す事がほぼ確実と見られる中国の、東アジアにおけるリーダーシップ確立阻止を目的としたものとの指摘がある。 現在の日米と中国との政治的対立は、前述の日中関係をより複雑にさせるものであり、それに因る日中のみならず東アジア諸国の関係への影響も無視できない。実際、ASEANとのFTA交渉に向けた動きでは、域内他国間のFTAによる対中包囲網を警戒した中国と、中国・ASEAN自由貿易協定による日本の影響力低下を懸念する日本とが、半ば競争気味にFTA締結に向けて動き出した感が否めない。 研究プロジェクト『日中韓3カ国の競争力比較共同研究』で、日中韓によるFTAによって3カ国全ての経済成長率が押し上げられるとの予測も踏まえ、ASEAN+3あるいは日中韓という枠組みでのFTAを検討する方が賢明であるとの声がある。 2011年、米韓自由貿易協定締結および野田政権の米国主導TPPへの参加表明で、アジアおよび環太平洋諸国経済圏構想の情勢は大きく動き始めた。これまで米国やインドを除外するASEAN+3を主張していた中国も、米国やインドを含めるASEAN+6構想を無視できなくなってきたとする見方が強い。いずれにしても、世界第3位経済規模を有し貿易額も大きい日本は、米国と中国の両陣営から経済圏構想への参加を求められている状況であるが、国内政治の混迷からアジア経済圏構想におけるリーダーシップを取れる状況にはない。
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