日本の馬産の現状
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/12 09:23 UTC 版)
日本のサラブレッドの大半は北海道の日高地方で生産される。日高地方は日本でも有数の規模を持つ日高山脈に発する水系が、競走馬の発育に重要なミネラル成分を豊富に含んでおり、河川敷の小規模な放牧地でも馬産に適した土壌が得られる為である。2014年の統計によれば、国内の生産頭数6,903頭のうち6,737頭が北海道産で、更にそのうち5,462頭は日高産である。北海道以外では青森県(80頭)、鹿児島県(26頭)、熊本県(21頭)、栃木県(19頭)などとなっている 日高地方における馬産の詳細については日高振興局における競走馬の生産を参照 。 このような極端な集中は、馬産地での馬伝染性貧血などの家畜法定伝染病の発生により日本の馬産が壊滅的な被害を受けるリスクをはらんでいる。また日高地方の経済は競走馬関連産業への依存度が極めて高く、競馬や馬畜産をとりまく環境の変化による経済への影響を受けやすい。 馬産地には生産・購買の過程において古い慣習が多く残されている。たとえば仔分け制度は戦前「馬小作」と呼ばれた慣習の名残である。また、口約束による売買契約が多い、仲介者や代理人などが入り込み、当事者関係が複雑になりやすいといった問題も指摘されている。 生産界は世界的な傾向として、生産馬の売却を目的とするマーケットブリーダーが増加し、自己所有を目的とするオーナーブリーダーは減少傾向にある。この傾向は競走馬市場における自由で活発な取引によって支えられるはずのものであるが、日本では庭先取引と呼ばれる非公開の取引が支配的である。これは、農地法により、競走馬の所有者が自ら生産活動を行うことが大きく制限されていることから考え出された日本の独特な生産方式である。所有者の中には、このような制限のない海外で競走馬生産を行うものも現れており、自己名義で海外で生産した競走馬を外国産馬として日本に持ち込む例が増加している。 一方、近年は公開の市場取引(セリ市)も増え、1億円を超す高額価格馬の登場が耳目を集めることもある。また、かつては行われなかった2歳馬のセールが行われるなどの市場改革の試みもはじまっている。 2002年には生産者の定義も国際基準に合わせて変更された。国際基準では生産者とは母馬の所有者を指す。母馬の所有者は牧場に母馬を預託し、牧場は施設や人材を提供して預託料を受け取るというのが国際的な生産方式である。日本では、前述の農地法の制約により牧場が母馬を所有しているため、従来は生産牧場を生産者と称してきた。このような国際基準に合致しない表示を継続した場合、日本産馬のサラブレッド登録を一切認めないとの通知により、日本の表示方式も改められた。 種牡馬市場においては、1980年代から社台グループによる寡占化が進み、ノーザンテースト、リアルシャダイ、トニービン、サンデーサイレンス、アグネスタキオン、マンハッタンカフェ、キングカメハメハ、ディープインパクトによって、1982年以来30年以上に渡りリーディングサイアーの座を独占し続けている。 ちなみに北海道は大生産地のため同地で生産された馬の生産地は市町村名だけで表示されることがほとんどである(例:北海道で生産された馬は千歳市、新冠町などと表示。それ以外は青森県、千葉県などと表示)。
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