日本における底質汚染問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 17:42 UTC 版)
「底質汚染」の記事における「日本における底質汚染問題」の解説
日本では底質の環境基準はダイオキシン類のみ(150pg-TEQ/g)が定められておりこの基準を超過するもの(詳しくは底質の環境基準を参照)のこと。 なお、PCBや水銀には底質暫定除去基準が定められており、対策は一旦行われた水域もある。 環境白書に底質についての言及が現れたのは昭和46年版公害白書であり、それまでは典型公害として、大気汚染、水質汚濁、騒音、振動、地盤の沈下、悪臭の6種を公害の対象として捕らえていたが、冷却用水等による温排水問題やヘドロ問題に対処すれる為に「水底の底質の悪化」を公害の対象として認識するようになった。ここで言う「ヘドロ問題」とは東京湾、大阪湾、田子の浦港、洞海湾、伊予三島港のヘドロである。問題にしているのはCOD(生物の大量死)や硫化物量(悪臭)が主であるが、東京湾と洞海湾ではカドミウム、クロム、水銀、鉛なども底質中に検出されているが、この頃は生物の大量死や藻類の異常繁茂が問題視されていた為、底質の多量の有機物に注目が集まっていた。 第2-2-11表ヘドロ問題発生主要水域のヘドロ状況(註昭和46年当時)地域測定年度COD(mg/g)硫化物(mg/g)カドミウム(mg/g)クロム(mg/g)全水銀(mg/g)鉛(mg/g)東京湾(鶴見付近) 昭和45 6.2 — 0.009 0.01 0.018 0.25 東京湾(横浜本牧付近) 昭和45 4.9 — 0.001mg/g 0.006 0.023 0.03 大阪湾(大坂港口) 昭和42 18.9 1.3 — — — — 大阪湾(神戸港沖) 昭和42 25.2 0.3 — — — — 田子の浦港 昭和44 11.4 2.1 — — — — 洞海湾(湾口) 昭和44 16.4 — 0.012 0.055 — — 洞海湾(湾奥) 昭和44 21.6 — 0.122 0.051 — — 伊予三島港 昭和39 13.6 0.6 — — — — 1972年に初めて底質のPCB汚染の実態調査が全国1,445地点において実施されたその結果工場近接水域の4箇所については水質で0.011ppm以上底質で500ppm以上のPCBを検出し「PCB取扱い工場周辺の公共用水域の底質がかなり汚染されていることが明らかになった。」と環境白書では総括している。 1970年12月に「公害防止事業費事業者負担法」が制定され、1971年5月10日から施行されている。5年後の1975年2月末までにこの法律に従い静岡県・田子の浦湾(有機物堆積汚泥浚渫)、福岡県・中の川水系(PCB含有堆積汚泥浚渫)などの総計17件の底質汚染防止対策事業が実施されることとなる。 この様に底質汚染除去事業が開始され、水銀に係る底質汚染については48年度底質調査では27水域で暫定除去基準値を超えたものが昭和49 - 52年度では暫定除去基準値を超える水域は42水域中7水域に減少した。PCBに係る底質汚染については昭和47 - 52年度の調査で除去等の対策を講じる必要がある69水域中54水域の除去事業が完了することになる。その約十年後の1987年には水銀による底質汚染で暫定除去基準を超え除去等の対策を講じる必要がある42水域中41水域が事業を完了し、PCBによる底質汚染底質汚染で暫定除去基準を超え除去等の対策を講じる必要がある71水域はすべて事業を完了している。 ダイオキシン類についての底質汚染は昭和62年度の調査よりモニタリングが開始され、低濃度ではあるが0.001 - 0.006ppbの2,3,7,8-TCDFが18箇の検体より検出されている。約十年後の平成11年版環境白書においても「海、川、湖の底質、生物についてもこれまで10年以上にわたって毎年調査しているが、ダイオキシン類濃度に特段大きな変化は認められない。しかし、環境中から広く検出されており、引き続き調査が必要である。」と環境白書で総括されているその後平成14年度にダイオキシン類の環境基準を変更し、底質ダイオキシン類については757地点中18点で環境基準(150pg-TEQ/g)を超えることとなった。(平均11pg-TEQ/g)
※この「日本における底質汚染問題」の解説は、「底質汚染」の解説の一部です。
「日本における底質汚染問題」を含む「底質汚染」の記事については、「底質汚染」の概要を参照ください。
- 日本における底質汚染問題のページへのリンク