成年の引き下げに関する議論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/11 06:15 UTC 版)
民主党は2002年(平成14年)、衆議院に成年年齢を18歳に引き下げること、18歳選挙権を実現すること、少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げることの三点を盛り込んだ「成年年齢の引下げ等に関する法律案」を提出した。 同党によると、成年年齢等の引き下げは「政治における市民参加の拡大を図ると同時に、若者の社会参加を促進する第一歩」となり、また「18歳は経済的自立が可能な年齢であり、現に結婚や深夜労働・危険有害業務への従事、普通自動車運転免許証の取得、働いている場合は納税者であること等、社会生活の重要な部面で成人としての扱いを受けている」こと、「世界の趨勢も、18歳以上を成人としていること」に対応するものであるという。 成人年齢を変更することに伴い「見直しが必要とされる法令」として、法律191、政令40、府令・省令77の計308本をそれぞれリストアップしている。 2007年(平成19年)、日本国憲法の改正手続に関する法律が成立し、日本国憲法改正の国民投票では投票権が18歳以上との規定から、現行の民法及び公職選挙法とのズレが生じるため、法務省の諮問機関、法制審議会の民法成年年齢部会は、2009年(平成21年)7月29日の最終答申として「民法及び公職選挙法は18歳に引き下げるのが適当」とする最終報告書をまとめた。関連法令が200本の改正が必要とされる。 ただし、酒の飲酒・煙草の喫煙は「健康上の規制の観点」から、現行法を維持することや、公営競技の投票券購入は、現在の20歳の規制が必要とされる。また、現行法では20歳未満の子を持っている性同一性障害を患う親は、性別の訂正はできないことになっているが、それが18歳以上で可能になる。同時に18-19歳の性同一性障害患者にとっても、戸籍の性別を変更できるようにもなる。 問題点としては、民法上で18歳以上の者が「成年者」とされれば、現時点では未成年者に含まれる満18歳以上20歳未満の者が、自由にローン契約や養子縁組をしたりすることが可能となる。しかし、税法上の未成年者控除、刑法上の未成年者保護、未成年者飲酒禁止法、未成年者喫煙禁止法などにおける「成年の定義」を、これに準拠して変更することには、なお慎重な意見もある。 世論の反応について、内閣府が2008年(平成20年)7月に行った調査(対象は18歳以上男女、対象5500人、回答3060人)では、調査対象の約8割が、成年の年齢引き下げに伴い、民法の高額商品の購入の制限年齢が下がることに反対している(ただし、うち4割は、未成年への教育・消費者保護の強化を行えば、容認する姿勢だという)。 地方公共団体が、市町村合併の是非を問うために実施する住民投票では、未成年者にも投票権付与を容認する事例が増えている。2002年9月に、秋田県岩城町が実施した住民投票では、史上初めて未成年者を含む18歳以上の者が投票したほか、長野県平谷村のように中学生から投票可能な住民投票を行った自治体がある。 2018年(平成30年)6月13日、成人の年齢を20歳から18歳に引き下げることを柱とした改正民法と、それに関連する22の法律の見直しが6月13日、参院本会議で可決・成立した。2022年(令和4年)4月1日に施行される。成人年齢を20歳とするのは明治9年の太政官布告で初めて定められ、1896年(明治29年)施行の民法に引き継がれており、改正は通算140年ぶり。
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