形状制御技術
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/16 01:33 UTC 版)
形状制御技術はステルス性を求める兵器にとって重要である。 以下の形状はレーダー断面積を増大させる。形状制御技術は兵器の外面にこれらの形状が露出するのを避ける。 機体形状における平面のほぼ全てについて、平面電波の飛来方向に垂直となる様に角度を統一(平面整列(Planform Alignment)) 二面や三面で構成される直角凹面(コーナーリフレクタ形状) 電波の飛来方向に対してレーダー波の半波長の整数倍の長さを持つ物体 鋭角な構造物 艦船ならば、上部構造物の外面や艦舷を単純平面で構成しこれを垂直方向から斜めに傾けることで、多くの場合に水平方向から放射されるレーダー波に対してその反射波を同じ水平には戻さない。アンテナ・マストにはAEM/S(先進型閉囲マスト/センサー,Advanced Enclosed Mast/Sensor)と呼ばれる単純平面で構成されたFSS機能を備えた覆いを被せる。などの工夫を行っている。 軍用機では、主に正面下方からRCSに注意を払い、側面方向にも気を配っている。元々流線型の機体であるため、正面からのRCSは比較的良好であるが、ジェットエンジンの吸気口からコンプレッサーのファンブレードが見える場合は、吸入流路を延長湾曲して隠したり、斜めに取り付けたメッシュやグリッド状の部品によって電波反射を抑える必要がある。 自機のアンテナを覆う機首レドームにFSS機能つまり電波の選択透過性を備えた遮蔽材を使用する。戦闘機や攻撃機なども機外に搭載するものがある場合にはRCSが悪化するので、出来るだけ機内への収容が求められる。 側方への配慮として、垂直尾翼を斜めに傾けるか備えないで済ます。機体側面は主翼付け根から機首まで水平方向への張り出しを付けるか、全翼機として胴体側面から垂直面を排除するなどの工夫を行っている。 また反射波を全て同じ方向に返すため、上から見ると機体の主翼、水平尾翼、エンジン前縁の角度を同一とし、正面から見ると、垂直尾翼とエンジン側面の角度が同一とする工夫が行われている(F-22の三面図参照)。 流体工学ノズル 流体工学ノズル(fluidic nozzle)を使用したベクトル・スラスター・ノズルも構造が単純化されている分、ステルス性の向上に寄与するため、今後の実用化が検討されている。 キャノピー コックピット・キャノピーにもレーダー波を反射する薄膜によってコートされている。材質は蒸着金薄膜やインジウムとスズの酸化物(In2O3とSnO2の混合物)による薄膜が用いられる。 このためほとんどのレーダー波はキャノピー表面で反射され、操縦席付近の複雑な形状の電子機器や機体内部面によって生じる乱雑な反射波は最小限に抑えられる。パイロットのヘルメットの電波反射の低減も検討されている。 プラズマ・アンテナ プラズマを使ったアンテナである。 プラズマ・アンテナではガラス管などに封入した希薄ガスに電波周波数で放電電圧を印加して放電を起こさせる。このプラズマがそのままアンテナとなり電波が放射される。電圧の印加を停止すればプラズマはガスに戻り電波の放射は停止される。プラズマ・アンテナは放射器としてだけでなく、反射器としても機能する。また入射電波の受信も可能であるとされる。 ステルス性の観点では対象物の大きさも影響する。Xバンド(8-12GHz)では波長3cm以上であるが、Cバンド(4-8GHz)やSバンド(2-4GHz)での対象物の部分的な長さがレーダーの波長と共鳴することも考慮される。また反対に1/4波長の厚みを持った電波吸収体に入射したレーダー波は表面と裏面の2ヶ所からの反射によって互いに打ち消しあって、上手くすれば消滅する。
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