広義のフィルム・ノワール
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/06 03:15 UTC 版)
「フィルム・ノワール」の記事における「広義のフィルム・ノワール」の解説
フィルム・ノワール最盛期は同時にハリウッドの全盛時代であり、スタジオ・システムが崩壊した1950年代以降のハリウッドがB級プログラム・ピクチャーを量産しうるだけの勢いを失ったことは、フィルム・ノワール製作の拠り所をも失うことを意味した。 以後も往年のフィルム・ノワールの影響を強く受けた犯罪映画・異常心理映画は多く作られているが、時代に応じて1960年代以降の映像はカラーフィルムが標準となっている。またかつてのフィルム・ノワールでは、台詞や態度に婉曲な性的隠喩を込めたり、暴力シーン直接描写の省略による凶行の暗示などで、厳しい倫理コードを回避しながら観客に対する間接的な事象の示唆を図っていたが、1960年代以降の倫理コードの緩和によって、直截的なベッドシーン・暴虐描写や、タブーであった卑語の多用が行われるようになり、その趣は大いに変化した。1946年製作の『三つ数えろ』と、その1978年のリメイク版である『大いなる眠り』を(完成度の優劣は度外視して)表面的に比較するだけでも、時代の変化は容易に理解し得る。 1960年代以降の映画では、『ブレードランナー』のように別ジャンル作品でありながらフィルム・ノワールタイプのモチーフを備えた作品が現れ、また『チャイナタウン』(1974年。舞台設定は1937年)、『L.A.コンフィデンシャル』(1997年。舞台設定は1950年代)のように、第二次大戦前後のフィルム・ノワール全盛時代を舞台としてフィルム・ノワール型のストーリーを展開しながら、現代的な解釈を加えたA級相当の映画として製作される事例も見られる。 更に、フィルム・ノワールと半ば不可分である「モノクローム」のイメージから、カラー製作、ハイビジョンデジタルビデオ製作が当たり前になった現代においても、あえてモノクロフイルムで製作される事例があり、カラーの場合でも、色彩効果を暗めに調整したり、闇や夜間のシーンを多用することで暗い画面を演出する事が多い。 『ブレードランナー』 Blade Runner (1982) 監督:リドリー・スコット、主演:ハリソン・フォード) 未来世界を舞台とした斬新なSF映画としてカルトな評価を得ている作品であるが、単なるSFではなく、フィルム・ノワールの要素も併せ持つことが、しばしば評論家の間で指摘されている。 『さらば、ベルリン』 The Good German (2006) 監督:スティーブン・ソダーバーグ、主演:ジョージ・クルーニー、ケイト・ブランシェット) 終戦直後のベルリンを舞台にした、上記と同様の手法で作られた現代版フィルム・ノワール。モノクロフィルムで製作。
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